徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

病気の治療

medical treatment

脳神経外科の病気:頭頸部外傷

慢性硬膜下血腫─血腫が徐々に脳を圧迫

脳神経外科領域で最も多い手術といえば慢性硬膜下血腫です。最近、急にもの忘れがひどくなったり、転びやすくなったりした高齢者の方がいたら、もしかすると慢性硬膜下血腫かもしれません。この病気は高齢者の男性やお酒が好きな人に多く、脳が萎縮することで頭蓋骨と脳との隙間が大きくなることが関係しているようです。頭部打撲した衝撃でこの隙間に少量の出血が起こり、その後も出血が増量して脳を徐々に圧迫し、1~2カ月経つと圧迫が強くなり症状が出現します。頭部CTを撮ったら診断がつきます。

手術は頭蓋骨に直径1㎝くらいの穴を開けて血腫を洗い流し、脳への圧迫が解除されれば症状は改善します。実際、2016年4月の熊本地震で頭部打撲した高齢者が5月、6月に慢性硬膜下血腫の診断を受けましたが、例年よりも熊本ではこの病気が増えたという報告があります。

症状としては頭痛、もの忘れ、言葉がうまく喋れない、片側の手足のしびれ、思うように運動できない、意欲の低下があり、進行すれば意識障害もみられます。タイミングを逃さず治療すればもとどおりに回復することも多く、治る認知症として注目されており、認知症外来で頭部CTを撮り発見されることがあります。症状の心あたりがあれば医師に相談して頭部CTを撮って調べてみることをお勧めします。
d図1のCT写真で向かって右側は脳の溝が見えにくくなっています。頭蓋骨と脳の間に灰色の血腫がたまって脳を圧迫している所見です。

脳挫傷─脳出血で急速に脳が膨張

頭を強く打って脳に打ち身ができる、それを脳挫傷といいます。頭蓋骨と接する部位にみられ、脳出血を起こし、最初の数時間で大きくなり、24時間の経過で次第に脳が腫れてきます。下のCT所見では小脳といわれる部位に白い血腫を認め、脳幹を圧迫して意識障害をきたしました。緊急で開頭血腫除去術を行って、血腫を取り除き、脳幹の圧迫を解除し、意識は回復しました。

頭蓋骨骨折は軽症から重症までさまざま

新聞やテレビで交通事故にて頭部を打撲して頭蓋骨骨折の重症です、と報道されているのをよく耳にしますが、実際は頭蓋骨骨折といっても軽症から重症まであります。頭蓋骨が折れることで脳の表面に創がついて血腫ができれば上述の脳挫傷のように意識を失うことがあります。しかし、頭蓋骨は折れても脳にほとんどダメージがない場合もあります。
下の図では陥没骨折といって骨が陥没しているのがわかります。真ん中の骨イメージCTで頭蓋骨が陥没していますが、右側のCTでは脳表面に出血、脳挫傷は認めていません。この場合、意識はあり、経過よく手術をせずに済むこともあります。

急性硬膜下血腫─緊急の開頭血腫除去術が必要

開頭して頭蓋骨を外し、硬膜を切開して脳表にあった血腫 お年寄りには慢性硬膜下血腫が多いと話をしましたが、頭蓋骨と脳の隙間にできた血腫が頭部外傷直後にできて急激に増大した場合、脳の圧迫が強くなって意識障害を起こします。この際は緊急に開頭血腫除去術を行い、硬膜下血腫を素早く取り除く必要性があります。

脳震盪─24時間は1人でいるのを避ける

剣道のように防具をつけていない部分、後頭部を打撲した場合、脳震盪を起こす(全日本剣道連盟HPより) スポーツ選手が練習や試合で頭部を打撲、その後、競技を続けようとして思うように競技を続行できない、頭部CTやMRIでは異常を認めませんが脳へのダメージはあるという場合、脳震盪を起こしている可能性があります。脳震盪が疑われた競技者はただちに競技を中止し、24時間以内は1人でいることは避けます。頭痛がひどくなる、ボヤーっとして起きれない、他人や場所を理解できない、嘔吐を繰り返す等の症状があればすぐに病院へ行きましょう。
画像では異常がない短時間の障害であれば自然に回復しますから、数日間あるいはもう少し長い期間で段階的に運動量を増やしていきましょう。コンタクトのある競技ではホームページ上で脳震盪について詳しく書いてありますから参考にしてください。

びまん性脳損傷─昏睡状態続くがCTに出にくい

頭部外傷は大きく局所性脳損傷(前術の脳挫傷、硬膜下血腫など)と広範性(びまん性)脳損傷(軸索損傷)に分類されます。脳震盪が含まれることもあり、重症度は意識障害の時間から重症度が分類されます。びまん性脳損傷は外傷直後より昏睡状態が続いている割には受傷直後のCTで所見に乏しいことがありますが、脳室内出血、中脳周囲のくも膜下出血、基底核損傷(出血)は特徴的な所見です。本所見があれば高次脳機能障害を後遺しやすいと予見できます。特に脳幹や小脳の一次性損傷はびまん性脳損傷の部分現象であり、重症型が多いです。

頭部外傷によるさまざまな後遺症

頭部外傷による症状(高畑圭輔、田渕 肇、三村 将 Brain and Nerve p849-857 68巻7号2016年7月より))

受傷から1カ月以内の亜急性期には高次脳機能障害や外傷性てんかん、半年が経過した慢性期には人格変化やPTSD (posttraumatic stress disorder)の症状が上図に示すように顕在化します。

高次脳機能障害

病院での急性期治療が終了し、学業、就労に復帰した際、周囲に障害が理解されず、社会的に取り残されることが多く、頭部外傷後の高次脳機能障害が社会問題となっています。例えば、脳挫傷で入院、早期にリハビリが介入し、退院時の長谷川式認知症スケールでは満点だった学校の教頭先生が職場復帰したのはいいのですが、職員会議で司会ができない、事務処理能力が落ちていて校長先生が頭を抱えてしまう、こういった事例に遭遇することがあります。
高次脳機能障害とは、運動麻痺、感覚障害、認知症では説明できない中枢神経系の障害による言語、認知、動作の障害です。記憶する、計画を立てる、感情をコントロールする、集中する、といった人間らしく生きるための高度な機能を私たちの脳は本来持っています。外傷によって脳にダメージを受けると高度な脳機能が正常に働かなくなり、日常生活や社会生活に支障をきたす場合がありますが、外見では判断しにくく、本人も気づかないことが少なくありません。

高次脳機能障害支援モデル事業において登録された症例の約76%が外傷性脳損傷であり、39歳以下の若年者が約72%を占め、生産年齢層に多く、社会的にも就学や就業へ向けたリハビリは重要です。受傷から6カ月以内の早期にリハビリを開始した症例では46%が改善傾向を示しましたが、1年以上経ってからでは改善は14%であったという報告があります。
 先程の教頭先生にしても入院中に社会復帰を意識したリハビリを行うために、職場での詳細な仕事を聴取して作業療法を行っていけば、退院前に予測することは可能です。頭部外傷を起こす前の状態に100%復帰することは難しくても職場の理解が得られていれば、軽作業から開始したり、職場の配置転換をしたり、代替手段の獲得も考慮し、脳疲労を起さないような環境整備が必要です。高次脳機能障害センターを持つ地方自治体が増えてきましたから、入院時から連携をとり、家族の障害に対する認識を高め、カウンセリングや家族指導と援助を行い、スムーズな社会復帰ができるように助力します。

遅発性後遺症

受傷から数年以上の時間が経過した時期に出現する遅発性後遺症が近年注目されています。慢性外傷性脳症、頭部外傷後精神病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性パーキンソン病が挙げられるが、頭部外傷によって誘発された神経変性疾患であり次第に悪化する進行性の特徴を有しています。

低髄液圧症候群─頚部の外傷などで発症

頚部の外傷やカイロプラクティックによる頚椎への過剰なストレスが加わり、脊髄を包む膜が裂けて髄液が漏れて頭蓋内圧が正常に保てない状態になり、頭痛、吐き気嘔吐、耳鳴り、めまい等の後遺症が長引く外傷性低髄液圧症候群という疾患があります。MRIが有用で髄液の漏れをMRIで確認できれば、自分の血液を硬膜外腔に注入して漏れた部位をパッチする硬膜外血液パッチ療法で頭痛が軽減することがあります。下図では、造影MRIで頭部の硬膜が造影されています。

眼窩吹き抜け骨折─殴打や接触プレーが原因

殴打されたり、肘が接触プレーであたったり、ボールが強打したりして眼球を前方から押されて眼窩内の急激な圧上昇により眼窩下壁、内側壁といった骨脆弱部に骨折をきたします。

骨折部から眼窩内脂肪、下直筋(眼球を動かす筋肉の一つ)が脱出することで垂直方向の眼球運動が障害され、複視(物がだぶって見える)の原因となります。手術の適応、時期に関しては標準化されていませんが、専門医の適切な判断が必要です。

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