徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2020年(令和2年)2月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1223 四面

同種造血幹細胞移植を初実施
湘南鎌倉病院が急性リンパ性白血病に

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は急性リンパ性白血病の患者さんに同種造血幹細胞移植を行った。同院が同移植に取り組んだのは初。急性リンパ性白血病は発症原因や危険因子が明らかになっていないことから予防が難しいうえに、発症すると急速に進行し無治療の場合、短期間で死に至る。そのため早期の診断・治療の開始が重要だ。ただし治療法の進化によって今日では長期生存率が改善しつつある。同院が今回実施したのは血縁者間の造血幹細胞移植。治療後の経過は順調で、患者さんは定期的に通院、社会復帰を目指し療養を継続中だ。同院は今後も多様な疾患の患者さんが、安心して治療を受けられる病院として地域医療に貢献していく考えだ。

血縁者間の移植を無事終了

湘南鎌倉病院血液内科スタッフ(後列右から4人目が玉井部長、前列右から3人目が岡田医師)湘南鎌倉病院血液内科スタッフ(後列右から4人目が玉井部長、前列右から3人目が岡田医師)

急性リンパ性白血病は血液がんの一種。成人では約10万人に1人の割合で発症すると言われる。

血液の中には、体内に入ってきた細菌やウイルスを攻撃する白血球や、酸素を運ぶ赤血球、血液を凝固し出血を止める作用のある血小板といった血液細胞が含まれている。これら血液細胞のもとになる造血幹細胞は骨髄の中にある。造血幹細胞が分化して白血球や赤血球、血小板がつくられる。この分化する過程で白血球の一種であるリンパ球が悪性化し、がん化した白血病細胞となって急激に増殖することで、急性リンパ性白血病は発症する。「典型的な症状としては、鼻血や歯茎からの出血、長期間続く発熱やかぜの症状、倦怠(けんたい)感、易疲労感(つかれやすいこと)などがあります」(湘南鎌倉病院血液内科の玉井洋太郎部長)

これらの症状に該当し、白血病が疑われる患者さんが同院を紹介受診したのは2018年11月。血液検査と骨髄検査の結果、急性リンパ性白血病と診断、入院治療を開始した。

診断や病型分類に必要な骨髄検査は、局所麻酔下で腸骨(腰の骨)に穿刺(せんし)針を刺し骨髄液を採取して行う。採取した骨髄液を用い、フィラデルフィア染色体を調べる検査も行う。同染色体がある病型の場合は、特定の分子標的薬の有効性が明らかになっているためだ。

同院血液内科の岡田怜医師は「患者さんの入院後、検査を経て、抗がん剤や分子標的薬、ステロイド剤の投与を、入退院を繰り返しながら行っていきました。そのようにして病勢を抑え込みながら、根治を目指し造血幹細胞移植に取り組みました」と振り返る。

患者さんは30代男性で、遠方に住む患者さんの妹が造血幹細胞を提供するドナーとなった。ドナーは患者さんと白血球の型であるHLAのタイプが一致している必要がある。

同種造血幹細胞移植は、移植前処置と呼ばれる大量の抗がん剤投与と放射線全身照射により、患者さんの白血病細胞と骨髄を死滅させ、その後にドナーの造血幹細胞を移植して造血機能を回復させる治療法だ。移植前処置で白血病細胞が完全には死滅せず、残っていたとしても、移植した造血幹細胞から新たにつくられるリンパ球など免疫細胞が攻撃する。

ドナーからの造血幹細胞採取は、まず白血球を増やし血液中の造血幹細胞を増加させる作用のあるG―CSF(顆粒球コロニー刺激因子)という薬剤をドナーに投与。造血幹細胞が増えてくる5日目前後に血液を採取し、成分分離装置を用いて造血幹細胞を採取する。必要な成分のみ取り出し、残りの血液はドナーに戻す。患者さんへの造血幹細胞の移植は点滴で血管内に投与して行う。

このような方法は末梢血(まっしょうけつ)幹細胞移植と言い、ほかにも造血幹細胞移植を行う方法として骨髄移植と臍帯血(さいたいけつ)移植がある。なお事前に採取しておいた患者さん自身の造血幹細胞を用いる治療を自家造血幹細胞移植と言い、同移植に関して同院は、これまでにも実施している。

移植前処置によって白血病細胞とともに患者さんの骨髄や免疫力を破壊しておくことで、ドナーの造血幹細胞が拒絶されず、患者さんに生着し、造血機能や免疫機能が働き出す。生着するまでは約2週間を要する。白血球の一種である好中球の数が血液1μℓ(マイクロリットル)当たり500個以上となり、これが3日間続けば、生着し、患者さんの骨髄内で新たに血液をつくり出し始めたとみなされる。

この治療にともなうリスクとしては、移植前処置の抗がん剤治療による副作用や、免疫の低下による感染症など合併症、移植した造血幹細胞の生着不全、移植片対宿主病(GVHD=移植した造血幹細胞に由来するリンパ球など免疫細胞が患者さん自身の身体を攻撃してしまう副作用)など発症する可能性がある。

非血縁者間移植の認定施設を目指す

「造血幹細胞移植は、医師だけでなく診療放射線技師や薬剤師、入院中の食事や栄養を管理する管理栄養士など多職種による協力が必要な治療です」(岡田医師)

移植前検査から前処置、造血幹細胞の移植、生着を確認して造血・免疫機能が回復し、GVHDなど合併症の治療を行って退院するまでは約2カ月を要した。退院後もしばらくはGVHDの治療・予防をするために免疫抑制剤の投与を続ける。

治療後の経過観察として、再発の有無を確認する検査などを行うため、患者さんは定期的に通院。同院は患者さんが安心して療養生活を送ることができるように継続的にフォローしていく。

なお非血縁者間の造血幹細胞移植は、患者さんが日本骨髄バンクに登録し、ドナーとのマッチングを経て、移植認定施設で行われる。湘南鎌倉病院は現在、非血縁者間の移植認定施設ではないが、今後、血縁者間移植の実績を積み、移植認定施設を目指す。

玉井部長と岡田医師は「当院は大規模急性期病院で土曜、日曜でも検査が可能であり、合併症を発症したとしても迅速に対応することが可能です。地域の患者さんがどのような疾患でも安心して受診できる病院のひとつの診療科として、患者さんのために貢献していきたい」と声をそろえている。

PAGE TOP

PAGE TOP