徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

病気の治療

medical treatment

消化器外科の病気:大腸がん

罹患数はがんのなかで第一位

大腸がんとは、食べ物が胃や小腸で消化吸収されて残った物質から水分を吸収して大便になる器官の大腸にできる悪性腫瘍の一つで、大腸の悪性腫瘍の大部分を占めます。

大腸は、大きく結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸(直腸S状部、上部直腸、下部直腸)に分けられ、それらに附属して、虫垂、肛門管、肛門皮膚も含めて、それぞれの部位に発生するがんが大腸がんです。例えばS状結腸にできた大腸がんは、S状結腸がんと呼びます。

大腸がんは、大腸の最も内側の大腸粘膜の細胞から発生し、進行とともに大腸の壁に深く侵入していき(T:深達度)、周囲のリンパ節から徐々に離れたリンパ節へ(N:リンパ節転移)、また肝臓や肺などの臓器へ転移します(M:遠隔転移)。がんですから、そのまま放っておけば、死に至る病気です。

大腸がんの粘膜からの発生は、直接がんが発生するものと、腺腫という良性のポリープが増大し、がん化するものがあります。

近年、大腸がんの患者さんは増加しており、2015年の統計では、罹患数約13万人と第1位で、日本人にとって最も多いがんとなっています。男女別では、男性は第4位、女性は第2位となっています。また死亡数ですが、肺がんに次いで第2位で、男女別では、男性は第3位、女性は第1位となっています。

危険因子は飲酒と肥満

一般的にいわれていることは、高齢化と食生活の欧米化です。日本は世界一の長寿国でありますから、必然的にがんの患者さんが増えるのは当然の部分もあります。また食事、生活習慣が大きな影響を与えているのは間違いなく、例えば同じ人種の日本人でも、日本で生活している日本人と、欧米に移住した移民である日本人と比べると、後者の方ががんの発生率が高いというデータもあり、環境が大きな影響を与えていることを裏づけています。

よく、家族にがんがいるから、がん家系だからということを耳にしますが、がんの遺伝的要因は5%程度といわれており、ほとんどはその個人の生活スタイルに要因があると考えられています。食事や生活習慣、環境物質などが長年蓄積され、ある遺伝子が傷づいて細胞ががん化するともいわれています。

大腸がんの患者さん一人ひとりの原因を特定することは、家族性大腸ポリポーシスのような一部の遺伝性の腫瘍を除き困難であり、その後の治療に際してもあまり意味をもちません。

大腸がんになるリスク要因として、その他のがんと同様に評価されています。最も確実と考えられているは飲酒です。次いで肥満、それと関連してくる運動不足は、ほぼ確実にリスクと考えられています。それに続いて可能性ありと考えられている要因としては、喫煙、糖尿病、肉(加工肉/赤肉)が挙げられます。

高齢者は便秘に注意

同じ大腸がんでも、大腸のどこにがんがあるかで症状は変わってきます。

盲腸や上行結腸など体の右側にある大腸のほうが、下行結腸やS状結腸、直腸など左側にある大腸より症状が出にくいといわれています。

早期の場合は症状がないことも多いですから、がん検診で見つかることや、人間ドックや他の理由による検査で偶然見つかることもあります。

大腸がんに伴う症状としては、いくつか挙げられますが、便秘や下痢、便が細くなったり、腹痛、腹鳴、腹部膨満、貧血、体重減少などがあります。ただ、ときどき大腸閉塞と言って、それまで症状がなかったり、症状があっても病院など受診せずにそのまま放置していて、がんで大腸の内腔がつまって便が流れなくなり、突然腹痛、腹部膨満、嘔吐などで発症する場合があります。

がんによる大腸での水分の吸収機能の異常や、がんの部分で便が通りにくくなることで、下痢や便秘、便が細くなったりする症状が出たりします。また便秘や下痢をくりかえすこともあります。特に高齢者は、単なる便秘と思っていて、それが大腸がんが原因であることも珍しくありませんから、高齢者の便秘は大腸がんを疑うことが早期発見につながる場合があります。

がんによって通りが悪くなると、その口側でガスがたまりやすくなり、おなかが張ったり、そのガスが狭いところを急激に通るので、その時の音が大きく腹鳴として聞こえる場合もあります。それに伴って腹痛を認めることもあります。

がんから出血があれば、血便であったり、肛門に近くになればなるほど、鮮血として下血する場合もあります。特に直腸がんの場合は、肛門に近く、直接的に肛門から出血があるので、自分で勝手に痔の症状と思い込んで、病院に受診したときにはかなり進行していたり、転移していたりということもあります。

がんは正常組織より多くの栄養を必要とし、消費するので、食べる量は変わらないのに体重が減ってくるといったこともあります。この場合は、がんが進行してしないとあらわれません。栄養状態が悪くなるとむくんできたりすることもあるので、このときになって初めて気づく場合も稀にあったりします。

大腸閉塞では緊急手術の切除検体で診断

大腸がんの確定診断は、大腸カメラといわれる内視鏡でまず肉眼的に(見た目で)がんを見つけ、それを生検といって一部組織をつまんで採取し、その検体を顕微鏡で見る病理検査というものを実施します。そこでがん細胞が確認されれば、大腸がんと確定診断がつきます。通常こういった流れで診断に至るものがほとんどです。

ただ、前述の大腸閉塞の場合は、緊急の状態になるので上記の診断の経過をとらずに緊急手術でいきなりがんを切除し、切除したあとでその切除検体で病理診断にて大腸がんと確定診断がつく場合があります。

その他に、肺や肝臓、骨など全身転移や、がんの位置関係、周囲組織との関係、浸潤の影響などを調べるためにCTやPET-CT、エコー、注腸造影(バリウム検査)等を実施します。特に直腸がんではMRIで周囲組織への影響をみることもあります。

採血では、腫瘍マーカー上昇の変化が大腸がんの経過や再発、転移を示唆する場合があり、主なものにCEA、CA19-9が挙げられます。これら2つは大腸がんにおいては必ず定期的にチェックすることになります。それ以外に治療や肝転移による肝機能異常がないか、がんによる貧血がないかなど、一般的な採血項目もチェックします。

上記を含めた検査を術前に行い、まず術前のがんの進行度(病期分類)を推定します。T:進達度、N:リンパ節転移、M:遠隔転移の程度、有無で評価します。その後、手術をして切除したがんを病理検査で調べて最終診断である術後診断で進行度を確定します。

術後は定期的に検査を実施

大腸がんの進行度はステージ0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲa、Ⅲb、Ⅳ に分類されます。最初の時点で、CTで肺や肝臓にすでに転移があり、手術が不能な場合は、手術をせずにステージⅣと診断をつける場合もあります。またサーベイランスといいますが、大腸がんの術後は、これら検査を決まった時期に実施し、再発や転移がないかどうか調べていきます。これを5年間にわたって実施することになります。

手術不能で後述の化学療法や放射線療法などの延命治療で加療する場合も上記の採血、レントゲン、エコー、CTなどで治療効果を定期的に調べます。

なお最近は診断ではありませんが、ゲノムといって、採血により遺伝子レベルで大腸がんの発生リスクを調べる検査もあり、予防のための一つの目安になりえますが、自費診療で高額になるので、一部のクリニックなどの医療機器で実施されています。

ステージⅣで手術適応の場合もある

がんの標準治療は世界共通で、手術、化学療法(抗がん剤)、放射線療法ですが、大腸がんもこれにあてはまります。

日本国内では大腸がんの場合は、大腸病研究会という団体が作成する、『大腸癌治療ガイドライン』が示す治療方針に沿って診療、治療が行われるのが一般的です。大腸がんの根治治療は手術が大前提であり、それ以外の方法だけで完治することはありませんので、まず手術が可能であれば手術をします。

手術はがんの進行度によって異なり、内視鏡治療と外科的切除に分けられます。

内視鏡治療
ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
外科的切除
開腹切除術、腹腔鏡下切除術

がんの部位により範囲が異なり、回盲部切除、右半結腸切除、部分切除、左半結腸切除、S状結腸切除、低位前方切除、超低位前方切除術、マイルズ手術(直腸切断+人工肛門造設術)などがあり、それぞれ適切な範囲のリンパ節も郭清します。現在、日本では大腸がんの手術は50%以上が腹腔鏡で行われており、ガイドラインで容認されている腹腔鏡手術は、結腸と直腸S状部にある大腸がんになります。

ステージ0、ステージⅠの深達度が浅い大腸がんは内視鏡治療が可能となっています。それより進行したステージⅠの深達度が深いもの、ステージⅡ、ステージⅢは外科的切除になります。

ステージⅣは、転移巣も含め切除できる場合は外科的切除の対象となり、これが他のがんと異なる点です。多くのがんではステージⅣになると、切除しても根治、延命を得られないばかりか、手術によって大きき機能を損ねて寿命を縮めてしまう可能性があり、手術の適応がない場合がほとんどです。しかし、大腸がんの場合は、肺や肝臓の転移巣が切除可能なら外科的切除の適応があります。ただし、切除できた場合でも50%以上は再発します。

術後補助化学療法で再発予防

次に化学療法ですが、術後に再発予防のために行う術後補助化学療法と、切除不能や再発に対して行われる化学療法に分けられます。それぞれ、点滴だけのものや点滴と飲み薬を組み合わせたもの、飲み薬だけのものとあります。昔からある抗がん剤や、近年は分子標的薬というがん細胞にだけ作用するような特徴をもった薬の開発が主流で、それらを組み合わせて使用します。

最後に放射線療法ですが、がんに直接放射線をあてることで、がんの進行を抑える治療です。補助放射線療法と緩和治療として行われるものに分けられます。前者では、欧米や他のアジアの国々では術前に化学療法と組み合わせて行う治療が一般的に行われ、術後の局所再発率の低下に寄与していますが、日本ではまだあまりそこまで普及はしていません。特に臓器が固定されている骨盤の直腸がんに有効で、日本でも少しずつですが行う施設が増えてきています。

ステージⅡ、Ⅲで生存率は改善

大腸がんは、治療が行われなければ、それ以外の致命的な病気が起こらない限り、確実にがんによって死に至る病気です。治療は切除が可能で手術を含めた根治治療がされた場合と、根治が不可能で姑息的な手術が行われた場合や、手術が不可能な場合によって経過は異なってきます。

根治治療が行われた場合は、術後5年間に再発、転移を認めなければ、ほぼ完治といえることになります。全国がんセンター協会発表の2007年に大腸がんと診断された患者さんの5年生存率は以下の通りです。

男性
ステージⅠ ステージⅡ ステージⅢ ステージⅣ
結腸がん 87.8% 82.0% 76.3% 16.3%
直腸がん 88.2% 81.0% 77.1% 17.1%
女性
ステージⅠ ステージⅡ ステージⅢ ステージⅣ
結腸がん 93.3% 80.9% 73.9% 16.3%
直腸がん 92.0% 78.1% 75.5% 19.5%

このデータの10年前の1997年の生存率を比べると、ステージⅡ、Ⅲでは、約6~11%程度生存率が改善しています。今後大腸がんになられる患者さんは、この統計から10年後の医療状況での治療になりますから、どれだけ変化や改善があるのか、今後の統計結果が待たれます。

また、StageⅣで手術が不能な場合や、StageⅢでも超高齢や寝たきりで手術を希望されないといった方もおられると考えられ、その方たちは、化学療法や放射線療法をするしないにかかわらず、遅かれ早かれ、がんの進行による症状が徐々に出てきます。

腫瘍による痛みであるがん性疼痛や、大腸がんは消化管ですから、食欲不振、吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの消化器症状、栄養状態の悪化、消耗による体重減少、るいそう(痩せ)、肝臓の転移による肝機能障害や黄疸、肺の転移による呼吸苦など、骨の転移による痛み、骨折など、さまざまな症状が考えられます。いずれもほとんどはがん末期の症状になります。これら症状に対しては緩和療法を行い、お薬などを使用して改善を図ることができます。

腺腫ポリープの切除でがん予防も

現時点で確実に予防できる方法はありませんが、前述の原因におけるリスク要因を踏まえて、それらを避け、改善することで、予防できる可能性が考えられます。

それらは科学的根拠(EBM、エビデンス)があるかないかで評価されており、さまざまな研究や実験にもとづいて、エビデンスの評価がされています。現在進行形のものも多数あり、今後もより明らかになってくる部分が出てくると考えられます。

まず、2016年に国立がんセンターの予防研究グループから、疫学研究によるがん全般に対する日本人のためのがん予防法が提示されています。そこでは、

喫煙

タバコは吸わない、他人のタバコを避ける

飲酒 飲むなら、節度のある飲酒をする
食事 偏らずバランスよくとる
(塩蔵食品・食塩の摂取は最小限にする、野菜や果物不足にならない、飲食物を熱い状態でとらない)
身体活動 日常生活を活動的に
体型 適正な範囲に
感染 肝炎ウイルス感染検査と適切な措置を、機会があればピロリ菌検査を

が挙げられています。直接大腸がんと関係のないものもありますが、大腸がんにより強く関係する項目に関しては、より具体的に次のように示されています。

飲酒
飲む場合はアルコール換算で1日あたり約23g程度まで。日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の2/3、ウィスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度です。飲まない人、飲めない人は無理に飲まないようにしましょう。
身体活動
例えば、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分行いましょう。また、息がはずみ汗をかく程度の運動は1週間に60分程度行いましょう。
体型
中高年期男性の適正なBMI値(Body Mass Index 肥満度)は21~27、中高年期女性では21~25です。この範囲内になるように体重を管理しましょう。

そのほか大腸がんの発生でリスク低下の可能性がありと考えられているものは、カルシウム、食物繊維、脂質(魚由来の不飽和脂肪酸)です。

それ以外では現時点ではエビデンスは不十分ですが、個別の研究においてリスクの低下が示唆されているものは、一部ですが以下のようなものがあります。

コーヒー、野菜、魚、ビタミンD、グルコサミン、コンドロイチン(サプリメント)、アスピリン(薬剤)

グルコサミンやコンドロイチン、アスピリンは、大腸がんは慢性炎症であるので、その抗炎症作用がかかわっていると考えられています。コーヒーも抗炎症作用や、インスリン抵抗性、インスリン分泌過多など糖尿病やそれに関連した肥満への影響が考えられています。

また、内視鏡検査により、見つかった腺腫ポリープを内視鏡的に切除しておくことで、大腸がんの発生を減らすという研究もあり、人間ドック等で定期的に大腸カメラをしておくのもいいかもしれません。

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