病気の治療
medical treatment
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先天性横隔膜ヘルニアは、おなかと胸を分けている横隔膜という薄い膜に生まれつき穴があいている病気で、この穴からおなかの臓器(胃、小腸、大腸、脾臓、肝臓など)が胸に入り込み、肺を圧迫するために呼吸困難が発生します。穴の位置や大きさによってはほとんど症状を起こさないものもありますが、大半は横隔膜の後ろ外側に穴があるものでボホダレク孔ヘルニアと呼ばれ、重症になりがちです。このタイプは生まれた直後から生命にかかわる重大な症状(呼吸困難など)をきたすことが多いのです。
横隔膜は胎生2カ月半ころにでき上がりますが、その際に穴が開いた状態にあるとたくさんのお腹の臓器が胸に入り込み、穴の開いている側の肺だけでなく、反対側の正常の肺も圧迫され、肺の発達が両側とも障害され、生まれてすぐに重篤な呼吸困難をきたすことになります。横隔膜にできる穴は右側より左側のほうが多く、75%が左側です。
症状としては生まれてから呼吸回数が多かったり、チアノーゼといって唇の色が悪かったりします。生後24時間以内に発症したものは重症度が高いといわれています。最近では胎児期の超音波検査でわかることが多く、今までなら小児外科医のいる施設に搬送される途中で亡くなっていた症例も、小児外科医のいる施設で出生するようになり救命率が上がってきています。
それに加えて治療法の進歩が救命率を上げています。以前は生まれてすぐに緊急手術を行い、胸に入り込んだお腹の臓器をお腹に戻し穴を閉じていました。しかし緊急手術によるストレスが赤ちゃんの血液循環を悪くし、さらに人工呼吸器によって肺が無理やり膨らむことで肺が傷ついてしまうということがわかってきました。そのため現在では、生後すぐには手術を行わず、数日間かけて体の血液循環を安定させてから手術を行うようになってきました。
さらに重症例では、極微量の一酸化窒素を使用した治療や人工肺という特殊装置を用いて赤ちゃんの血液循環を改善させる方法もあります。一方、生後1日以上経過してから発症する赤ちゃんや、たまたま他の病気の検査時に見つかるような場合は、肺の発育は良好なため、治療成績も良好です。