徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

脳神経外科の病気:頭蓋内胚細胞腫

思春期に好発する脳腫瘍

頭蓋内胚細胞腫瘍germ cell tumorは、松果体、鞍上部、下垂体、視床下部に思春期に好発し、成熟奇形腫以外は悪性となります。血清AFPとHCGの測定が重要で悪性度を判定できます。

頭蓋内胚細胞腫germinomaは、頭蓋内胚細胞腫瘍の70%以上を占め、原発脳腫瘍の2%で発生します。10~20歳代の男性に好発し、主に松果体部(約55%)、鞍上部(25%)、次いで基底核(10%)に発症します。

わが国では予後から3群に分ける分類が提唱されています。

  1. Good prognostic group
    Pure germinoma, mature teratoma
  2. Intermediate prognostic group
    Immature teratoma, mixed germ cell tumorのうちgerminomaかmature teratomaを主体とするもの
  3. Poor prognostic group
    Embryonal carcinoma, yolk sac tumor, choriocarcinomaらを主体とする mixed germ cell tumor

中脳水道閉塞による水頭症きたす

症状としては、中脳水道閉塞による水頭症をきたし、頭蓋内圧亢進、中脳四丘体圧迫による眼球の上転障害(Parinaud徴候)、Argyll Robertoson瞳孔(直接・間接対光反射消失、迅速な輻輳反射、縮瞳)がみられます。

欧米では、germinoma/non-germinomatous germ cell tumorなどの2群への分類が一般的です。

日本では全脳室照射が標準

治療は、一般的には生検後、放射線照射と化学療法を行います。放射線感受性は高いです。生検には、神経内視鏡の発達に伴って内視鏡的に行われることも多く、通常水頭症が存在する場合は内視鏡的に第三脳室底の開窓と同時に生検を行います。摘出と生検で予後に差はないという意見が数多く報告されています。特にpure germinomaでは、化学・放射線治療が有効となります。
代表的なレジメンとしてCARE(カルボプラチン+エトポシド)療法、EP療法(エトポシド+シスプラチン)療法、ICE療法(イフォスファミド+シスプラチン+エトポシド)が行われています。筆者はカルボプラチンよりもシスプラチンのほうがよりよい効果を示すためにシスプラチンを選択しています。

頭蓋内胚細胞腫に対する多施設共同研究(MAKEI89)で全脳脊髄照射30Gy+局所15Gyで、5年PFSが88.8%、5年OSが92%と報告されています。しかし、脊髄照射は予後改善に寄与しないこと、一方、局所照射は不十分なことから現在わが国では全脳室照射が標準となっています。calboplatin(cisplatin)+etoposideによる化学療法と全脳室照射24Gyという方法が広く行われており、10年OSは97.5%と報告されています。

頭蓋内胚細胞腫では手術摘出度は予後と相関しませんが、高悪性度群では全摘出を目指すことが予後の改善につながるという意見があり、筆者らも全摘出を目指しています。血清・髄液中のAFP/hCG-betaが診断の補助になります。

pure germinomaの生存率は高い

pure germinomaは放射線・化学療法で予後は良好で、20年生存率は80%以上といわれています。筆者の24例では全例15年以上生存しています。しかし、亜型のβ-HCG, HPL陽性,髄液HCG陽性のものは予後がpure germinomaほどでありません。10年生存率は70%少々といわれています。またgerminomaのなかでもchoriocarcinoma、embryonal carcinoma、yolk sac tumorの成分を含むものは3年生存率が10%以下になり、予後は極めて悪くなります。髄膜播種、頭蓋外転移(肺転移が多い)、シャントを通じての腹腔内播種が生じることもあります。胚細胞腫瘍の病理形態、治療法は大変複雑で、分類も複雑を極めます。

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