徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

血液造血器の病気:貧血

赤血球減少やHb低下で脳が酸素不足きたす

貧血とは血液のなかを流れている血球成分の一つである赤血球数が減少する、あるいは赤血球に含まれるヘモグロビン(Hb)が低下することにより生じます。Hbは酸素を結合して全身を回っているので、貧血になると脳が酸素不足になり、そのため立ちくらみ、めまい、失神などの症状を呈します。貧血の定義はRBCやHbが年齢相応正常範囲内の値から低下した状態をいい、RBCの大きさや含まれるHb量から小球性低色素性貧血、正球性正色素性貧血、大球性正色素性貧血に分類されます。その原因は多様です。

炎症が原因となる貧血もある

貧血の発症に関与する因子としては栄養素(鉄、ビタミンB12、葉酸など)、腎臓(赤血球産生を促すエリスロポエチンというホルモンを産生している)、骨髄(赤血球を産生する工場)、脾臓(赤血球を壊す働きがある)、それと末梢血(赤血球を運んで全身を回っている)の状態が挙げられます。これらのいずれかに問題が生じると貧血になります。さらに炎症が関与する貧血や急性の失血もあり、なかでも、貧血には消化管、すなわち消化器疾患の関与が多くあります(表1)。貧血の原因は以下のようにまとめられます。

主な症状はめまいや動悸、息切れ

顔色が悪い、体がだるい、疲れやすい、動悸がする、めまいがする、息切れがする、といった症状が現れます。溶血性貧血では黄疸(眼球結膜が黄色くなる、皮膚も黄色味を帯びる)の症状が出ます。また、胆石や脾腫を伴うこともあります。

原因不明の急性失血には内視鏡検査実施

貧血は急性貧血(急に貧血になる)と慢性貧血(慢性的にいつの間にか貧血になっている)に区別されます。 診断のための検査は以下のとおりです。

一般検査・末梢血検査
単純レ線により肺炎、肺浸潤などの鑑別、CT検査による感染病巣や脾腫、子宮筋腫の有無などの検索も必要です。一般採血でRBC、Hb、 Ht、MCV、WBC、血小板数、網状赤血球を調べます。鉄欠乏については血清鉄、結合能(TIBC, UIBC)、血清フェリチン、ピロリ菌感染を調べます。大球性貧血ではビタミンB12、葉酸をみます。腎不全が関与していないか、腎機能も観察します。溶血性貧血が疑われる場合は直接クームス試験や寒冷凝集素価を調べます。球状赤血球症の検査も行います。なお、球状赤血球症の症例が急な貧血を呈するときはパルボウイルス感染(パルボIgM抗体)の検査が必要です。
内視鏡検査
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の早期発見には内視鏡検査を行います。特に原因不明の急性失血では消化管内視鏡検査が不可欠です。また、鉄欠乏性貧血で肺野に浸潤影を見る場合、特発性肺ヘモジデローシスの可能性があり、胃液を採取して、ヘモジデリンを貪食したマクロファージの有無を調べます。
骨髄検査
造血不全を疑えば骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)が不可欠です。

その他、成人女性の鉄欠乏性貧血では子宮筋腫の関与も多いので、婦人科的対処を要することがあります。

鉄過剰症のリスク考え輸血は最小限に

貧血の原因となる原疾患を確定し治療することが最優先です。原疾患治療による貧血の回復までの間、とりあえずの輸血によりQOLを改善させる必要に迫られることがあります。

特に、失血による急性貧血時には濃厚赤血球輸血により、とりあえずHb >8.0g/dLの状態にする必要があります。しかし、どのような原因による貧血であっても輸血はその後の鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)のリスクを考え必要最小限にとどめます。特に、ピロリ菌感染の関与した鉄欠乏性貧血ではピロリ除菌が必要になります。胃切除や回盲部の腸切除を受けた既往のある症例、あるいは自己免疫疾患で胃の内因子抗体陽性の症例ではビタミンB12の非経口的投与が必要になります。腎不全状態ではエリスロポエチンが投与されます。溶血性貧血では免疫抑制剤の投与や脾摘が有効なことがあります。大球性貧血はアルコールによる骨髄毒性として現れることがあるので生活習慣の改善が必要です。造血に必要な栄養素は不足しないように食事に気をつけましょう。高齢者ではしばしば葉酸欠乏状態になるので葉酸の補充が必要であり、妊婦にも葉酸が補充されることがあります。

食道静脈瘤 失血性貧血
胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がん・結腸がん 失血性貧血
胃ピロリ菌感染 特発性血小板減少性紫斑病
鉄欠乏症貧血
胃MALリンパ腫
萎縮性胃炎(貧血の原因に)
萎縮性胃炎 B12欠乏のため大救性貧血(悪性貧血)
胃全摘出後 B12は内因子と結合できず大救性貧血(悪性貧血)
回腸終端部切除後 B12は内因子の結合体が体内に吸収されず大救性貧血(悪性貧血)
炎症性腸疾患(IBD) 炎症性貧血

表1 消化器疾患と血液疾患の関連について

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