徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(平成31年)4月15日 月曜日 徳洲新聞 NO.1180 一面

南部病院
放射線治療件数が伸長
トモセラピー順調に稼働

南部徳洲会病院(沖縄県)は2012年に放射線治療科を設置し、県内で初めて高精度放射線治療装置「トモセラピー」を導入、順調に治療件数を伸ばしている。同装置はIMRT(強度変調放射線治療)という技術により、腫瘍に放射線を集中する一方、正常な組織への照射線量を減らせるのが特徴で、高い治療効果が期待できる。同院は丁寧な応対により、患者体験価値を高めると同時に、院内他科や地域の医療機関との連携も強化し、放射線治療の充実を図っている。

患者体験価値の向上にも力

多職種で患者さんをサポートする放射線治療科 多職種で患者さんをサポートする放射線治療科

手術、化学治療(抗がん剤)、放射線治療は、がんの三大治療と言われ、このうち放射線治療は放射線を照射し、がん細胞のDNA(デオキシリボ核酸)にダメージを与え、がん細胞を死滅または縮小させる。放射線治療の目的は①根治、②補助、③緩和――に分かれる。

「補助」のひとつとして術前照射がある。たとえば、進行した直腸がんは手術をしても人工肛門の造設を余儀なくされるケースがあるが、放射線治療により、がんを小さくしてから手術すれば、回避することも可能だ。「緩和」は痛みなどのつらい症状をやわらげる治療。とくに骨転移や脳の転移に対し効果がある。

最近では技術の進歩により、「根治」を目的に放射線治療を行うケースも増えている。その代表として挙がる装置がトモセラピーだ。同装置の得意とするIMRTは、CT(コンピュータ断層撮影)と放射線装置を一体化し、複雑な動きや計算をコンピュータで制御。腫瘍の形状に合わせて放射線の形や強度を変化させ、360度の全方向からミリ単位の高い精度で照射することができる。

同院では、主に前立腺がんに対しトモセラピーを用い、5年生存率(再発含む)は90%以上。基本的に外来通院で対応可能、1回の治療時間は10~20分、照射回数は最大で39回程度(約2カ月間)。副作用として頻尿や尿勢低下などあるが、前立腺周囲の神経を傷つけないため尿失禁や勃起不全などは起こりにくい。

放射線治療科の眞鍋良彦医長は「当院にトモセラピー、中部徳洲会病院(沖縄県)にダヴィンチ(内視鏡下手術支援ロボット)があり、同じグループ病院で放射線治療にも手術にも対応できることが強みだと思います」と強調する。

眞鍋医長(左)、橋本医師ともに放射線治療専門医 眞鍋医長(左)、橋本医師ともに放射線治療専門医

放射線治療を実施する際に気を付けているのは、患者さんに納得してもらったうえで臨んでもらうことだ。患者さんは放射線治療に対し、髪の毛が抜ける、放射線のせいで別のがんになるなど誤解していることも多い。こうした「なんとなく怖い」イメージを払拭するために、長めに診察時間を取り、メリットやデメリットを説明したうえで治療計画を提示する。

同科には専従の医師2人に加え、がん放射線療法看護認定看護師、医学物理士や放射線治療品質管理士の資格をもつ診療放射線技師、メディカルクラークなどが在籍。それぞれの立場で、患者さんに対し、長期にわたる放射線治療を完遂するためのサポートを行う。

同院で放射線治療件数が伸びている大きな要因に、他診療科との連携がある。同科には病棟はないが、たとえば疼痛(とうつう)などのために緩和照射が必要な患者さんは、緩和ケア部の嶺井悟部長が照射期間中の入院を引き受けている。放射線治療科の橋本成司医師は「薬物による疼痛コントロールはもちろん、状態が悪化し入院中に看取りをすることもあります。緩和ケア部との連携は患者さんやご家族にとっても有益だと思います」と説明する。

治療計画に基づき診療放射線技師が機器を操作する 治療計画に基づき診療放射線技師が機器を操作する

他院から化学放射線療法(放射線治療期間中に化学療法を同時に施行)の依頼があった場合も、スムーズに他科連携を行っている。事前に紹介患者さんと医師との間を仲介する地域医療連携室の力も大きい。こうした協力体制があるからこそ、紹介を断らない放射線治療が実現でき、地域での信頼関係につながる。

放射線治療の課題のひとつに適応率が低いことが挙げられる。欧米で約60%のところ日本では約30%、沖縄県内ではさらに低い数値になる。そこで、県内で放射線治療を行う9病院が定期的に集まり、情報交換や啓発活動に注力。南部病院も近隣の医療施設への説明、地域の方々に向けた医療講演などに努めている。

同院は新しい技術の導入にも積極的だ。直腸と前立腺の間にハイドロゲル(三次元の網目構造内に水を含んだ物質)を挿入し、直腸への照射線量を大幅に減らす「ハイドロゲルスペーサー」が昨年、保険適用されたことを受け、泌尿器科の向山秀樹部長と連携を深め施行していく考えだ。

さらに眞鍋医長は「腫瘍に、よりピンポイントに放射線を照射できるサイバーナイフを導入できれば、前立腺がんなら5回の照射で治療が終わり、患者さんの負担も減らせます」と展望している。

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