徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)03月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1483 1面
静岡徳洲会病院は輸血機能評価(I&A)認定を取得した。これは、輸血療法に取り組む医療機関が、適切に輸血管理を行っているか否かを判定する第三者評価制度で、日本輸血・細胞治療学会が実施している。徳洲会グループでは湘南鎌倉総合病院(神奈川県)、仙台徳洲会病院に次ぐ3施設目の認定だ。認定施設は全国で184施設(25年2月17日時点)。同院はこれまで日本医療機能評価機構の「病院機能評価」に加え、日本超音波検査学会の「超音波検査室の精度認定(A評価判定)」を取得するなど、医療の質を担保する第三者評価の取得に積極的だ。
輸血療法の質向上を推進する静岡病院スタッフ。左が鈴木副院長、その右が上田技師長、認定証を持つのが増田主任
使用済み製剤バッグを入れる専用のビニルバッグを導入し回収漏れを防止
I&A認定は、①輸血管理体制と輸血部門、②血液製剤管理、③輸血検査、④輸血実施、⑤副作用の管理・対策、⑥輸血用血液の採血――のそれぞれに関して、文書化されたマニュアルの整備や書面による同意の取得、さまざまな場面での確認・観察・記録を取ることなど、多岐にわたる認定基準を満たすことで取得できる。日本輸血・細胞治療学会の支部・I&A制度事務局から視察員3人が受審医療機関を訪問して視察を行い、認定基準に達しているかを判定する。
静岡病院は2024年12月に視察を受け、審査に合格。認定期間は25年4月1日から30年3月31日までの5年間(交付日は24年12月6日)だ。同院が認定取得に向けて動き出したのは23年。その前年の22年7月に出された『病院機能評価機能種別版評価項目解説集』(評価項目の意図などを説明する文書)で、I&A認定が初めて言及されたのがきっかけだ。
具体的には、良質な医療を実践していることの一環として、病院機能評価では受審医療機関に対し、「輸血・血液管理機能を適切に発揮している」ことを求めている。これに関して同解説集に、「日本輸血・細胞治療学会輸血機能評価認定制度(I&A制度)などの外部認証を受け、輸血・血液管理機能の質向上に向けた活動がなされていれば高く評価される」との記載が加わった。要するに病院機能評価が、安全で標準的な輸血療法を保証する第三者評価としてI&A制度を認めたことを意味する。
同院臨床検査科の増田亮子主任(臨床検査技師)は「当院では医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、医事課職員の多職種からなる輸血療法委員会を常設しています。この委員会が中心となり、定期的に会合を開いて、院内の部門ごとにクリアできていない判定基準の項目をピックアップし、進捗を確認しながら改善を重ねる取り組みを続けてきました」と説明する。
増田主任は同委員会の事務局を担い、認定取得に向けて院内のとりまとめ役を引き受けるなど尽力してきた。
たとえば使用済みの製剤バッグ(輸血用血液製剤が入っている軟質塩化ビニル樹脂製容器)を忘れずに回収するため、認定取得に向けた取り組みを行うなかで、使用済み製剤バッグを入れる専用のビニルバッグを導入した。臨床検査科から血液が入った製剤バッグを払い出す際に、このビニルバッグと副作用記入シートを合わせた3点セットを保冷バッグに入れて渡し、返却時にも必ずこの3点セットで保冷バッグごと戻してもらうこととした。
看護師などの意見を取り入れながら決定し、師長会などで周知してきた。使用済み製剤バッグは、輸血後の副作用や感染症などが生じた際に原因究明のために不可欠であり、必ず回収する必要がある。
輸血療法委員会の医師メンバーである鈴木尚亨副院長(内科)は「輸血療法に用いる血液製剤は無尽蔵ではなく、献血者からの貴重なご厚意で何とか維持されています。血液製剤を無駄にしないことはもちろん、患者さんのために適切かつ安全なより良い輸血療法に取り組んでいけるよう、これからもスタッフ一同研鑽していきたい」と意欲を見せる。
上田真路・臨床検査科技師長(臨床検査技師)は「認定は決して勲章のような飾りではありません。医療の質を継続的に担保するには、客観性が必要であり、そのためのツールとして認定は大きな意味をもっています。また認定の取得と並行して、この領域でも認定輸血検査技師など個人資格の取得を奨励し、静岡病院の組織文化として定着させていきたいと考えています」と展望している。