2019年(平成31年)2月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1172 三面
災害医療などテーマ
第9回ERCCMフォーラム
徳洲会救急部会が開催
徳洲会救急部会(TKG)は2日間、岸和田徳洲会病院(大阪府)で第9回ERCCMフォーラムを開催した。これはTKG独自の学術集会で、今回のテーマは「病院から出ていく救急~災害医療とドクターカー~」。全国から12病院、52人が参加して、研鑽(けんさん)を積んだ。
全国から12病院、52人が参加し情報交換
ERCCMとは、ER(救急外来)とCCM(救命救急医療)をかけ合わせた造語。同フォーラムはTKGが発足した2014年から年2回程度開催している。今回は岸和田病院の鍜冶有登・救命救急センター長による特別講演に加え、8病院が15演題を発表した。
鍜冶センター長は「災害医療における徳洲会グループの役割」と題し特別講演。災害医療は「被災者のために」の視点を揺るがしてはならないと強調したうえで、災害時には、体制の整備(CSCA:指揮と統制、安全、コミュニケーション、評価)、患者さんの救命(TTT:トリアージ、治療、搬送)を実践することが重要であると説明した。
さらに、災害は需要と供給のバランスが破綻した状態であり、リソースとして活用できるものはすべて投入する必要があるとし、「災害状態は時刻や規模が予知不能であり、各病院は平時から受け入れ、派遣、事業継続への備えが必要です」と注意喚起した。
一般演題では医師、看護師、保健師、救急救命士、薬剤師、事務職と多職種が発表。テーマは病院内の新しい取り組み、治療に関する知見の共有、さらに西日本豪雨や北海道胆振(いぶり)東部地震での活動報告など多岐にわたった。
このうち札幌東徳洲会病院の齋藤靖弘薬剤師は、北海道胆振東部地震での同院薬剤部の対応がテーマ。震災により大規模な停電(ブラックアウト)が発生したことによる影響や対策を示したうえで、「各種機器の点検、必要機材や物品の購入を行い、今後起こり得る災害を想像して備えておく必要があります」とまとめた。
西日本豪雨に関しては2題発表。福岡徳洲会病院の鈴木裕之・救急科医長と湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の吉田萌絵薬剤師が、NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)隊員として被災地で活動した経験をもとに報告した。
幹事の鍜冶センター長が災害医療をテーマに特別講演
鈴木医長は避難所の保健衛生活動に関し「医療行為そのもの」と表現。多くの支援団体が介入する避難所では急性期から保健師がコーディネーターを務めるのは難しく、NPO法人が中核になることが重要であるとし、「そこにもTMATの役割があります」と訴えた。
吉田薬剤師は、被災地では限られた医療資源の適正な評価だけでなく、一般用医薬品の知識も必要になると強調。さらに「避難所内を積極的に回診し、自ら考えて活動することが重要です」とアピールした。
札幌東病院の松田律史・救急科医師はドクターカーをテーマに発表。救急科が関与したドクターカー症例を振り返った。提示した3例はすべて離島・へき地からの搬送で、早いペースで増悪する病態のため医師、看護師による早期接触は意義があったと説明。「当院は遠隔地からの搬送症例に対し、救急医の出動態勢を整備する必要があります」と結論付けた。
ほかの演題でも活発に意見交換し、最後に同部会長の末吉敦・宇治徳洲会病院(京都府)院長が挨拶、閉会した。次回は4月に生駒市立病院(奈良県)で開催予定。