徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2026年(令和8年)03月09日 月曜日 徳洲新聞 NO.1533 1面

エクソソームで変形性膝関節症治療
国内初の特定臨床研究開始し安全性検討

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は 2月17日、記者会見を開き、変形性膝関節症へのエクソソーム(細胞外小胞)投与に関する国内初の特定臨床研究を開始したと発表した。16日に1例目の治療を実施。同研究は、同院で出産したドナー(提供者)から提供された臍帯(へその緒)の間葉系間質細胞(MSC)由来の細胞外小胞製剤「SK-EVs」を用いて行う。臨床研究法に基づく特定臨床研究として実施し、同製剤投与の安全性の検討を主⽬的とする。

記者会見する(左から)橋本部長、大竹副院長、小林院長、落谷JSEV理事長、佐藤勉・検査部副技師長 臍帯の間葉系間質細胞由来の細胞外小胞製剤「SK-EVs」 変形性膝関節症の患者さんに対し橋本部長が製剤を投与

変形性膝関節症は、高齢化社会での主要な運動器疾患のひとつであり、国内の患者数は約2,500万人に上る。とくに80歳以上の高齢女性では8割という高い有病率が報告されており、進行すれば歩行困難を来して生活の質(QOL)を著しく損なう。現在、運動療法や薬物療法、外科的な人工関節置換術などが行われているが、疾患の進行を根本から抑制する標準的治療法は、いまだ確立されておらず、新たな選択肢が切望されている。

記者会見の冒頭、小林修三院長は「日本初のエクソソームの臨床応用は、非常に大きな意義をもちます。今回の研究が、わが国の基礎研究の進歩と、人に対する臨床応用の広がりにつながることを願っています」と強調。従来の再生医療との違いに関し、「細胞外小胞製剤は『Off-the-shelf』、つまり必要な時に棚から取り出して投与できます。品質が保証されたものを一定の条件下で提供できることは、人の命を預かるうえで大変重要だと考えます」と説明した。

さらに、「当院にはGMP(適正製造規範)準拠の細胞調整室(CPC)があり、製造から投与まで一貫した安全・品質管理できることがポイントです。社会に広く出回っているエクソソームとは別格のものです」と語気を強めた。

同製剤の開発・監修に携わった日本細胞外小胞学会(JSEV)の落谷孝広理事長は、独自の分画精製法を用い、不純タンパク質を99.7%まで除去した技術的背景を解説。「この数字は、エクソソーム以外の余分なタンパク質の除去率のことで、不純物を極限まで取り除いた高純度な製剤となります。第三者機関による動物モデルでの安全性試験もクリアしました」と、PMDA(医薬品医療機器総合機構)科学委員会の報告書に準拠して製造された「SK-EVs」の品質の高さを示した。

1例目は痛みや腫張なく翌朝退院

特定臨床研究責任者である大竹剛靖・副院長兼再生医療科部長は、臨床的に中等度の症状を有する18歳以上の患者さんを対象としており、2月16日には1例目となる69歳男性への投与を実施。エコーガイド下で同製剤を膝関節内に注射したが、投与後の炎症反応やバイタル(生命兆候)変化は見られず、翌朝、エクソソーム投与にともなう痛みや関節の腫脹はなく、歩行して退院するという良好な経過を報告した。

また、現場で治療にあたる橋本拓スポーツ整形外科部長は、既存の治療法であるPRP療法(多血小板血漿)と比較した優位性に触れ、「PRPは自己血液を用いるため、患者さんの体調により品質が不均一ですが、SK-EVsはGMP管理下で一定の品質を確保できます。動物実験では軟骨再生と滑膜再生の明確なポテンシャルを確認しています」と、今後の有効性検証への期待を寄せた。

安全性が確立された際には、反復投与による疼痛改善や可動域制限の緩和、さらには軟骨再生などの有効性検証へとステップアップし、将来的には腎疾患、心疾患、肝疾患といった内臓疾患への応用も視野に入れている。高品質な製剤を自前で一貫製造し、迅速に臨床現場へ届ける。こうした同院の先進的な取り組みは、日本のエクソソーム臨床応用を加速させる歴史的な一歩となるだろう。

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