徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)10月7日 月曜日 徳洲新聞 NO.1205 三面

講演 今後の医療の方向性
石川KPMGヘルスケアジャパンアドバイザー
海外事例を交え

9月度の徳洲会グループ医療経営戦略セミナーが9月28日から2日間開かれ、初日にKPMGヘルスケアジャパンの石川雅俊アドバイザー(医師)は「これからの病院経営~海外の病院グループの動向も踏まえて~」と題し講演した。随時、海外の事例を紹介しながら、日本の医療を取り巻く環境の変化、病院経営で求められる視点について見解を示した。

患者さん中心へ多様に変化

「唯一、生き残ることができるのは変化できる者」と石川アドバイザー 「唯一、生き残ることができるのは変化できる者」と石川アドバイザー

はじめに石川アドバイザーは千葉西総合病院で初期研修を受けたエピソードなど簡単に自己紹介を行い、日本のヘルスケアシステムの課題に言及。高齢化の進展や疾病構造の変化、労働人口の不足、患者さんの期待の高まり、財政の制約、供給・生産の効率化、質の向上、データの利活用などを挙げながらも「これらの課題は各国で共通している」とし、各国の戦略が近似している状況を指摘した。

具体的に①ケア・セッティングのシフト、②バリュー・ベースド・ヘルスケア、③ペーシェント・エンゲージメント、④医療技術のイノベーション――の4つを挙げ、それぞれについて解説。

①は“より最適なケアの場所”を意味し、かつてケアの場所は医療機関がほとんどだったが、介護施設の増加や在宅医療の進展などを背景に多様化している点を挙げ、実際に入院受療率が低下傾向にあることを示した。今後は人口減少などから効率化が求められる点を指摘するとともに、地域特性に応じた医療提供体制の重要性を強調。大都市(30分以内の診療圏に人口100万人以上)、地方都市(同圏に人口30万人程度)、過疎地域(同圏に人口10万人未満)で課題が異なる点や疾病構造、人口動態の変化などを加味しながらニーズを予測するよう求めた。

②は“患者さんの価値の極大化”を意味し、医療の質改善やアウトカム(成果)の達成、無駄な通院の減少など、価値に基づいて支払う制度への移行を進めている米国の例や、医療技術評価システムを導入している英国の例などを紹介。「質の高い医療はコストが低い」という考え方があることも紹介し、ケアの提供が分断されていたり、出来高払いがあったりする現在の日本の医療システムでは、診断や治療の重複、それにともなう医療過誤リスクの向上、無駄な支出の増大を招く可能性を指摘した。

③は“患者さんや一般の方の関与を高める”ことを意味し、“デジタルヘルスケア化”の重要性を強調。海外でのオンラインによる健康管理や服薬指導の例を示しつつ、ウェアラブル・デバイスや診断・治療を支援するアプリケーション、AI(人工知能)などを用いて生体情報などを「リアルタイムで利活用」。これにより診断・治療から予防・予後へのシフト、ケアサービス提供場所からの解放、個人データに基づくケアの提供などが可能になるとした。

④では、遺伝子を活用した治療技術の開発などにより、従来の集団に対する標準的な診療から個人に対する最適な診療を予測して介入する動きに変化していることや、とくに海外では医薬品や医療機器など開発会社が、患者さんのケア全体をカバーするサービスなどを行い、従来の製品供給という役割から変容している例などを紹介した。

これらをふまえ、石川アドバイザーは医療提供側中心から患者さん中心の産業構造に転換し、事業者の統合・連携が促進されると予測。海外での取り組みを交えながら、今後、医療機関は本来事業の強化はもちろん、医療関連企業や保険者などとの連携も、今まで以上に視野に入れながら時代とともに変わることの大切さを強調した。

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