病気の治療
medical treatment
medical treatment
血小板は、赤血球や白血球と同様に骨髄の中で産生され末梢血中に現れる血液成分の1つで、血管壁が損傷した場合にその傷口に集まって凝集し出血を防ぎ、止血する役割を果たしています。血小板の数が少なすぎると出血傾向となり、血小板数は正常でもその働き(機能)に異常があるとやはり出血傾向になります。一方、血小板の数が多すぎると血栓症を呈しやすく心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。血小板減少症とは、血小板の数が少なくなった状態をいい、遺伝性に血小板機能に異常のあるものを血小板機能異常症といいます。
なお、血小板減少症を診る際には血小板のサイズ(正常よりも大きな巨大血小板なのか、正常よりも小さいミクロ血小板なのか)、の鑑別も必要になります。
大別して血小板数減少には骨髄における産生能力の低下、末梢における血小板利用・破壊の亢進、血小板の体内臓器での分布の異常─の3つの原因があり、先天性(遺伝性)血小板機能異常症では血小板数減少を伴うものと伴わないものがあります。
遺伝性血小板機能異常症には、以下のように血小板数減少を伴うものと伴わないもの、また血小板のサイズの大きなものと小さなものがあります。
症状としては、皮膚や粘膜からの出血が多いです。異常な青あざや点状出血があると、血小板減少症が疑われます。一般に、血小板数は正常で15万から35万/μLであり、8万~10万/μLまで減少すると軽度の打撲で出血斑が出現し、5万/μL以下ではさらに出血斑が出やすく、1万/μL以下になると点状出血を呈します。臨床的には血小板数が2万/μLを切ると頭蓋内出血などのリスクが上がるので血小板輸血や血小板数を増やす薬剤投与が必要になります。
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は急性と慢性に区別されます。慢性ITPでは後に再生不良性貧血や骨髄異形成症候群(MDS)に移行する場合があります。遺伝性の疾患は通常、慢性経過をとります。
検査と診断には、血小板数の正確なカウントが必要です。偽性血小板減少という問題があり、これは諸種の原因により実際の血小板数よりも少ない値が出る場合をいいます。よく知られているのは抗凝固剤であるEDTAにより生じる偽性血小板減少症です。ITPの診断にはPAIgG(血小板に結合しているIgG抗体を測定する)や抗血小板抗体(これにはITPでみられる自己免疫による自己抗体と抗血小板同種抗体がある)の検査のほか、骨髄検査も参考になります。ITPでは骨髄中の巨核球数は正常あるいは増加しており血小板産生を示す成熟巨核球は少なく血小板産生不良な幼若巨核球が主体になっています(図1)。
血小板機能異常が疑われる場合、血小板浮遊血漿(PRP)を用いてフローサイトメリーにより血小板表面抗原(CD41, CD42a, CD42b, CD61)を調べます。血小板減少の原因探索のための骨髄検査を要する場合があります。
治療は原因に応じた対応になります。最も頻度の高い急性ITPでは免疫抑制剤としてステロイド、免疫グロブリン(IVIG)、難治例にはリツキサンなどが用いられます。脾摘が適応になる場合があるほか、ピロリ除菌が奏功する例もあります。最近では慢性ITPにトロンボポエチン受容体作動薬であるレボレード(内服薬)、ロミプレート(皮下注射薬)が保険適応になっています。
遺伝性血小板減少・機能異常症の診断は的確に行い、診断確定例では出血その他、症状発現に備えて注意深いフォローが必要です。血小板輸注を必要とする症例もありますが、血小板を輸注しても反応のない血小板輸血不応状態では抗血小板同種抗体が陽性かどうかを調べ、対処することが必要です。
図1 (A)活発に血小板産生をしている巨核球、(B)ITPで見られる血小板産生不良の幼若巨核球