徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

小児科の病気:子どもの不整脈

電気的信号が心筋細胞を収縮・拡張

心臓は血液を全身に送り出すために絶え間なく収縮を続けています。この収縮のリズムを司っているのが洞結節で、この洞結節から発生した電気的信号が心房→房室結節→ヒス束→プルキンエ線維を伝導(刺激伝導系)し、心室の心筋細胞を収縮・拡張させます。

この収縮のリズムの異常が不整脈と呼ばれるものです。不整脈は大きく分けて3つの種類があります。①脈の遅くなる「徐脈」、②速くなる「頻脈」、さらに、③脈が飛ぶ「期外収縮」です。子どもでは、日常の生活のなかで症状があることは少なく、学校での心臓検診で初めて異常を指摘されることが多いです。以下に代表的な不整脈の概要を述べます。

本来のリズムより早く心臓が動く期外収縮

本来のリズミカルなリズムよりも1テンポ早く収縮してしまうことを期外収縮といい、心房性期外収縮と心室性期外収縮があります。期外収縮では、本来のリズムより早めに刺激が出て心臓が動くため、1回の拍動で十分に血液を送れなくなります。そのため、実際は心臓が動いているのに、拍動で生じた圧力は弱く、脈として感じられなくなり、脈が飛んだように感じます。しかし、子どもでは多くの場合、無症状であり、治療を必要としません。症状がある場合は運動負荷心電図やホルター心電図を行って、頻拍性不整脈がないかどうかを確認します。期外収縮の頻度が増加する場合は運動制限を考慮しますが、期外収縮が運動で消失する場合も多く、その場合は治療や運動制限は不要で、定期的な観察のみ行います。

WPW症候群とは?

WPW症候群(Wolf-Parkinson-White syndrome)とは、心房と心室の間の刺激が伝わる伝導路について、本来の伝導路とは別の通り道(副伝導路:主なものとしてケント束があります)が生じることで、乳児では心拍数220以上、学童では180以上にもなる頻拍発作を引き起こす病気です。心電図で特徴的な波(デルタ波)がみられることから診断されます。動悸、胸部不快感、失神などの症状をきたし長時間持続すると心不全につながります。

頻拍発作時の治療には、バルサルバ手技(息ごらえ)、冷水や氷を顔にあてる、頸動脈洞マッサージといった迷走神経を刺激することで心拍数を減少させる治療や、可能であれば薬を血管から静脈注射することで治療します。心不全の緊急時には電気的除細動を行います。

これらの発作を予防するためには抗不整脈薬の内服が必要で、発作を繰り返す場合は心臓カテーテルによって副伝導路の高周波焼却術が行われ、根治性を持った高い有効性が証明されています。ただし、学校検診で指摘されたWPW症候群のすべての患者さんが、頻拍発作を起こすわけではありません。頻拍発作がない場合には、特別な治療、運動制限は必要ありません。睡眠不足、過労、ストレスが発作の誘因となることがあるので、注意が必要です。

小児期の命にかかわる不整脈─QT延長症候群

QT延長症候群とは、心電図の波形でQT時間が延長することから診断されます。カリウム・ナトリウムイオンチャネルというたんぱくの異常が原因であることが知られています。先天性QT延長症候群は遺伝性の病気で、性別に関係なく50%の確率で子どもに遺伝します(常染色体優性遺伝)が、症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも症状が現れるとは限りません。稀ですが、生まれつきの聴力障害(先天性聾(ろう))を伴うものは常染色体劣性遺伝をします。前述した心室性期外収縮が頻回に生じた後に頻拍発作(専門的には多形性心室頻拍torsade de pointes(TdP)といいます)や心室細動をきたし、失神や突然死を起こしうる病気で、小児期の命にかかわる不整脈として重要です。

頻拍発作の予防には、βブロッカーといった抗不整脈薬が用いられます。発作時には抗不整脈薬の静脈注射や電気的除細動が必要です。一方、学校検診で指摘されたQT延長症候群のすべての方が、発作を起こすわけではありません。発作がない場合には、特別な治療、運動制限は必要ありませんが、睡眠不足、過労、運動時の水分・塩分補給不足、水泳中(特に潜水)が発作の誘因になることが多いので、注意をすることが大切です。遺伝子型で14タイプがあり、それぞれのタイプで症状の出現する要因が異なることから、それぞれのタイプに合わせた治療が実践されています。

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