医療法人 徳洲会屋久島徳洲会病院
世界自然遺産に指定された島、映画「もののけ姫」に描かれた明るく深い緑の森、亜熱帯から亜寒帯まで垂直分布する植物群、島の中央部には、2000m近い山々が屹立。その様は「洋上のアルプス」とも呼ばれています。
林芙美子の「浮雲」に描かれた、年中雨の暗いじめじめした屋久島はすでになく、豊かな山や海の自然を求め、毎年多くの観光客が訪れます。
屋久島は、鹿児島市より約130km南に浮かぶ面積約500km2の島で、冬、海岸付近では、ハイビスカスの花が咲き誇り、標高1935mの宮之浦岳では、雪が深々と降り積もるというように、わずか南北約25kmに日本列島の全気候が凝縮された特異な美しい島です。
また、年間降雨量も4500mmを超し厳しい自然の中で育まれた樹齢3700年とも言われる縄文杉をはじめ、屋久島固有の植物種に加え、日本の植物種の7割以上がひしめきあっているため、「東洋のガラパゴス」とも呼ばれています。
院長メッセージMessage from the hospital director
島民のすべてのニードへの対応が基本
世界自然遺産の島「屋久島」の人口は約1万3000人で、年間30万人が観光で訪れます。島では当院が唯一の病院で現在140床です。
まず救急医療ですが、年間約700件の救急件数のうち95%以上が当院に搬送されます。離島では救急を断るという発想はありません。また、島は悪天候等でたやすく孤立し、ヘリ搬送すら不可能となります。この状況下でいかに島の人の生命を守るか。これが島の医療戦略となります。
島には輸血用血液の備蓄がありません。ですので、緊急時に輸血を行うため、「屋久島町緊急時供血者登録制度」があります。これによって、緊急輸血が必要な際は、電話にて要請すれば直ちに病院に近い方から連絡が行き、供血のためすぐに病院にかけつけてくれ緊急輸血が可能となります。もちろん血液照射や感染症チェックも実施しています。
口永良部島の火山爆発で有名となりましたが、災害医療にも対応しています。受傷された方々がヘリコプターで救助され当院に搬入されました。その後は避難されている方々に対し「口永良部島避難者特別外来」を設置し診療を実施しました。
屋久島は台風の通過点でもあり頻回に停電が起こります。停電時には自家発電で対応することになります(病院内に発電所あり)。
今後の当院の進むべき方向性として「在宅医療」と「リハビリ」があります。現在、在宅登録患者さんは約80人。在宅訪問診療・看護、訪問リハビリを実施し、在宅での看取りも行っています。現在、常勤医は7人(常勤換算では11.5人)。全員、屋久島に魅せられ島に定住してしまっています。内科・外科だけでなく、産婦人科・形成外科・麻酔科・神経内科の常勤がいるのもなかなかのものです。その他の診療科は非常勤医で対応しています(眼科・耳鼻科・小児科・整形外科・脳外科・泌尿器科・精神科など)。島民のすべてのニードに対応するのが基本ですが、離島という制約のもと、どのように医療を行っていくのが最もベストなのか、その視点で毎日の医療を行っています。
看護責任者メッセージMessage from the hospital director
島唯一の病院として救急から在宅まで
屋久島徳洲会病院は「生命だけは平等だ」の理念の下、島唯一の病院として救急から在宅まで幅広い医療を行っています。山と海に囲まれた世界遺産の島「屋久島」。癒しを求めてたくさんの方が訪れる島です。そんな自然に恵まれた素晴らしい環境にある当院ですが、現場は離島医療のハードな面に直面することもしばしばです。限られた人材の中で、患者様の安全を守りながら最大限の看護を提供するためにはどうしたらよいか。日々、悪戦苦闘しています。
島唯一の病院として、救急は絶対に断らない、断れない。「屋久島救急勉強会」と称し、消防職員と症例検討会や意見交換会を積極的に行っています。また、出産施設も当院だけですので、生命の誕生を家族と共に喜ぶ。その一方で、命の灯が消える時にはご家族に寄り添う。希望があれば住み慣れた自宅での看取りも。すべてが当たり前のことではありますが、島ならではの顔が見える関係や患者様との距離も近く「自分の家族のように」という気持ちで看護を行っています。
この7月で当院は開院20周年を迎えます。島の方々に支えられての20年です。病院として、今後どのように島に貢献していくかと考えた時、病院機能を継続させることはもちろんですが、私は屋久島の子供たちへ命の大切さを教えていきたいと思っています。具体的には、小学生・中学生を対象にBLS(一時救命処置)等を行っていく予定です。屋久島の未来を担う子供たちと共に、私たちも成長していきたいと考えています。
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