
直言
Chokugen

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直言 ~
飯田 浩司(いいだひろし)
葉山ハートセンター(神奈川県) 院長
2026年(令和8年)10月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1564
葉山町と隣接する逗子市を合わせた人口9万の逗葉地区には、急性期病院は他にありません。2000年にハートセンターとして開院した当院には、心臓病以外の診療を求める要望がありました。そこで内科、外科、脳神経外科などの医師とともに総合病院としての機能を付加してきました。救急外来を交代で担当し、救急車の応需数は25年に1,700台を超え、心臓病以外の救急ウォークインも増えました。当院の応需数が増えたことにより、救急搬送時間が短縮されたことが、町の広報誌に紹介されました。
7:1基準を満たす看護配置と相まって、今回の診療報酬改定では急性期病院Bの基準を満たし、経営が安定しました。今年度は町と災害時の救護所としての協定を結びました。また地区のメディカルコントロール協議会に参画し、消防署の救急救命士への助言と再教育も行っています。心臓病センターであるとともに、地域に密着した病院でありたいと思っています。
葉山町は「住み続けたい街」ランキング上位の常連です。これは、ここで一生を終えたい街と同義でもあります。その住民に対し何ができるかが課題です。日本救急医学会、日本老年医学会などは合同で、「高齢者救急問題の現状とその対応策についての提言2024」を発表し、高齢者施設での急変対応、看取り、蘇生、搬送に対する考え方、人生会議(ACP)によって本人・家族の意思を確認すること、地域で高齢者を支える方策などを提言しています。
また厚生労働省は高齢者救急という概念を提唱し、本年7月に「新たな地域医療構想策定ガイドライン」を発表しています。40年に向け高齢人口が増加し、高齢者の救急搬送が増え、在宅医療需要が増加します。誤嚥性肺炎、うっ血性心不全、尿路感染、脊椎圧迫骨折、大腿骨頸部骨折など高齢者に特有な病態に対し、受け入れる側の機能として、従来の急性期拠点機能と在宅医療等連携機能、あるいは専門等機能の間に「高齢者救急・地域急性期機能」を提唱しています。高齢の救急患者さんを受け入れ、必要があれば手術を施行し、リハビリテーションを行い、在宅または施設に返す機能を持った病院群です。急性期89床の当院8月の新入院は243人、緊急入院は148人(60.9%)、そのうち118人(79.7%)は65歳以上でした。緊急入院後に手術、カテーテル、内視鏡などの処置を要した患者さんは27例で、大腿骨頸部骨折、慢性硬膜下血腫など高齢者に特有な疾患の手術は8例に行っています。
当地の二次医療圏では高度急性期と急性期病床は余剰で、回復期病床が必要数の半数しかないことが示されています。来年、当院は地域包括ケア病棟32床を新たに開棟します。葉山町の26年9月の人口は3万1,208人、65歳以上は9,957人です。昨年の救急搬送は1,800人、そのうち1,288人が高齢者でした。高齢人口の12.9%が搬送され、入院が必要とされる中等症、重症は885人、一日当たり2.42人でした。40年には人口が減少しても高齢者は増加し、一日2.79人の高齢者の入院が必要となることが推計され、逗子市からの入院と合わせ、この32床は満床になると予測しています。
昨年は手術室、HCU(高度治療室)の改修が完了しました。本年は田中穣副院長を迎え心臓カテーテル検査、治療が増えています。また特別顧問に浅井徹先生を迎え心臓血管外科手術が充実、心臓病診療もさらに力を注いでいきます。
緊急入院が60%以上、病床回転率は2.7を超え多忙な日々ですが、職員は笑顔で仕事をしています。患者さんに頼られることは医療者の誇りであり喜びです。医師は40代の2人を除き50歳を超えていますが、専門外の診療も協力して行っています。私は救急外来、認知症ケア医、睡眠時無呼吸外来、整形外科手術の助手、HCU当直など、必要なところを補っています。
自然界では偶然の無数の遺伝子変異の中で、環境に適合した変化を獲得した個体が生き残り繁栄すると言われています。我々は未来を予測し能動的に迅速に変化しなければ生き残れません。社会と地域の実情を洞察して対応することが求められます。そうしたなかでも我々の信念は変わりません。“生命だけは平等だ”、皆で頑張りましょう。