2018年(平成30年)11月5日 月曜日 徳洲新聞 NO.1158 一面
離島で研修医が奮闘
「力を付けるのに最適な環境」
徳之島徳洲会病院
徳洲会グループでは初期研修医と専攻医(後期研修医)の研修プログラムのなかに、離島・へき地病院での研修を組み込んでいる。全人的な医療の習得に適した環境であるからだ。離島・へき地を含め全国に71病院を擁するグループのスケールメリットを生かした制度と言える。初期研修医は2カ月間、専攻医(同)は3カ月間、離島・へき地病院で研鑽を積む。グループ外からの研修も受け入れている。今回は徳之島徳洲会病院(鹿児島県)で研修に取り組んだ2人の医師の活動をルポする。
離島で後期研修を行った芳竹医師
徳之島徳洲会病院の外来診察室から、次に診察する患者さんの名前を呼ぶ芳竹宏幸医師の元気な声が聞こえてきた。芳竹医師は岸和田徳洲会病院(大阪府)に所属する医師5年目の消化器外科の後期研修医だ。取材で訪れたのは9月。芳竹医師は離島・へき地研修を9月末まで行う日程で診療活動に勤しんでいた。
「具合はいかがですか」。80歳代の男性患者さんが家族に付き添われて入室すると、芳竹医師が声をかけた。
患者さんは、ふだん独居でデイケアを利用。この日の朝、デイケアの準備のため家族が患者さん宅を訪れると、椅子に座ったままおでこをテーブルに付け、もたれかかるような格好をし、動けなくなっているところを発見。嘔吐の形跡もあった。
多数の外来患者さんを一人ひとり丁寧に診察
デイケアに行ける状態ではなかったため、そのまま徳之島徳洲会病院を受診。体調が芳しくなく、意思疎通も難しい状態であったため、家族を通じ、これらの情報を得た。
芳竹医師は「どこか悪いところはありますか」、「痰がからんだりはしていませんか」、「ご飯は食べられていますか」など問診を重ねながら患者さんの状態を確認。また、むくみがひどい時には薬を服用していることがわかったものの、詳細は不明だったことから、かかりつけの診療所に問い合わせ、処方内容を確認することにした。
血液検査や尿検査、CT(コンピュータ断層撮影)など検査をオーダーし「ご本人がしんどいようなら入院したほうが良いかもしれません」と家族に丁寧に伝え見送った。
次に入室したのは40歳代の男性患者さん。38度以上の発熱があったが、インフルエンザの検査では陰性の結果が出たため、「胸の音を聞かせていただきますね」と聴診を行った後、喉(のど)の状態を確認。扁桃腺が腫れていたため、喉の炎症を抑える薬と解熱剤を処方し「お大事に」と、優しく声をかけた。
大阪大学医学部附属病院の山川・初期研修医も研鑽
このあとも、椎間板ヘルニアの患部が痛むという訴えの患者さんや、定期通院で来院した患者さん、自宅で家事を行っている最中に、めまいを発症した患者さんを次々に診察。ヘルニアの患者さんには塗り薬タイプの痛み止めを処方し、定期通院の患者さんは状態が安定し気になる症状も見られなかったことから、今後は訪問診療に切り替えることを決定。めまいの患者さんは起立性低血圧と診断し、点滴を処方、体力の回復を図ってから帰宅してもらった。
芳竹医師は息つく暇もなく他の患者さんのIC(インフォームドコンセント=説明と同意)のため、診察室を後にした。
並行して隣の診察室で診療していたのは、大阪大学医学部附属病院に所属する山川明希子・初期研修医(2年目)だ。9月から2カ月間、離島・へき地研修に取り組んだ。
「〇〇さん、お座りください。お変わりはありませんか」。山川・初期研修医は高血圧を患う男性患者さんを診察室に優しく迎え入れた。「むくみが起こったりはしていませんか」、「心配なのは高血圧だけですか」などと話しかけながら問診を行い、続けて聴診を行った。
山川・初期研修医は「とても多忙な毎日ですが、充実した研修を行っている実感があります。救急患者さんの初期対応をはじめ、指導医の指示の下、ひとりで幅広い業務に取り組む必要がありますので、医師として力を付けるのに最適な環境だと思います。初期研修の2年間のうちに、最低限、目の前で倒れた人を救うことができるようになりたいです」と意欲的だ。