病気の治療
medical treatment
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急性膵炎は、さまざまな原因により活性化された膵酵素によって自分の膵臓に炎症と障害が引き起こされる病気です。重症例では、適切に治療を行った場合でも10~30%と高い死亡率であるとする報告もあります。そのため早期に診断し、適切な治療を開始することが重要です。
男性ではアルコール性が多く、女性では胆石性が多いといわれていますが、特発性といって原因不明な場合も2割程度存在します。胆石による膵炎は、胆管と膵管の出口が共通の穴となっているため、胆管から落ちてきた胆石が膵臓の出口につまることで生じます。高齢者では男女問わず胆石性の割合が増加します。その他、薬剤性、内視鏡検査の偶発症、ウイルス感染症、脂質異常症などが原因になりえます。
腹痛が最も多い症状であり、その他、背部痛や嘔吐、発熱などで発症する場合があります。腹痛の発現は一般的には急な激痛であることが多いのですが、ゆっくり進行する場合や不快感程度のこともあります。飲酒や高脂肪食が原因の場合は、それらを摂取した8~24時間後に発症することが多いといわれています。
身体診察(上腹部の疼痛の有無)に加えて、採血と画像検査である腹部造影CTが主な検査法になり、これらを総合して膵炎の診断を行います。血液検査では白血球やCRPといった炎症を反映する項目が高値となります。また、特徴的な項目として膵酵素であるアミラーゼが高値となります。腹部造影CTでは、膵臓がはれる、膵臓への造影剤の流入にムラが生じる、膵臓の周囲に毛羽立ち像がみられるなどが、膵炎の特徴的な所見になります。
急性期には比較的多量の点滴が必要になることが多いとされます。また、疼痛が強いことが多いため、鎮痛剤による疼痛コントロールを行います。重症の場合には抗生物質などを併用します。その他、明瞭な効果の証明はなされていませんが、膵酵素に対して蛋白分解酵素阻害薬と呼ばれる薬剤を用いることがあります。 以前は急性膵炎に対しては絶食療法が中心でしたが、最近では早期の経腸栄養が予後を改善することが知られており、絶食期間は短くなっています。
軽症の急性膵炎は上記治療で改善しますが、炎症が高度となると腹部全体に波及していくほか、腎臓や肺など膵臓以外の多臓器にも影響を及ぼすことがあります。このため良性疾 患でありながら死亡率は高く、膵炎全体の約2%、重症膵炎では10%が死亡するとの報告もあります。重症膵炎では、死亡を免れても20%程度が慢性膵炎(詳細は別項)に移行するとされており、急性膵炎が改善した後も生活習慣の改善が必要になります。特にアルコール性の膵炎の場合は、禁酒が不可欠となります。 また、急性膵炎自体が改善した後に、仮性嚢胞と呼ばれる液体が貯留した袋状の構造物を形成する場合があります。仮性嚢胞は自然に吸収されることが多いのですが、出血や感染などを併発することがあり、その際は内視鏡治療、血管内カテーテル治療、手術療法などが必要になる場合があります。
アルコール、脂質異常などが原因となるため、それらが原因による膵炎の既往がある方においては、飲酒制限や脂質異常症への対応が予防に有効な場合があります。その他、胆石が膵臓の出口につまって膵炎を生じる場合は、胆石自体の治療を行うことで予防が可能です。