徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

病気の治療

medical treatment

脳神経外科の病気:悪性リンパ腫

脳にできるリンパ腫で原因は不明

中枢神経原発悪性リンパ腫(PCNSL;primary central nervous system lymphoma:)については、脳にリンパ組織は存在しないので、発生原因はわかっていません。全脳腫瘍の約3%を占め、高齢者に多いのが特徴です(50歳以上が80%を占めるといわれています)。前駆症状としてぶどう膜炎がやはり3%みられます。悪性リンパ腫を合併する危険因子としては、免疫不全状態(臓器移植患者、高齢者)、特に、AIDS患者に高いことが報告されています。ほとんどがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫DLBCLです。

PCNSLではCHOP(シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、デキサメサゾン)療法の有効性が証明されず、全身性リンパ腫と異なった治療方針が必要で独立の疾患単位として分類されています。
腫瘍はステロイド投与によって急速に消失する場合があり、ghost tumorといわれており、術前のステロイド投与は控えます。腫瘍の部位が急速に変わったり、すなわち左半球から右に移動したり、画像上リンパ腫あるいは脳腫瘍と判断しがたい像があります。不顕性リンパ腫の問題もあり、FDG-PET/CTの有用性が高いといわれています。

大脳半球から脳橋や延髄に進展する症例も

診断は、画像所見は非特異的で、脳血管撮影でも血管が非常に豊富な場合もあればそうでない場合もあります。CT造影でも描出されず、かろうじて造影MRIで描出されることがあります。
また造影MRIで明らかな高信号として描出されず、T2WI、Flairでのみ描出される場合もあります。

膠芽腫と同様、大脳半球に存在したものが脳橋や延髄に線状に進展するものもあります。

髄液内播種が生じやすく、髄液β2ミクログロブリンが高率に高値を示します。MRIでは造影剤で均一な高信号として描出されることが多いですが、膠芽腫と鑑別がつきにくい場合もあります。発生部位は大脳基底核部や後頭葉が多く、浸潤性で悪性神経膠腫と同様に脳梁を介して反体側に進展しbutterfly patternを呈します。
その他には神経膠芽腫でもみられたような多中心性の病変を示す場合もあります。
時には眼窩内にもリンパ腫が発生します。
診断には全身性リンパ腫の除外に加えて、眼球進展除外のための眼科的検査、脊髄への播種病巣の検索、HIV感染の有無のチェックが必要です。

大量MTX療法は播種細胞にも効果期待

治療では、脳以外の臓器の悪性リンパ腫に使用されるCHOP(シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、デキサメサゾン)療法はあまり有効でないことが多く、COP変法も同様で、最近では分子標的治療薬でCD20抗原を標的としたマウス・ヒトキメラ型モノクロナール抗体薬であるRituximabを使用することもあります。しかし本剤を使用する場合は投与開始24時間以内に出現する“infusion reaction”に注意が必要で、皮疹、発熱、悪寒、頭痛、嘔吐、浮腫、気管支けいれんなどがみられます。骨髄抑制、脱毛は生じません。
しかし、PCNSLの標準治療は大量MTX療法(HD-MTX)(2~3.5g/m2以上)を含む化学療法を3~4コース行った後の全脳照射です。この方法は、MTXそのものは少量では血液脳関門(BBB)を通過しませんが、大量投与によってこれを通過し、髄液にも移行することが知られ、播種細胞にも効果が期待されています。3時間の急速点滴静注で2~3週ごとに3~5コース行うことが望ましいとされています。治療中に注意することは、MTXは腎排出であるため尿PHが7.0以下の酸性になるとMTXが尿細管で析出して急性腎不全をきたすことがあり、メイロンによるPH、尿量管理の重要性と、長時間MTX曝露に対する葉酸救援療法が必要になります。

大量MTX療法3クール後に全脳照射30Gyと局所照射20Gyを追加します。その治療による自験例(43例)では平均生存期間は32カ月ですが50歳以下(14例)では41カ月を示しています。一方、MTX療法+全脳照射に伴う高次脳機能障害は特に高齢者で大きな問題となります。そこで化学療法のみの群と化学療法後に全脳照射を追加した群で比較した第III相試験ではOS中央値はほぼ同等でしたが、統計学的に全脳照射回避の非劣性は証明できなかったと報告されています。再発までの期間(PFS)は化学療法+全脳照射群で優れていましたが、高次機能障害の頻度は化学療法単独群で少なくなっていました。

高齢者に対する最適な治療法は、初期化学療法で寛解になった症例群では全脳照射の放射線量の減量または延期を考慮してもよいと考えられています。筆者らは75歳以上では放射線療法は行わず、化学療法単独の治療方針をとっています。PCNSLの再発あるいはMTX治療の抵抗例についての問題もあり、悪性神経膠腫に使用する抗がん剤であるtemozolomideによる化学療法も報告されています。これを使用する理由は、PCNSLの半数がmethylguanine methyltransferase(MGMT)遺伝子プロモーターのメチル化を有しているという報告からきています。MTXの併用薬剤としてはシタラビンが有効であることが証明されています。

予後因子は年齢とPS

PCNSLの標準治療であるHD-MTXと、放射線療法の問題として遅発性神経毒性があり、これをいかに軽減するかが予後を左右します。予後因子は年齢とPSで、悪性神経膠腫と違い、手術による摘出度には左右されません。
PCNSLの予後は極めて悪く、無治療では数カ月、放射線治療で1年少々、メソトレキセートと放射線併用で年齢差がありますが3年少々といわれています。悪性神経膠腫である膠芽腫と似た予後といえます。

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