徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

病気の治療

medical treatment

脳神経外科の病気:下垂体腺腫

ホルモン分泌の有無で2種類に分類

下垂体は、両目の間で鼻の奥にある約1cm大の大きさの馬の鞍に似たトルコ鞍とよばれる骨のくぼみの中に納まっている ホルモンの中枢です。大きさは大体8× 5mm大の小さなもので生理中枢である視床下部から下垂体柄によって結ばれており、視床下部から種々のホルモン刺激因子が放出されてコントロールされています。

下垂体腺腫pituitary adenomaには、腺腫からホルモンを分泌するA.機能性腺腫と、分泌しないB.非機能性腺腫に分けられます。

  1. 成長ホルモン分泌(産生)(HGH)

    末端肥大症として表現されますが、下顎、頬骨、眼窩上部(眉間)の飛び出し、耳たぶ、鼻、唇、舌の増大、手足の増大などの末端が結合織の増殖によって増大し、特徴的な風貌を呈します。唇は時にクインケ浮腫として現れることもあります。舌は巨舌と表現され、睡眠時無呼吸症候群の原因となります。代謝異常も合併し、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症など併発し、女性では月経異常が認められます。
    診断は、血中HGH分泌過過剰(血中GH値がブドウ糖75g経口投与で正常域まで抑制されない)、血中IGF-I(ソマトメジンC)高値、頭蓋骨、手足の単純XP:眼窩骨増殖、指骨のcauliflower所見、foot padの増大所見などで判断します。
    治療をせずに放置しておくと心脳の血管障害や悪性腫瘍の合併のために平均10~15年くらい寿命が短縮されるといわれています。
    治療は経蝶形骨洞腺腫摘出法で手術摘出を行い、完治を目指しますが、海面静脈洞部に浸潤している場合は術後薬剤療法を施行してHGHを下げる努力も行います。

    薬物療法として現時点では以下の3種類があります。

    1. ソマトスタチンアナログの酢酸オクトレオチド(サンドスタチン)、ランレオチド酢酸塩(ソマチュリン)の注射製剤を用います。個々の反応に差があり、明らかに腫瘍が縮小する例もみられます。
    2. ドーパミン作動薬で、ブロモクリプチン(パーロデル)カベルゴリン(カバサール)の内服薬が用いられています。上記①と併用する報告もあります。
    3. 成長ホルモン受容体拮抗薬(成長ホルモンアンタゴニスト)
      これも注射製剤の一つで、ペグビソマント(ソマバート)です。ソマトスタチンアナログとドーパミン作動薬と組み合わせて使用するといわれていますが、筆者には経験がありません。
  2. 乳汁分泌(プロラクチン:PRL)腺腫

    乳汁分泌の最も多い原因はドーパミンに拮抗作用をもつ薬剤の影響、次いでプロラクチン産生下垂体腺腫(プロラクチノー)です。症状は乳汁分泌、不妊、生理不順〜無月経で、男性では性欲低下、インポテンスなどがみられます。薬剤(抗精神薬など)の影響による場合は休薬によって改善しますが下垂体腺腫の場合は治療が必要です。
    治療法についてです。以前はPRL腺腫のmicroadenomaに対してはACTHのmicroadenomaの場合と同様の方法で画像上推測できる部位と両側の海綿静脈洞〜錐体静脈〜頚静脈のvenous samplingのホルモン値から腫瘍側を決め、それに沿って細かく切除しながら腺腫を発見して切除していましたが、現在ではホルモン療法を優先しています。薬物療法が優先ですが場合によっては手術療法を優先することもあり、医師と十分相談する必要があります。薬物療法は一般にドーパミン作動薬であるブロモクリプチン(パーロデル)、カベルゴリン(カバサール)の内服薬が用いられています。後者のほうが週1回投与であるために服薬コンプライアンスがよく副作用も少ない印象を持っています。

  3. 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)

    クッシング病
    副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)依存性クッシング症候群は2つに分けられ、①下垂体にできたACTH産生下垂体腺腫が原因となるクッシング病と、②下垂体以外に発症した腫瘍(がんやカルチノイドなど)からACTHが過剰に産生分泌される異所性ACTH症候群に分類されます。極めて稀ではありますが、CRH産生過剰による異所性CRH症候群もあります。したがって、下垂体腺腫によるACTH過剰分泌によるクッシング病の診断が非常に重要になります。
    クッシング病は下垂体腺腫による副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰分泌のために副腎皮質からコルチゾールと呼ばれるステロイドホルモン分泌が亢進した結果、特徴的な症状を示すようになった疾患と規定されています。特徴的な症状としてバッファロータイプ肥満と表現される体型で、腹部が肥満して四肢が太くならない中心性肥満、赤ら顔でむくんだ満月様顔貌にニキビが多発、首の付け根に脂肪がついた水牛様脂肪沈着、妊娠線が赤くなったような皮膚線条など(場合によれば紫色皮膚伸展線)のクッシング様体型を示します。近位筋の萎縮による筋力低下がみられ、にきび、多毛、浮腫、筋力低下、骨折、月経異常などからみつかることも多いです。精神障害の頻度も高いとされています。高血圧、糖尿病、耐糖能低下がほとんどの症例でみられます。
    治療では手術が第一選択です。微小腺腫(microadenoma)の場合は手術にて画像で腺腫部と考えられる部位の下垂体を細切しながら1㎜大でも発見し摘出する方法をとっています。しかし、画像上同定が確定できない場合でも、両側の海綿静脈洞〜錐体静脈〜頚静脈のvenous sampling(bilateral selective venous sampling)のホルモン値から下垂体腺腫の診断と腫瘍側を決め、それに沿って細かく切除しながら腺腫を発見して1㎜大でも切除する方法を行っており、80%近くまで治癒が可能です。

  4. 甲状腺刺激ホルモン(TSH)

    甲状腺機能亢進症状が認められ(T3、T4高値)、下垂体腺腫が認められ、TRHに対するTSH分泌反応が悪く、血中TSHα/TSHモル比の上昇が認められる場合に診断されます。MEN type-Iに合併することもあります。
    摘出が第一選択であるが、HGH分泌腺腫とともにソマトスタチンアナログの酢酸オクトレオチド(サンドスタチン)注射製剤が効果があるとされています。
    その他一つのホルモンだけでなく、多ホルモンを分泌する腺腫(多ホルモン分泌腺腫)もあります。摘出した腫瘍の電顕所見でサイズの違う各ホルモン分泌顆粒の同定を行うことが大切です。腫瘍に対しては薬物療法、手術療法、放射線療法があります。

下垂体そのものを圧迫し視野欠損などをきたす

ホルモン分泌しないものの腺腫が大きくなり、下垂体そのものを圧迫して下垂体機能低下や周辺の視神経を圧迫し、視力・視野障害をきたします。典型的な視野欠損は、両側の耳側の視野が上方から欠損してくる両側耳側半盲です。

治療は腫瘍の摘出術が基本で、方法は経蝶形骨洞腺腫摘出術を行います。内視鏡を使用するか、顕微鏡で行うかは術者の経験によるもので、結果に大差はありません。顕微鏡的に行っても進展例は内視鏡を用いればいいと考えます。

周辺の海綿静脈洞部内に進展している場合は、この部位の切除は難しいので、腫瘍の摘出後放射線照射を併用します。放射線療法は危険性を指摘される医師もおられますが、近年の局所放射線機器の発達で副作用も少なくなっています。残存腫瘍に対する放射線の効果は良好で、徐々に腫瘍が縮小する場合も多くみられます。腫瘍の摘出は腫瘍が増大して上方進展している場合は、第三脳室上壁まで切除可能です。大きくなればdumbbell typeの形状を示す場合が多く、術中dumbbellの下方部の摘出時に上方部の腫瘍がトラップされ残存する場合がありますが、その場合は無理をせず、後日腫瘍が下降して切除しやすくなった時点でその部位を摘出する方法と、経過をみながら必要なら腫瘍に放射線照射を行う場合があります。また腺腫が後方に進展して脳幹部を圧迫している場合はこの部位の切除に注意が必要です。

周術期には種々のホルモン過剰分泌に注意

下垂体腺腫の場合は、全下垂体腺腫の1~2%を占めるMEN type I(multiple endocrine neoplasia)を常に念頭に置かなければなりません。家族歴に内分泌系の腫瘍を示唆する疾患を持つ方がいないか詳しく聴取し、また入院時に血清Ca値や尿路結石の既往に注意することが大切です(高Ca血症を合併)。術後下垂体性の尿崩症か、高Ca血症による多飲多尿か鑑別に注意が必要です。

この原因遺伝子は、chorosome 11q13に存在するがん抑制遺伝子でメニンというシグナル伝達物質をコードします。この場合、通常の下垂体腺腫と比べて欧米ではPRL産生性のものが多い傾向(欧米)があります。日本での報告例はPRL産生性60%、GH産生性25%、非機能性10%で非機能性が多くなっています。MENに伴う下垂体腺腫の臨床症候、治療方針は通常の下垂体腺腫と同じですが、周術期管理にあたってはさまざまなホルモンの過剰分泌による全身症候には注意が必要です。

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