徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)11月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1210 四面

読み解く・読み得“紙上医療講演”㉚
誤嚥性肺炎を予防する

今回は誤嚥(ごえん)性肺炎がテーマです。高齢者の肺炎の多くは誤嚥が原因と言われており、現在、死因の第1位は悪性新生物(がん)、第2位に心疾患、第3位に老衰と続き、誤嚥性肺炎が第7位に入っています。誤嚥性肺炎は飲み込む力(嚥下(えんげ)機能)などが低下し、食べた物や唾液と一緒に口腔(こうくう)内の細菌が気管に入ってしまうことで発症します。近江草津徳洲会病院(滋賀県)の澤井奈津子リハビリテーション科副主任(言語聴覚士)が、原因や予防法などを解説します。

澤井奈津子・近江草津徳洲会病院リハビリテーション科副主任(言語聴覚士) 澤井奈津子・近江草津徳洲会病院リハビリテーション科副主任(言語聴覚士)

食べた物や唾液を飲み込む働きを嚥下機能と言います。この嚥下機能が低下し、食べた物や唾液が本来入るべき食道ではなく、気管に入ってしまうことを誤嚥と呼び、口腔内の細菌が一緒に気管に入ってしまい発症するのが誤嚥性肺炎です。誤嚥には顕性誤嚥と不顕性誤嚥があり、前者は食べ物などが気管に入った際にむせ(咳嗽(がいそう)反射)を起こし、本人や周囲が気付くことのできる誤嚥です。一方、不顕性誤嚥は、むせの反応がなく、本人や周囲が気付きにくい誤嚥です。

嚥下機能低下の原因として、加齢の影響にともなうもの(歯の欠損によるかむ力の低下、飲み込みにかかわる筋力の低下など)や、病気によるもの(脳卒中や神経筋疾患などが原因で舌や口の動きが弱まるなど)が挙げられます。

■嚥下体操(舌の運動)

嚥下機能を簡便に調べる方法として、反復唾液嚥下テストがあります。同テストは唾液の飲み込みを30秒間、できる限り何回も行うというテストです。のどぼとけのあたりに指を当て、飲み込みを確認しながら行います。30秒間で2回以下の場合には、飲み込みに何らかの問題がある可能性があります。

また「食事を摂る時間が1時間以上かかる」、「食事中あるいは食事の後にむせることやせきが多い」、「のどに食べ物が引っかかった感じがする」、「のどに詰まっている感じがする」などの症状がある場合は、注意が必要です。

誤嚥の予防法としては①かむ力を付ける(食べ物を細かくかみ砕くことで飲み込みやすくなる)、②飲み込む力を付ける(食べ物や唾液が気管に入るのを防ぐ)、③せきをする力を付ける(誤って気管に入ってしまったものを力強く外に出す)――の3つがポイントになります。

嚥下体操を行うことで、これらの力を維持・改善することが期待できます。例として②にかかわる舌と唇の運動を写真付きで掲げます。
「患者さんに合った食事形態(硬さやとろみ、大きさなど)や量の提供」、「口腔ケア(歯磨きや、うがいなど)を行い、肺炎の原因となる口腔内の細菌を減らす」、「免疫力維持のため十分な量の食事をバランス良く摂る」ことなども誤嚥性肺炎の予防には重要です。

嚥下体操(唇の運動)

誤嚥性肺炎は一度発症すると、その後、嚥下機能などが改善されない限り、繰り返し発症する可能性があります。それだけに予防法の実践を通じて日頃から、できるだけ誤嚥を起こさないような身体づくりが大切となります。

PAGE TOP

PAGE TOP