徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2020年(令和2年)2月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1223 四面

制御性T細胞が免疫状態を安定化
理論と実験で新たな見方提示
山口・野崎病院研究所主任研究員

野崎徳洲会病院(大阪府)附属研究所の山口智之・免疫システム研究部主任研究員(内科医師)は、自己の細胞を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患を抑制する役割などがある制御性T細胞をテーマに研究に取り組み、その成果をまとめた論文が免疫分野の世界的な医学ジャーナルである『International Immunology』誌2019年11月号に掲載された。“The Featured Article”(今月の注目論文)に選出されるなど大きな反響があった。

世界的な医学誌の注目論文に

「生命現象の基本原理をひとつの数式で表すことが目標」と山口・主任研究員「生命現象の基本原理をひとつの数式で表すことが目標」と山口・主任研究員

同研究所は2016年9月に徳洲会グループの4番目の研究施設として開設された文部科学省指定研究機関。山口・主任研究員は週2日外来診療を行いながら研究に取り組んでいる。

山口・主任研究員が筆頭責任著者として発表した論文タイトルは「Theoretical modelingreveals that regulatory T cells increase T-cell interactionwith antigen-presenting cells for stable immunetolerance」(制御性T細胞がT-APC[T細胞-抗原提示細胞]相互作用の増強を介して、安定した免疫寛容を実現させていることを理論モデルで示す)。

正常な免疫システム(免疫応答)では、体内に入ってきた病原体などを攻撃するT細胞は自分の身体を攻撃することはない。こうした免疫寛容と呼ばれる状態を保つのにかかわっているのが、リンパ球の一種である制御性T細胞だ。制御性T細胞が、自己を攻撃する誤ったT細胞の増殖だけを抑制できる仕組みは、まだ明らかになっていない。

「今回、我々は理論的なシミュレーションと動物実験から、免疫応答に対する新しい見方を提示しました。免疫寛容の本質は免疫状態が変化しにくいよう安定化することであり、それにはT細胞の総数が多いことが重要だということです。注目論文に選ばれ、とても名誉なことと受け止めています」(山口・主任研究員)

山口・主任研究員はマウスを用いた実験から、強い炎症環境下では制御性T細胞がT細胞の増殖を促進することを発見。こうした現象を解明するため、T細胞と抗原提示細胞(T細胞を活性化させる細胞)の相互作用に着目した免疫応答の数学モデルを構築し、理論的シミュレーションを実施した。

その結果、制御性T細胞には、周囲のT細胞が抗原提示細胞から離れるのを抑制して接着した状態を維持し、新たな結合を増加させる働きがあると推定できた。この結果は、制御性T細胞は免疫応答と抑制、正常と異常を問わず、状態を維持・安定化する働きがあることを示している。

また糖尿病モデルのマウス実験から、制御性T細胞による免疫寛容の維持には、十分な数のT細胞が必要であることがわかった。実際、マウスのT細胞数を減らしたこところ、自己免疫性糖尿病の発症が促進されることを確認した。

山口・主任研究員は「生命現象の基本原理を数式や理論で表すことが目標です。免疫は複雑で柔軟な性質が面白いと思い興味をもちました。次は遺伝子発現が免疫系と同じ数式で記述可能か、検証する研究を計画しています。“Proof of New Concept”(新概念の実証)を積み上げていきたい」と意気込んでいる。

PAGE TOP

PAGE TOP