徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

病気の治療

medical treatment

脳神経外科の病気:転移性脳腫瘍

肺がん、乳がんからの転移が多い

現在治療中のがん患者さんの9%前後に転移があり、肺(51%)、次に乳がん(10%)、直腸がん、胃がん、大腸がんの順に高頻度となります。原発巣不明も10%前後あります。転移巣は髄腔内にがん細胞を播種し、がん性髄膜炎をきたすことがあります。治療なしで予後は1~2カ月と報告されています。脳外のがん病巣の状態から予後3カ月以内と考えられる場合は一般的には手術の対象になりません。図1は原発巣では肺がん、乳がんが多く、脳実質内、頭蓋骨、硬膜、脊椎椎体、脊髄に転移します。骨への転移は一般的には骨破壊性ですが、前立腺がんは骨増殖性です。

脳実質内と原発巣双方への治療必要

悪性神経膠腫の項で述べましたが、脳転移の治療については、脳実質内の転移巣とがん性髄膜炎の両者への対応が必要となります。無治療例ではせいぜい3~6カ月の余命しか得られません。

上記が基本的な方針ですが、原発巣が治療され、転移巣が3個までなら全摘出可能であれば摘出し、その後の放射線の全脳照射や化学療法がベターとする考えもあります。筆者はその考えで治療を行っています。転移巣の摘出については腫瘍の境界ぎりぎりに切除するとその周辺には残存腫瘍が存在している可能性が高く、可能であれば周辺組織も切除するように努める必要があります。

放射線療法は脳転移巣に対して効果発揮

放射線療法については、脳転移巣に対しては放射線療法に勝る効果はありません。転移性脳腫瘍に対しては、ガンマナイフ、X-ナイフ、サイバーナイフ、I-MRTといった定位照射(ある一定の範囲に放射線を集中的に照射する器械)が施行されます。しかし、定位照射だけでは新たな転移巣が生じる可能性が高く、その場合は全身化学療法の反復が効果を発揮します。また全脳照射との併用も試みられていますが、結論はでていません。定位照射については腫瘍からの出血の問題があり、注意が必要です。

原発巣の種類による化学療法は有効

化学療法については、がんの種類により、化学療法の有効性が認められています。特に肺がん(なかでも小細胞がん)、乳がん、胚細胞性腫瘍などの化学療法が効きやすい腫瘍による脳転移の場合は、原発巣同様、腫瘍が小さくなることが期待できます。原発がんに有効な化学療法は、脳転移巣が処置された段階では、化学療法の反復にて不顕性転移巣に効果を示し、生存期間を延長させる効果があり(Nakagawa H, et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 57:950-956,1994)、長期生存例はかなり認められています(proceedings 12th world congress of neurosurgery, Sydney, Australia, WFNS 2001:544-547)。
実質内転移巣に対する化学療法以外に髄腔内播種(がん性髄膜炎)に対する治療が非常に重要となります。

手術、放射線、化学療法等の集学的治療で対応

予後因子解析は、SperdutoらはRTOGの臨床データーを用いKPS、脳転移数、年齢、頭蓋外転移の有無を因子としたGraded Prognostic Assessment(GPA)を発表し、さらに原発がん種別に分けたDiagnostic-specific (DS) GPAに発展させました。DS-GPAでは肺がん、悪性黒色腫、腎細胞がん、消化器がん、乳がんの各疾患別に予後因子と点数が決められ、生存期間を予測できます。

転移巣が単発でKPSのよい(70以上)症例に関しては手術+全脳照射が推奨されていますが、3cm以下の腫瘍に関してはSRT(+前脳照射)でも同様の効果が期待できます。
手術あるいはSRTに全脳照射を加えると、再発(脳内局所および遠隔部再発)までの期間は延びますがOSに有意差はないとされています。これにも化学療法の必要性が潜んでいると考えています。

全脳照射におけるQOLや認知機能の低下が危惧されるようになり、3〜4個以下ではSRT単独治療も選択されます。
化学療法では分子標的薬や化学療法剤のなかに脳転移に有効性が示されたものがあり、今後が期待されるところです。
上皮成長因子受容体変異を有する非小細胞がんでは、gefinitibやerlotinibが、HER2陽性乳がんの転移性脳腫瘍患者ではlapatinibとcapecitabineの併用療法の効果が報告されています。いずれにしても転移性脳腫瘍の治療は手術、放射線、化学療法等の集学的治療が必要であり、積極的な治療によって、長期生存が望まれます。図8の例も肝がんの眼窩転移例ですが超音波エコー下での腫瘍へのアルコール注入によって出血が少なく摘出できあとの放射線化学療法で腫瘍がほぼ消失した例です。

その他のめずらしいがんの転移として慢性硬膜下血腫として診断される場合が多い硬膜転移による硬膜下血腫があります。よくみれば鑑別できますが、しばしば間違われます。

その他の転移として肝がんの脳、および骨転移があります。出血しやすく頭蓋内の場合も摘出に困難を極める場合があります。本例は術前にアルコールを超音波エコー下で腫瘍内に注入し、その後摘出したものです。

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