徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

病気の治療

medical treatment

脳神経外科の病気:髄膜種

硬膜の付着部から発生する腫瘍

髄膜腫は、脳外から発生する代表的な腫瘍で脳腫瘍の20%を占めます。

WHO(2007年改訂)による病理分類

腫瘍は硬膜の付着部から塊状に増殖し、周辺脳組織を圧迫します。一方、meningioma en palqueとよばれる板状の形態をとる場合もあります。
髄膜腫は“meningeal tumors”として下記のようにGarde Iの9亜型、Grade IIの3亜型、Grade IIIの3亜型に分類されています。

Grade I:
meningothelial meningioma, fibrous meningioma, transitional meningioma, psammomatous meningioma, angiomatous meningioma, microcytic meningioma, secretary meningioma, lymphoplasmacyte-rich meningioma, metaplastic meningioma
Grade II:
Choroid meningioma, Clear cell meningioma, atypical meningioma
Grade III:
papillary meningioma, rhabdoid meningioma, anaplastic (malignant) meningioma

良性腫瘍が9割以上

Grade Iの良性腫瘍が90%以上ですが、悪性のanaplastic meningiomaも存在します。治療は主に手術摘出が基本となり、摘出不能の場合は定位的放射線治療が選択されます。手術に際して摘出程度と再発との関係を示すものにSimpson gradeが一般に用いられていいます。これは摘出度を5段階で表し、術後5~20年経過した時点での再発率を示したものです。

Simpson grade I:
硬膜の付着部を含めて肉眼的全摘—9%
Simpson grade II:
腫瘍の肉眼的全摘と硬膜浸潤部が残存しているが、凝固・焼灼したものー19%
Simpson gradeIII:
腫瘍の肉眼的全摘のみで硬膜の凝固・焼灼していないもの―29%
Simpson grade IV:
腫瘍の部分摘出のみ―44%
Simpson grade V:
腫瘍の生検、減圧術のみ

脳表をおおうくも膜絨毛細胞から発生し、主に近接する硬膜からの栄養を受けて成長します。この部分は髄膜腫の付着部と言われ反応性の骨肥厚が認められることも多いです。

髄膜腫は、脳外から発生する腫瘍ですので、主に外頸動脈から栄養を受け穹窿部では付着部は脳血管撮影の早期像で外頸動脈から拡張した栄養動脈と放射状の腫瘍陰影がsun ray appearance像として描出されます。

腫瘍摘出後も凹んだ脳はもどらず

穹窿部の髄膜腫ではよく腫瘍の付着部より外方の硬膜に画像上造影剤で尾っぽ状の増強効果を認めます。腫瘍の浸潤部といわれ、tail signとよばれています。したがって手術は付着部よりさらに全周2.0cm広く切除したほうがいいといわれています。手術摘出後の脳は長期間圧迫・陥凹した状態が続いてきたために、多くは切除後も元にもどらず陥凹したままです。

psammomatous typeの髄膜腫はX線撮影で診断可能

髄膜腫のなかには単純X線撮影で診断がつくものもあります。それはpsammomatous typeの髄膜腫で、外来でCT、MRIを撮るまえに単純X線撮影だけで診断をつけると、大変なお褒めの言葉をいただけるか、詐欺師よばわりされるかどちらかです。

22番染色体の変異が原因と考えられている神経線維腫症(NF)-typeIIにも合併しやすい腫瘍です。できる部位によって大脳鎌、傍矢状洞、穹窿部、鞍結節部、嗅窩、蝶形骨縁、小脳穹窿部、小脳・橋角部、大孔、斜台部、脳室内(側脳室、第3脳室内)、小脳天幕、松果体部、シルビウス裂,中頭蓋窩、メッケル腔部、視神経鞘、海綿静脈洞内、脊髄などがあり、それぞれ発生部位の名称によって呼ばれています。

大脳鎌髄膜腫

部位によって違いますが、前方では眼動脈先端部から出るanterior falx arteryが栄養血管になり、中部ではこの動脈と中硬膜動脈が栄養血管となります。後部は外頸動脈枝の後頭動脈のmeningeal branchから栄養を受けています。

傍矢状洞髄膜腫

両側傍矢状洞髄膜腫

蝶形骨縁髄膜腫

この腫瘍が全摘できるかどうかは大きな腫瘍の脳幹側がきれいに剥離できるかにかかってきます。また十分な側頭部の開頭が必要です。

鞍結節部髄膜腫

この腫瘍の摘出に際しては、posterior ethomoid arteryの栄養血管を凝固して、ある程度前頭蓋底の腫瘍を切除してからsylvian fissure内に入ってゆくほうが望ましいといえます。また大きな腫瘍の場合は十分な側頭部の開頭が必要です。

嗅窩髄膜腫

この腫瘍の摘出に際してはinterhemispheric approachで行うと上矢状洞へのbridging veinを犠牲にしなくてはならず、静脈性梗塞をきたす危険が高いのでpterional approachで摘出するのが望ましいです。

小脳橋角部

側脳室体部髄膜腫

側脳室三角部髄膜腫

天幕髄膜腫

中頭蓋窩髄膜腫

眼窩内髄膜腫

Confluens sinuumに発生した髄膜腫

Confluens sinuumに発生したpapillary 髄膜腫

この部位に発生した腫瘍は徐々に上矢状洞のみならず直静脈洞の閉塞をきたします。その結果、図24にみられるようなpersistent falcial veinすなわちpersistent embryonicdural venous channelを発達させることになるのが特徴です。(Nakagawa H., et al: Surg Neurol 32:219-24,1989.)

Lymphoplasmacyte-rich meningioma

このタイプの髄膜腫は明らかな貧血や多クローン性ガンマグロブリン血症などの末梢血の異常があって生じるといわれています。実際、この腫瘍のoriginは不明で通常の典型的な髄膜腫よりは炎症性のmassと考えるほうが近いかもしれません。本症例も女性で、一般的に女性の報告が多いです。

松果体部髄膜腫

極めてめずらしい腫瘍ですが、報告は散見されます。この発生母地としてはまず、

  1. arachnoidが大脳横裂の中にめくれこんで二重膜が形成されたvelum interpositumから発生したもの
  2. falxと小脳テントとの接合部から発生したものもの
  3. 松果体内部のpia-arachnoid起原の結合織またはperivascular pia-arachnoidから発生したもの

の3つが考えられています。最後は病理学的実証はなく、推論であることを考えると、本症例はfalxや小脳テントと関係ないので、velum interpositumから発生したものと考えます。

メッケル腔部髄膜腫

メッケル腔(三叉神経鞘)の腫瘍は原則手術的に摘出し、海綿静脈洞内腫瘍のみ残すようにします。ただし三叉神経第1枝に癒着の強い腫瘍は残します。手術法はTranspetrosal approachで摘出します。この手術は髄液漏を予防するために広範な矢状洞方向に長い皮弁をつくるように皮切して帽状腱膜や側頭筋を用いて硬膜欠損部に埋め込むような形で閉鎖を図ります。残存腫瘍に対しては定位的放射線療法(ガンマーナイフ、サイバーナイフ、I-MRT)を行います。

海綿静脈洞部髄膜腫

基本的には上記の定位的放射線療法を行います。Massが大きくなると腫瘍の容量減少を目的として切除することがあります。

脊髄髄膜腫

基本的には硬膜内髄外腫瘍ですが、図29のように髄内に占拠するめずしいこともあります。

側頭下窩に伸展した砂時計様髄膜腫

この中頭蓋窩から側頭下窩に進展した腫瘍に対してはinfratemporal approachが用いられます。この方法は耳珠の前方からcurved skin incisionで後方は下顎角下端まで行います。頬骨弓を切断し、側頭骨を切除します。この方法はzygomatic approachの変法でdumbell腫瘍の上下が摘出できます。

髄膜腫の肺転移

良性髄膜腫の頭蓋外転移は極めて稀で、0.76%と報告されています。悪性髄膜腫ではさらに高くなり20〜40%に及ぶとされています。肺が最も多く、次いで肝臓です。原発巣は傍矢状洞髄膜腫が多く、静脈洞への浸潤がその原因とされています。組織型はmeningotheliomatous typeが多いですが、本例も同様です。

Neurofibromatosis type II髄膜腫

鞍結節髄膜腫の術後経過

多くは開頭手術で全摘可能

組織学的には、最初の病理学的分類で示したようにmeningotheliomatous type、transitional type、mixed typeの3つに分類されますが、他に稀ですが、psammomatous typeやangiomatous type、microcystic type、metaplastic meningioma、secretary typeなどがあります。先に述べたようにpsammomatous typeでは頭部単純CTで髄膜腫が描出される場合もあります。

一般的には開頭手術で全摘可能ですが、大脳深部の場合は神経の損傷をきたす場合は放射線治療によって増大を抑制する方法を選択する場合もあります。組織学的に悪性の場合(核分裂像を多くみる、全髄膜種の4%)は、肉眼的に全摘した場合も放射線照射を併用することが必要で、思った以上に早期の摘出時と同大まで再発するほど成長速度は早いです。また悪性でない場合でも硬膜内を浸潤・進展して腫瘍が島状に発生することもあります。
その他に特殊な髄膜種として乳頭状髄膜種(papillary meningioma)があり、腫瘍の増大、進展が早く悪性度は極めて高く、髄腔内播種をきたすことも多くなります。また組織学的にリンパ・形質細胞豊富髄膜種(lymphoplasmacyte-rich meningioma)が稀に認められます。髄膜種は硬膜に浸潤するため、静脈洞に進展した場合、肺に転移巣を形成する特殊な進展パターンをとるものがあります。その他には髄膜腫にエストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)のレセプターが発現している場合があることが知られていますが、発現頻度はエストロゲンよりもプロゲステロンのほうが高くなっています。プロゲステロンやエストロゲンが発現しているタイプは再発が多いのも特徴です。

腫瘍摘出術のアプローチとしては、メッケル腔髄膜種に対しては、transpetroal approach、延髄前方に対してはtrans condylar approach、松果体部に対してはOccipital interhemispheric transtentorial approach、側脳室三角部に対しては頭頂部知覚野後方から皮質を経由する方法、側頭葉から皮質を経由する方法で三角部の腫瘍に到達するTranscortical intraventricular approachを行います。優位半球であれば前者が安全です。
脳神経外科の手術では動脈以上に静脈に注意することが重要であり、髄膜種の摘出に際しても重要なのは静脈に注意することです。すなわち腫瘍血管のdrainageになる静脈の犠牲はfeederの処理が行われているか、あるいは腫瘍の大半が摘出された段階での処理に心がける必要があります。特に大きな嗅窩髄膜腫に対しては半球間裂到達法を行うことは術後の広範な静脈性梗塞を引き起こす可能性があり、全例pterional approachで摘出するほうがよいでしょう。腫瘍の摘出はloop coagulatorあるいは超音波吸引装置cusorを用いた腫瘍塊のボリュームの縮小にて周辺組織への影響を少なくすることが重要です。

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