徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

羽生総合病院(埼玉県) 院長
髙橋 暁行(たかはしとしゆき)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

髙橋 暁行(たかはしとしゆき)

羽生総合病院(埼玉県) 院長

2026年(令和8年)05月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1542

受診できない一人暮らしの高齢の方々の命
家庭訪問を通じて守っていくことこそ課題
DX化できないこと探し積極的に関わっていく

私は8時会や朝礼で、「当院の存在意義は、地域に対する社会貢献を、医療をもって行うことである」と話しています。今、その「地域」には多くのご高齢の方々が生活しています。当院のある羽生市では65歳以上の方の人口に占める割合(高齢化率)が、全国平均よりもはるかに高く、すでに30%を超えています。当院が地域に社会貢献するには、ご高齢の方々が受診しやすい病院である必要があります。

人にしかできない親切を考え行動 職員のサポート付き再来受付行う

朝、挨拶運動のため玄関に立っていると、いろいろな気づきがあります。受診のため当院の玄関を入ると、まず受診の受け付けを自動再来受付機で済ます必要がありますが、ご高齢の方々が、その受け付けに手間取っている姿をよく目にしました。大半のご高齢の方々は「機械」を使うことが苦手で、「自動」ではなく「職員のサポート付き」再来受付機にする必要があると考えました。昨今の世の中は、DX(デジタル変革)化が進んだためか、受け付け相手は人ではなく機械であることが多くなりました。たとえば JRの駅に必ずと言っていいほどあった「みどりの窓口」を見かけなくなり、駅で困った時には対応してくれる駅員さんを必死に探す「不親切」な世の中になったと感じます。これもDX化が進んだ結果なのでしょう。

しかし、ご高齢の方々が多く来院する病院で、このような「不親切」は絶対に許されるものではありません。とくに当院では医事課職員の努力により「職員のサポート付き」再来受付を行うようにしました。ご高齢の方々の中には困っていても自ら声をかけることができない方も多く見受けられます。ご高齢の方々が受け付けに困って職員を探すのではなく、職員自ら「お手伝いしましょうか?」、「お手伝いしますね」と声をかけることで、「親切」な受け付けができるようになりました。DX化は業務を効率化していくために絶対に必要なものです。しかし、DX化が進んだことで「親切」という人と人との心のつながりが失われた世の中になってきたと感じます。「親切」の意味を調べると「相手の身になって、その人のために何かをすること。思いやりをもって人のためにつくすこと。また、そのさま」とあります。人にしかできない「親切」を考え行動することが、これからの世の中で求められてくるのだと思います。

マイナ保険証登録サポートや お助けコンシェルジュも開始

最近、医事課職員が自ら考え、「マイナ保険証」の登録も医事課職員が直接サポートする行動を起こしました。ここで大事なことは委託会社にお願いするのではなく、当院の職員が直接対応に当たっていることです。当院の職員であることにプライドをもっているからこそ、DX化ではできないことに積極的に関わり、患者さんたちと、心と心でつながることができるのだと考えます。一方、看護部では「お助けコンシェルジュ」なるものを開始しました。ご高齢になってくると一人では通院が困難となり、ご家族の送迎で受診する方を多く目にします。その中でも一人で歩くことが難しく、車椅子、シルバーカーや杖が必要な患者さんの乗降から入館のお手伝いをするのがそれです。これもDX化では対応できず、人でしか対応できません。そして特筆すべきは、その対応に当たっているのが看護部長や副看護部長をはじめとする看護部役職者だということです。リーダーが覚悟をもって行動を起こすことで初めて、DX化できないことを探し、積極的に関わっていくという病院の向かうべき姿が示され、すべての職員に、その取り組みが浸透していきます。その結果、ご高齢の方々が受診しやすい病院になると確信しています。

「高齢者の孤独死だけは許さない」という徳田虎雄・名誉理事長の「直言」を読んだことがあります。羽生市には一人暮らしをするご高齢の方々が約2,500人おり、さまざまな社会的理由で医療機関を受診できないご高齢の方々も多数いると推測されます。その「直言」ではさらに「独居高齢者のすべての家庭訪問をしなさい」と。“生命だけは平等だ”の理念をもとに「家庭訪問を通じ受診ができない一人暮らしのご高齢の方々の命を病院が守っていく」ことこそが今後、当院が地域に対し真摯に取り組むべき課題と考えます。地域のご高齢の方々の命を守るため、皆で頑張りましょう。

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