徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)7月8日 月曜日 徳洲新聞 NO.1192 一面

湘南鎌倉病院
透析患者さんの下肢血管再生療法
厚労省「先進医療B」に承認

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)が実施している「自家末梢(まっしょう)血CD34陽性細胞移植による下肢血管再生療法」が厚生労働省の第73回先進医療会議で先進医療Bに承認された。先進医療は医療機関が開発した最新の医療技術を、将来的に保険適用とするために臨床現場で評価する制度。6月28日付の官報第39号で告示され7月1日から先進医療Bとして混合診療下で開始している。維持透析治療中の疼痛(とうつう)・潰瘍をともなう重症虚血の下肢閉塞性動脈硬化症が対象。患者さん自身の血液から抽出したCD34陽性細胞を用い下肢血管を再生、石灰化を防ぐ。足壊疽(えそ)から下肢切断は予後が悪いだけに朗報といえよう。

自家末梢血 CD34陽性細胞を移植

「患者さんやご家族に希望の光を届けたい」と小林・院長代行 「患者さんやご家族に希望の光を届けたい」と小林・院長代行

透析治療を受けている患者さんは末梢動脈疾患(PAD)を合併するケースが多く、血管の石灰化などにより下肢の動脈血量が減少する(重症虚血肢)と予後は悪くなる。傷ができやすく治りにくいうえ、悪化すると足壊疽、最悪の場合は切断に至る。切断すると1年後の生存率は50%ときわめて深刻だ。

湘南鎌倉病院の小林修三・院長代行兼腎臓病総合医療センター長は「下肢虚血で傷ができると、ふつうの生活が送れないくらい激しい痛みに襲われます。透析患者さんの下肢切断は今なお年間9000人に上ります」と現状を説明する。

末梢動脈疾患のカテーテルによる血管内治療(EVT)やバイパス手術による血行再建など血流量を改善する治療法はあるが、再狭窄(きょうさく)を起こすケースも少なくなく、予後改善にはPADの早期診断・早期治療が重要だ。同院でもEVTや血行再建術、高気圧酸素療法、マゴット・セラピー(無菌ウジ虫治療)など下肢切断を回避するため、さまざまな治療を実施。その一環で2014年から臨床研究を実施してきたのが「自家末梢血CD34陽性細胞移植による下肢血管再生療法」だ。CD34陽性細胞は東海大学の浅原孝之教授が発見したもので血管をつくる作用や抗炎症作用をもつ。

同治療法は、透析患者さん本人の血液から、この細胞を抽出し、下肢に注入することで血管の再生を促す。同細胞は虚血部位に集積する特性があるため、高い治療効果が期待できる。

ただし、CD34陽性細胞は「血中1㎕(マイクロリットル)当たり1~2個と非常に数が少ない」(小林・院長代行)ため、薬剤を5日間投与、白血球数を通常の5~8倍まで増やし、CD34陽性細胞を取り出す。数千万個に上るCD34陽性細胞を痲酔下に下肢の数十カ所に筋注する。

「点滴だと全身に回り、その間、CD34陽性細胞が減ってしまいます。より効果を得るためにピンポイントで注入します。また、白血球の増加は先行研究で問題がないことが明らかになっているレベルです」(小林・院長代行)。

臨床研究では、同治療から1年後切断されずに存命している割合(AFS)は100%で、従来の血行再建(70%程度)に比べ成績は著名に改善。潰瘍は3カ月以内に60%が治癒し、重症から軽症への改善率も83%など高い効果を得たことから、先進医療に申請。承認されたことを受け7月1日から先進医療Bとして同治療を実施している。

米科学誌が世界へ発信

なお、臨床研究の結果を大竹剛靖・副院長兼腎臓病総合医療センター腎免疫血管内科主任部長が論文にまとめ米科学誌『Stem Cells Translational Medicine』に投稿したところ、受理されたうえにカバーレターにフューチャーされ、世界に向けて発信されるなど海外でも注目を集めた。

「当院は15年に糖尿病性腎症に対するLDLアフェレシス療法が先進医療Aに承認されています。一般病院で先進医療にふたつ承認されることは珍しく、光栄なこと。今後も患者さんの希望の光となるような取り組みを地道に行っていきます」と小林・院長代行。「再生医療そのものに取り組んでから10年。スタッフの地道な努力が報われ嬉しく思うのと同時に、徳洲会グループのバックアップに感謝します」。

今回、承認された治療の対象は、維持透析治療中で疼痛・潰瘍をともなう重症虚血の下肢閉塞性動脈硬化症。このほかに、20~80歳、ラザフォード分類(PADの重症度指標)の4ないしは5など要件も満たさなければならない。

同院は今後3年間で16~20例の実施を予定。「グループ病院のなかで関心を示してくださっている病院が複数ある」ことから、連携して進めることも考えているという。その後は治験、保険収載をにらむ。

「医療は必ず進歩します。ですから医療者も患者さんにも諦めてほしくありません。切断を免れる方法はあります」と訴える小林・院長代行。「国内では先駆け指定を受けた臨床治験として偽関節(難治骨折)の治療にCD34陽性細胞を用いた再生医療が行われています。保険収載されれば同じ治療法として下肢血管再生療法にも適用が拡大され、早く患者さんに保険診療で提供できる可能性もあります」と期待を込める。

同治療に関する問い合わせは同院再生医療科まで。同院は人で初の同治療法を用いた急性腎不全の臨床研究も行っている。

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