徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)06月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1496 1面
大垣徳洲会病院(岐阜県)は手術支援ロボット「Saroa(サロア)サージカルシステム」を導入した。サロアは国産の手術支援ロボットで、“力覚”(触覚)を術者にフィードバックするのが大きな特徴。鉗子が、どの程度の力で組織を把持しているかなどを術者に伝えることができ繊細な手術に寄与する。東海3県(愛知県、岐阜県、三重県)では初、国内では8台目の導入だ。徳洲会グループでは榛原総合病院(静岡県)に次ぐ2台目。大垣病院では当面、大腸がん(結腸がん)の手術に使用していく。
サージョンコンソール(右)とペイシェントカートで構成するサロア
「精度の高い安全な低侵襲手術に寄与」と高山副院長
地域の方々などを招いて操作体験などサロア内覧会を開催
徳洲会は患者さんのため、先進技術を積極的に導入しており、サロアを含め保有する手術支援ロボットは27病院・計32台に上る(表)。サロアは、先端に鉗子やカメラ(内視鏡)を取り付ける3本のロボットアームを有するペイシェントカートと、術者が手術操作を行うサージョンコンソールで構成する。
手術支援ロボットとして最大の特徴は力覚提示機能だ。独自の空気圧制御技術によって、手術に使用する鉗子にかかる力を検出、電気信号に変換して力覚として操作ハンドルにフィードバックする仕組み。また、サージョンコンソールのナビゲーションモニタ上にも力覚情報が定量数値(ニュートン値=力の単位)として表示される。
術者は視覚情報に加えて触覚を頼りに力加減を調整でき、臓器を傷つけるリスクを低減できる。サロアは2023年5月に胸部外科(心臓外科を除く)、一般消化器外科、泌尿器科、婦人科で薬事承認を取得した。
大垣病院でサロア導入を主導したのは高山悟・副院長兼外科部長。高山副院長は手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた手術経験が豊富で、同院に先行してサロア手術を開始した榛原病院でも導入の中心を担い、執刀も手がけている。
大垣病院は昨年7月、榛原病院からの移設でダヴィンチを導入し、スタッフのトレーニングや環境整備を経て、同年9月から今年2月にかけて10例の結腸がんの手術を実施。メーカーのサポート期間切れを受け、後継機種として4月にサロアを導入した。4月25日には大腸がん1例目の手術を行い奏功、術後の経過は良好だ。その後も順調に症例を重ねている。
高山副院長は「切除した腸管の縫合を行う際に、たとえば糸をどの程度の強さで引っ張っているか、これまでは術者の経験と視覚情報が頼りで、定量的な把握は難しいのが実情でした。サロアでは感触として手に伝わってくるとともに、ナビゲーションモニタ上にニュートン値という数値でも定量的に表示されます。これらによって、より精度が高く安全な低侵襲手術の施行に寄与します」とアピール。
同院の間瀬隆弘院長は「手術支援ロボットのない施設には、若手医師も、高度なスキルをもった外科医も来てくれません。当然、外科医を育成していくこともできません。医療者にも魅力ある病院づくりを進め、地域の患者さんに貢献していくとともに、日本発のメーカーが開発したロボットですので、当院での使用状況をフィードバックし、一緒になって性能の向上に取り組み、医療の発展のため還元していきたい」と意欲を見せる。
地域への周知を図るため、4月6日には院内でサロア内覧会を開催。医療関係者や地域住民の方々を招き、高山副院長、開発元のリバーフィールドの只野耕太郎社長が講演を行った。高山副院長は自身のキャリアと重ね合わせ日本のロボット手術の歴史を解説。只野社長はロボット手術の利点やサロアの技術面、開発過程やアップデートの展望など紹介した。講演後に操作体験会を実施。午前・午後の二部制で約60人が参加し盛況だった。