病気の治療
medical treatment
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抗リン脂質抗体症候群は、自己免疫疾患と定義され、抗リン脂質抗体とよばれる自己抗体ができることによって血液が固まりやすくなり、動脈血栓や静脈血栓を繰り返す疾患です。また習慣性流産や若年者に発症する脳梗塞の原因としても重要です。またSLEに合併する症例も少なくありません。
全身の動静脈血栓形成により多彩な症状が出現します。すなわち動脈血栓症の結果として脳梗塞、心筋梗塞、腸間膜動脈閉塞による腸管壊死、皮膚壊死、四肢壊疽などをきたします。また静脈血栓症により深部静脈血栓症、脳静脈洞血栓症、肺塞栓症、下大静脈血栓などを生じ、時に致死的となります。産婦人科領域では抗リン脂質抗体症候群は習慣流産の原因の1つとなります。胎盤の血管に生じた血栓が引き起こす胎盤梗塞により、胎児に血液が供給されなくなることがその原因と考えられています。妊娠合併症としては、習慣流産、子宮内胎児発育遅延、妊娠高血圧症候群などがあります。
日本でSLEが6万人以上いると推定されていることなどから、膠原病を合併する二次性APSが5,000~1万人、原発性APSも同程度の5,000~1万人程度いると推定されます。
一般血液検査では中等度の血小板減少症を伴うことがあり、凝固系検査では活性化部分トロンボプラスチン時間が延長、また代表的自己抗体としてループスアンチコアグラント、抗カルジオリピンIgGまたはIgM抗体、抗カルジオリピンβ2GPI抗体が陽性となります。
診断では、上記症状に加え自己抗体が2カ月以上の間隔をあけて2回以上陽性となることで確定診断に至ります。
治療は血栓症の進行を防ぐため、2次血栓予防が治療目標となります。脳梗塞などの動脈系の血栓であればアスピリンなどの抗血小板薬が使用されますが、下大静脈血栓や、動脈血栓で効果が足りないときにはワ-ファリンが処方されます。劇症型抗リン脂質抗体症候群には、ステロイド剤やシクロフォスファミドが選択されることもあります。妊娠中のAPS発症例ではワーファリンは催奇形性があること、ステロイドも胎児リスクを有する薬剤である点に注意が必要です。