徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

肝臓・膵臓内科の病気:慢性膵炎

膵臓細胞の線維化が進行

さまざまな原因(アルコールの長期多飲など)によって、膵臓に持続性の炎症が起こり、膵臓の細胞がこわれ線維が増えて硬くなる病気です。日本では約6万7,000人の発症者がいると推定され、人口10万人あたり約50人となります。慢性膵炎では腹痛などの症状が出現することや、膵機能が低下し栄養障害や糖尿病になることがあります。また膵がんのリスク因子にもなることが報告されています。

慢性膵炎は進行した場合は不可逆的とされていますので、診断された時点でそれ以上進行しないようにすることが重要になります。

原因の7割がアルコールの長期多飲

最も多い原因はアルコールの長期多飲で、全体の70%になります。その他、急性膵炎後の変化、胆石性、自己免疫性などが挙げられますが、原因不明例も20%近くあるとされています。

膵機能の低下に伴い腹痛が弱まる

代表的な症状は腹痛になります。その他、膵臓は消化器吸収に関連する外分泌(消化液である膵液を産生)と種々のホルモンを産生する内分泌(代表的ホルモンは血糖を下げるインスリン)の機能を有していますので、外分泌の障害により栄養障害、内分泌の障害により、特にインスリンの低下により糖尿病になります。

慢性膵炎は下記の3つの期間に分類され、それぞれの時期で症状は異なります。

画像検査の主な所見は膵臓の萎縮・石灰化

症状、血液検査、画像検査などの所見から判断する診断基準がありますので、これを用いて判断します。血液検査では、膵臓の細胞破壊を反映してアミラーゼが上昇します。また、低栄養を反映して、アルブミン、ヘモグロビン、コレステロールなどが低値となる場合もあります。

腹部の画像検査では超音波、CTなどが代表的な検査ですが、膵臓の萎縮と、膵内の石灰化が代表的な所見とされます。またMRIでは、特に膵管に焦点をあてて撮影することが可能ですが、膵管の不均等な狭窄と拡張が特徴的とされます。これらは比較的負担の少ない検査ですが、確定診断がつかない場合には、EUS(超音波内視鏡)やERCP(内視鏡的膵胆管造影検査と組織検査)といった特殊な内視鏡検査を用いることで、診断を行うことがあります。

基本はアルコールや高脂肪食の制限

まずは内科的治療法(生活習慣と投薬)が基本となりますが、アルコールや高脂肪食など、原因が明らかな場合はそれらの制限が第一となります。

薬物療法としては、腹痛に対する鎮痛薬の投与や、消化酵素の補充療法、タンパク分解酵素阻害薬などを行います。また、脂肪を制限した成分栄養剤の投与により症状の改善が図れるという報告があります。

なお、膵管の中に発生した結石が腹痛などの症状の原因となる場合がありますが、その場合は結石に対する治療が必要になります。侵襲の低い治療としては口から内視鏡を用いて結石を除去する方法がありますが、大結石の場合は、レーザーや水圧での破砕や、ESWLという体外衝撃波装置による破砕を行ってから、結石を除去します。結石の除去が困難な場合や膵管に狭い部分がある場合は、流れをよくするための管(ステント)を膵管内に挿入して症状の緩和を図る方法もあります。

内視鏡治療が無効な場合や再発を繰り返す場合には、外科手術(膵管減圧術や膵切除)を考慮することもあります。

平均寿命より10歳以上短く膵がんの高リスク群

予後に関しては、わが国の全国調査では慢性膵炎の方の平均寿命は67歳とされており、通常の平均寿命よりも10歳以上短いことが知られています。慢性膵炎の発症には生活習慣における原因があることが多いため、予防するためには前述のようなアルコールや高脂肪食の制限など、日々の生活習慣の見直しが重要となります。一度発症してしまった場合には根治は難しいため、それ以上の進行を予防することを目的とした生活習慣の改善が必要となります。また、慢性膵炎は膵がんの高リスク群であることが知られており、1年に1回は画像検査をうけることが推奨されます。

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