徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)11月5日 月曜日 徳洲新聞 NO.1158 四面

救急隊員・救急救命士に研修
福岡病院が第1回「福徳セミナー」

福岡徳洲会病院は院内の講堂で第1回福徳セミナーを開催した。近隣の救急隊員や救急救命士を対象とした研修会で、事前のアンケート調査で要望が多かった「産科対応」がテーマ。同院の救急科や産婦人科スタッフも含め6地区9施設から約70人が参加した。救急救命士や看護師による事例発表、医師による講義、実技訓練も行った。同院は地域医療支援病院として今まで地域の医療従事者に研修を実施してきたが、救急隊員や救急救命士を対象に行ったのは初めて。来年1月には「観察・処置法」をテーマとするセミナー開催も予定している。

要望受け「産科対応」テーマ

実技訓練では分娩介助モデルを使用。助産師が介助技術のポイントを説明し(写真上)、参加者がトレーニング

実技訓練では分娩介助モデルを使用。助産師が介助技術のポイントを説明し(写真上)、参加者がトレーニング

セミナーは企画立案で中心的な役割を担った福岡病院地域連携室の荒木伴宏・課長補佐の挨拶でスタート。あらためて地域医療支援病院の役割のひとつに「地域の医療従事者の資質向上」があることに触れ、今年度は救急隊員や救急救命士の研修開催を目標としていたことを明かした。

そのうえで、現状把握のために今年2月に実施したアンケート調査に言及。「観察・処置法」、「産科対応」について学ぶ機会を求める意見が多く上がっていたことから、同テーマの研修開催に至った経緯を説明した。最後に、セミナーを通じ救急隊員、救急救命士、病院職員の交流が深まり、連携強化につなげる狙いも強調した。

その後、春日・大野城・那珂川消防本部北出張所の永田修也・救急救命士が「切迫早産の転院搬送について」をテーマに事例を発表。事例を通じて参加者は情報共有の大切さを再認識するとともに、日々現場で抱えている多様な課題を解決するためのヒントを得ていた。

川原加苗・救急科医長は「産婦人科救急」と題し講義。産婦人科救急で遭遇する機会が多い症状として性器出血、腹痛、頭痛・痙攣(けいれん)・意識障害、嘔吐(おうと)を挙げ、考慮すべき疾患を示した。

妊娠34週の女性が交通事故で頭部を負傷し救急搬送されたケースも提示。現病歴や身体所見から一見、緊急性がないように思われたが、結果的に診断名が①頭部挫創(ざそう)と②常位胎盤早期剝離(はくり)だったことを明かし、②により、胎児が死亡したことも説明。とくに②は「救急医にも予想外だった」とし、常位胎盤早期剝離について解説した。

参加者に謝意を示すとともに、セミナーの趣旨を説明する荒木・課長補佐 参加者に謝意を示すとともに、セミナーの趣旨を説明する荒木・課長補佐

同疾患は、正常な位置に付着している胎盤が妊娠中または分娩(ぶんべん)経過中の胎児娩出以前に、子宮壁から剝がれてしまうもの。胎児は低酸素などに陥る可能性が高くなるため、産科領域では緊急を要する疾患と強調した。

発症率は約0.5~1%で、母体が40歳以上の場合、35歳以下と比較すると、約2.3倍であること、発症時期は7割が妊娠34~35週といったことや、外出血型と内包型があり性器出血を認めないタイプもあるといった特徴を示唆。あらためて同症例の問題点を振り返り、妊娠34週であることや腹部に緊満感があることなどを指摘した。

そのうえで妊婦外傷について解説。妊婦に特有な外傷として胎盤剝離、子宮破裂を挙げ、子宮破裂よりも胎盤剝離の頻度が高いことや、救急隊ができる外傷の観察評価として①気道、②呼吸、③循環、④中枢神経系、⑤体表観察と脱衣・保温を挙げ、それぞれのポイントを示した。

最後に、総括として妊婦外傷では、母体と胎児の2人が患者さんという認識をもち、①母体の緊急性の有無(外傷、胎児の異常が予想される母体の症状、早期警告サイン、ショック指数)、②シートベルト痕の有無(ある場合はどの部位か)、③胎動の有無(あっても弱まっていないか)――の評価が重要と説いた。

講義では参加者が積極的に質問するなど活発に意見交換 講義では参加者が積極的に質問するなど活発に意見交換

その後、福岡病院の山下瑞木・助産副主任が「分娩が進行している場合の対応」、救急外来の鍵山香織看護師が「分娩時の救急対応」をテーマに講義。自然に赤ちゃんが出てきてしまう場合は生まれてから搬送するほうが良いケースもあることや、搬送時に必要な情報、母体観察(陣痛、破水、努責など)のポイントなどを解説した。

この後、分娩介助の実技訓練を実施。助産師の指導の下、分娩介助モデルを使用し児頭の支え方など技術の習得に励んだ。

セミナーは瀬上希代子・看護部長の挨拶で終了。参加者からは「産科対応は経験する機会が少ないため、今まで遭遇した時に不安になったりとまどったりすることがありました。今回のセミナーで珍しい症例も知ることができ、とても勉強になりました」、「定期的に研修してほしい」、「署に戻って、ほかの隊員にも伝えたい」といった声が聞かれ、とくに実技訓練が好評だった。

荒木・課長補佐は「川原医長は他院で救急隊への研修会を開いた経験をもっており、当院でも開催を希望されていたので、相談しました。今後も研修を継続し、組織、職種を越えた連携を図ることで地域医療に貢献していきたい」と意欲的。川原医長も「勉強会を通じ交流を深め、円滑な救急搬送につなげてほしい」と期待を寄せ、「看護師や助産師など、いろいろなスタッフが協力してくれるのが嬉しかった」と謝意を示した。

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