徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

小児科の病気:母児間の免疫が問題になる血液疾患③─新生児同種免疫性血小板減少症(NAIT)

母子間不適合で生じる血小板減少症

新生児にみられる血小板減少症です。NAIT(neonatal alloimmune thrombocytopenia)とは、ヒト血小板特異抗原(HPA)の母児間不適合により生じる血小板減少症をいいます。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)合併妊娠(ITPやSLEを合併した妊婦)の妊娠時において、母親が保有する血小板自己抗体が胎児に移行して、胎児・新生児の血小板減少症を惹起するのではないかと危惧されますが、このような母親から生まれた児の血小板数は減少しないか、軽度低下にとどまります。一方、新生児に高度な血小板減少がみられた場合は、母親に同種HPA抗体が産生されていることによるNAITの発症を考慮します。

父親由来の血小板抗原を非自己と認識

赤血球(Rh、ABO)型の母児不適合妊娠と同様に、母親に欠き、児に表現されている父親由来の血小板抗原を母親は非自己として認識します。母親の産生した抗HPA‐IgG抗体は胎盤を通過して、児の血小板に結合し、抗体で感作された児の血小板は脾臓の網内系で捕捉・破壊されます。抗体のアフィニティや力価が強い場合は血小板だけでなく、巨核球まで破壊されます。血小板同種抗原(allo-antigen)であるHPAのうちNAITへの関与があるとされるのはHPA-3とHPA-5です。HPAの検査は普通の病院では行えませんので、血液センターに相談する必要があります。

頭蓋内出血など致死的リスクも

出生直後の血小板減少のため、出血しやすくなり、致死的脳出血、穿孔脳症、水頭症の原因となります。児の脾機能は出生直後よりも出生後に活発化するので、出生直後より生後3日目のほうが血小板数はさらに低下します。

治療により急速に血小板数の増加が得られれば、予後はよいですが、血小板数<10,000/µLが続けば、消化管出血、頭蓋内出血などのリスクが高くなります。

診断で重要なのは母体血中の同種HPA抗体の存在

診断で、最も重要なのは母体血中に同種HPA抗体の存在を証明することです。NAITの診断基準としては、①母体にはITPはなく、児が一過性の血小板減少症をきたすこと、②しばしば、第1子から血小板減少症をみること、③感染、その他の新生児紫斑病を除外できること、④患児の血小板と反応するIgG同種HPA抗体が母親の血清中に証明されること、とされています。

治療はITPに準じて免疫グロブリン(IVIG)やステロイドが用いられます。また、血小板輸注は抗原適合血小板製剤あるいは母体由来の洗浄血小板製剤が望ましいとされていますが、入手不能の場合、ランダムドナーからの血小板輸注も可能です。

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