病気の治療
medical treatment
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新生児ヘモクロマトーシスとは、出生後早期から肝機能異常を呈し、組織学的に肝臓、膵臓や心臓などの網内系以外の諸臓器に鉄沈着を認める稀な疾患です。新生児期の肝硬変に限らず、すでに子宮内での胎児の発育不全を認める症例が多いという特徴があります。遺伝性の疾患ではありません。
母体血中に生じた胎児肝臓に対するIgG抗体が経胎盤的に胎児肝臓に達して補体(C5b-9 complex)を活性化し、肝障害を及ぼします。そのために胎児の血中ヘプシジンが低下し、胎児は鉄過剰状態になります(図1)。すなわち、母児同種免疫学的機序による肝障害GALD(gestational alloimmune liver disease)が新生児ヘモクロマトーシスの発症機序と説明されています。
出生直後からの全身状態不良(呼吸・循環不全など)、胎児発育遅延、胎児水腫、肝不全徴候などがあり、MRI T2強調画像で肝臓を含む諸臓器に鉄沈着を示唆する低信号が認められます。同胞発症の頻度が高いとされています。鉄を輸送する糖タンパクであるトランスフェリン飽和率は高値になります。
胎児期にすでに流産や早産、子宮内発育不全、羊水減少が認められることがあります。生後早期から肝機能異常、肝不全徴候を呈する例が多く、肝不全に至った症例の予後は不良とされています。
診断はMRI検査による画像所見、血清フェリチンの高値、トランスフェリン飽和率の高値に加え、口唇小唾液腺生検により唾液腺組織に病理組織学的に鉄沈着を証明します。
内科的治療としては、交換輸血、カクテル療法(抗酸化剤、鉄キレート剤)、免疫グロブリン(IVIG)治療を有効とする報告があります。不応例は肝移植の適応になります。また、妊婦に対して妊娠14週以降にIVIGを継続的に投与することで発症を予防できたとする報告もあります。