病気の治療
medical treatment
medical treatment
認知症を起こす代表的な病気の一つです。日本での認知症患者数は、2012年現在462万人といわれており、2025年には700万人にまで増加すると予測されています。
認知症とは、正常に発達した知的機能が脳の病気によりできなくなり、もの忘れを含む知的能力の障害により、それまでできていた仕事や生活に支障をきたす状態のことで、病名ではありません。
認知症をきたす他の病気には、脳血管性認知症(脳卒中を繰り返すことで起こる)、レビー小体型認知症(手足のふるえなどパーキンソン病の症状に知的障害が起こる)、などがあります。
脳の中に「アミロイドβ(ベータ)タンパク」という物質がたまり、このタンパク質の毒性により神経細胞が破壊されて神経細胞数が減ることで発症すると考えられています。なぜ、このタンパク質がたまるかは不明です。脳動脈硬化が同時に存在すると、このアミロイドβのたまり方が早まることがわかってきています。高齢者は脳動脈硬化を持っているので、動脈硬化の進行を遅らせると、アルツハイマー病の進行を遅らせることにつながるのではと、最近は考えられ始めています。
アルツハイマー病では、新しいことを記憶できなくなる症状が初期に目立ちます。数分前から数日前のことが思い出せなくなり、またエピソード記憶(本人が体験したこと)も障害され、最近同窓会に出席したことや、旧友と会ったことなども思い出せなくなります。
認知症の検査には2種類あり、1つは認知症が存在するかどうかをみる検査、もう1つは認知症の原因となる病気を探す検査です。
スクリーニング検査と、研究で使われるさらに詳しい検査(多くの種類があります)に分けられます。
スクリーニングで国際的に使われることが多いのは、ミニメンタル・ステート(MMSE)です。日本で開発された長谷川式簡易知能スケール(改訂)もありますが、海外では使われないので、海外での研究との比較が困難という問題点があります。
血液検査により認知症と紛らわしい内科的疾患、例えば甲状腺機能低下症や神経梅毒などがあるかどうかを検査します。
頭部画像検査、CT、MRI検査では、脳血管障害、脳腫瘍、硬膜下血種、水頭症などの有無をみることができます。
脳血流SPECT検査では、脳の血流分布のパターンの特徴からいくつかの病気を推定することができます。例えば、アルツハイマー病、レビー小体型認知症などは、それぞれ特徴あるパターンを示します。
脳脊髄液検査では、そこに含まれる微量のβタンパク、タウタンパクの測定を行うことで、アルツハイマー病の診断の確かさを高めることができます。
PET検査では、脳内のβタンパクや、タウタンパクを染める特殊な薬を投与して、脳画像を撮像することでアルツハイマー病の診断の確からしさを高めることができます。しかし、これは研究用の検査であり、非常に費用のかかる検査でもあるため一般臨床では使われていません。
病気の経過は以下のとおりです。
新しい記憶が障害され、見当識(時間、場所など)が悪くなり、性格変化(うつ状態~多幸、興奮など)を起こします。
記憶障害は進行し、失語(言葉が理解できない、出てこない)、失認(目の前にあるものが何かわからない、など)、失行(衣服を着ることができない、電話のかけ方がわからない、など)が出てきます。
言葉数も減り、手足の動きも悪く硬くなり、寝たきりとなり、通常は10~15年の経過で全身の合併症(肺炎など)で死亡します。
治療法は、認知症症状に対する薬物療法とその周辺症状への薬物療法に大まかに分けられます。
保険適応の薬物は現在2種類(4薬剤)あり、それぞれの薬剤は病気の重症度などにより使用方法が決められています。診療現場では、患者さんの症状、他の合併症、薬物に対する反応などをみながら投薬します。
興奮やうつ状態などの周辺症状(記憶障害以外の精神症状、行動異常など)に対して、症状に合わせてさまざまな薬剤を調整しながら治療します。
アルツハイマー病を根本から治療する目的の薬物は世界中で開発がなされてきましたが、今日に至るまで、臨床的に認められた薬物は存在しません。現在も複数の薬物が開発途中にあり、早急な完成が望まれています。