直言
Chokugen
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直言 ~
佐野 憲(さのけん)
仙台徳洲会病院院長
2019年(令和元年)11月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1210
11月4日、待ちに待った仙台徳洲会病院の新築移転地鎮祭が、快晴の下で執り行われました。
私は仙台に赴任して4年半になりますが、やっとここまで漕ぎ着けることができました。
前勤務先の松原徳洲会病院(大阪府)院長に就任してから数えると、14年半になります。その間、一時期、徳洲会では病院の建設ラッシュがあり、既存病院の建て替えも含め、いくつもの新病院の地鎮祭・竣工祝賀会に参加させていただきました。しかし、心が狭い私は正直に言って、羨ましくはあっても嬉しく感じたことはありませんでした。
ところが自分の病院となると話は別です。まだ地鎮祭を終えただけなのに、込み上げる嬉しさを抑えることができません。
地元の医師会の先生に言われた言葉が耳に残っています。「佐野院長、新病院良かったね。こんなこと言っては何だが、徳洲会の組織力がなければ、絶対に建たないよ。感謝することだね」。
この先生の言うとおりです。徳洲会の全職員の皆さんに心の底から感謝しています。真面目に仕事に励んでいれば、必ず自分の番が回ってくるのだと、しみじみ感じています。
願わくは、徳洲会グループの組織力をもう少しお借りしたいところです。以前は新病院の開院前になると、全国から応援者が大勢駆け付け、地域の方々への戸別訪問や医療講演などを行い、新病院の周知に力を貸してくれたものです。徳洲会には、このような仕事が得意な職員が数多く在籍しているので、ひと肌脱いでいただけると助かります。お願い申し上げます。
医療法人徳洲会の鈴木隆夫理事長(一般社団法人徳洲会理事長)が、当院の地鎮祭の合間に新病院の完成予定図を見て、ため息をつきながら、「だんだん大きくなるなあ」と、ボソッとつぶやかれました。私はこれまで、さんざん「新病院は大きなものをつくってほしい」と言い続けてきたものの、今さらながら、地鎮祭を迎えて、新病院のあまりの大きさに少し腰が引ける思いがしました。
しかし、方針は決まっています。新病院を運営していくには、徹底して東北地方に残る若い医師の確保が重要と考えており、それには初期研修医を集めることが、じつは長いようで一番の近道だと思っています。
昔、徳田虎雄・徳洲会前理事長は、日本中に病院をつくり、そこから離島・へき地の病院に医師を送るという計画を立てて実行。本当に離島・へき地医療の充実を実現してしまいました。理にかなっていて、子どもでもわかる理屈ですが、誰も行動に移さなかっただけです。
現在、全国に徳洲会病院は71病院とたくさんありますし、初期研修医を集める組織力やノウハウももっています。その証拠に今年の徳洲会病院の初期研修医の定員はほぼ埋まっています。何となくそうなったのではなく、徳洲会主催の説明会での勧誘方法、運営の仕方がどんどん進化しているからです。徳洲会の研修事務担当者は、東北地方からも初期研修医を連れていってしまうので、痛しかゆしですが、組織としては非常に優秀です。ぜひ当院など定員が埋まってない病院に紹介してください。
徳洲会の歴史は、初期研修医の歴史であると思います。それは、彼らがつくってきた部分が大きいからです。
現在の当院は、初期研修医の定員が4人です。仮に毎年2人ずつ入職したとします。すると10年間で合計20人。その後、さまざまな病院に後期研修(専門研修)に行きます。徳洲会に残る研修医は全体で5割くらいでしょうか。当院では2割の初期研修医が残ったとします。そうすると、4人の若い医師が増えることになります。「なんだ、それだけか」と思うかもしれません。しかし、それはとんでもなく大きな間違いです。若く、しかも徳洲会病院で酸いも甘いも経験した医師が4人も増えれば、病院は大きく変わります。
新病院の建設工事がスタートしました。いろいろ書きましたが、要するに「新病院はこのままではうまくいかないので困っています。徳洲会グループの組織力でなんとかしてください」という話です。それも医師をくださいとかいうことではなく(本当はそれが一番なのですが……)、できる範囲で組織力を使って、協力してくださいというお願いです。皆で頑張りましょう!