病気の治療
medical treatment
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骨肉腫osteosarcomaは骨原発腫瘍では最も多い悪性腫瘍であり、主に長管骨に原発します。頭蓋骨は極めて稀で2%以下と報告されています。男性に多く、早期に肺転移をきたし、呼吸不全を併発して死亡するとされています。5年生存率は20%以下といわれています。
自験例は2例で1例は32歳男性、頭頂部、1例30歳男性、眼窩部でした。前者の頭頂部病変は化学療法の反復を途中で拒否し、再発を繰り返しましたが、12年の経過を経て亡くなられました。もう1例は35年経過していますが再発の徴候はみられません。手術後の放射線治療とCDDPを主とした化学療法の反復が功を奏したと考えられます。
CT、MRIで骨破壊性の造影剤にてheterogenousなenhancement(増強効果)を示す病変が認められます。治療は、完全摘出と術後放射線化学療法が勧められます。
脊索腫chordomaは、脊椎動物の脊索の遺残物から発生した腫瘍で、脊索から脊椎に変換するときに脊索が遺残し腫瘍化したものです。したがって体の中心線にそって発生します。骨に発生する肉腫は骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、脊索腫の順に多く、約30%が骨肉腫ですが、脊索腫はさらに稀な腫瘍といえます。全脳腫瘍の1%以下ですが、軟骨肉腫と判別しにくい部分があります。脳脊髄表面に広く転移するという特徴がみられます。頭蓋骨の斜台、脊椎の仙尾椎にできやすいといわれています。すなわち、約50%が仙骨部、頭蓋底は約35%、脊椎が約15%と報告されています。
腫瘍は硬膜外にありますが硬膜内にも進展します。CTでは骨の変化、石灰化の有無を見ます。MRIは腫瘍の進展範囲を見ますが、この腫瘍の浸潤性が高いことにより的確に浸潤範囲を同定することは困難です。
治療では完全摘出が重要ですが、再発をきたしやすく、後は放射線療法によるしかありません。場合によれば重粒子線、陽子線療法に期待する場合もあります。手術は部位、左右の進展度にもよりますが、従来の開頭術による侵襲度を考えると、最近では経鼻的内視鏡手術が進歩して侵襲度も低く、摘出度も高くなっているのでこの方法を選択することも増えています。最終的には術者の慣れもあり、十分な計画のもとに完全摘出を試みることが重要です。
整形外科領域の骨に発生する肉腫として、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨巨細胞腫が挙げられますが、頭蓋骨に発生する巨細胞腫は極めて少ないです。
分類は良性の骨腫瘍ですが、他の良性骨腫瘍と比べ再発しやすく、肺転移を起こすこともあるという特徴があり、WHOでは中間悪性腫瘍としてとらえています。局所の再発率は高いですが、良性腫瘍であり生命予後は良好です。肺転移が生じても予後に影響はないといわれています。最終的には96~100%の症例で局所のコントロールが得られています。
診断には、CT、MRI、骨シンチグラフィー、PETなどの画像検査が必要です。最終的には生検を行い診断に至りますが、頭蓋骨の場合は可能であれば全摘を目指すべきです。手術療法後、デノスマブ(denosumab)というランクルを標的とするヒト型モノクロナール抗体製剤、分子標的治療が用いられます。骨巨細胞腫は間質細胞と巨細胞とよばれる2種類の細胞からなり、この間質細胞がランクルをつくり出し、巨細胞を活性化させ、骨を破壊していきます。デノスマブはランクルという物質に結合して、骨巨細胞腫が大きくなるのを抑える新しいタイプの皮下注射薬として使用されています。副作用として顎骨壊死、低Ca血症があります。
骨軟骨腫osteochondromaは、原発骨腫瘍のうち最も多い良性腫瘍です。長管状骨の骨幹端部に発生し、多くは幼少年期に発見されます。骨の表面から外側へ「こぶ」状に骨が飛び出したものを外骨腫、内側に飛び出したものを内骨腫といいます。脳外科で問題になるのは後者で、その表面は軟骨組織でおおわれています。全体的な形から外骨腫ともいいます。頭蓋骨に発生するのは極めて稀です。この腫瘍から悪性転化して軟骨肉腫が生ずることがあります。
軟骨肉腫chondrosarcomaは、骨肉腫に次いで頻度の高い原発性悪性骨腫瘍で、40歳以上の中高年に多く発生します。良性骨腫瘍である骨軟骨腫や内軟骨腫などから二次的に生じることもあります。通常、四肢近位部の大腿骨や上腕骨、骨盤、肋骨に生じますが、頭蓋骨は極めて稀です。小児と比較して転移はきたしにくく比較的ゆっくりと大きくなります。
診断には、CT、MRI、骨シンチが有用です。骨シンチでは陽性に出ますが、転移の診断に威力を発揮します。
治療は手術が基本です。放射線、化学療法は効きにくいために手術での全摘が望まれます。重粒子線、陽子線の効果が期待されます。肺転移はやはり摘出が基本となります。