徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)10月7日 月曜日 徳洲新聞 NO.1205 四面

腸内細菌叢がテーマ
サイエンス漢方処方研究会

日高徳洲会病院(北海道)の井齋偉矢院長が理事長を務めるサイエンス漢方処方研究会が8月17日、都内で第4回サマーシンポジウムを開催した。同研究会は2012年に発足。漢方薬の作用機序などを解明し、医師の誰もが診療に取り入れられるようにして現代医療の質の向上を図ることを目的に活動している。今回のシンポジウムは「腸内細菌叢(そう)と漢方」を全体テーマとし3人の講師を招聘(しょうへい)。医師や看護師など50人超が参加し知見を共有した。

第4回サマーシンポジウム開催

「サイエンス漢方処方の普及に尽力したい」と井齋院長 「サイエンス漢方処方の普及に尽力したい」と井齋院長

3月に開催した同研究会第8回シンポジウムで、福山大学薬学部薬学科漢方薬物解析学研究室の髙山健人講師(当時は助教)による腸内細菌叢をテーマとした講演に対する反響が大きかったことから、腸内細菌叢を全体テーマとした。

はじめに福山大学薬学部漢方薬物解析学研究室の岡村信幸教授が「腸内細菌は漢方薬の作用を解明する端緒となりえる」をテーマに講演を行った。

岡村教授は宿主と腸内細菌の共生関係に言及。たとえば煎剤を基本とする漢方薬に豊富に存在する配糖体やオリゴ糖、多糖は、難消化性の化合物であり、人の消化酵素ではほとんど分解することができない。大腸に到達後、配糖体は糖をエネルギー源とする腸内細菌の酵素によって分解、生成した非糖部が吸収されることで薬効を示すと言われている。

さらに岡村教授は、気虚(全身の機能低下)を改善する漢方薬である補気剤に関して、作用機序がほとんどわかっていない現状をふまえ、「補気剤と漢方薬のクロストーク(相互作用)の研究が進展すれば、作用機序解明の端緒になり得ます」と呼びかけた。

続いて、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病原細菌学分野の後藤和義・助教(病原細菌学)は「腸内細菌叢を『診る』ことは可能か?」と題し講演。腸内細菌叢を「複雑な生態系をなす生物集団」としてとらえ、菌叢を集団として解析する手法などを解説した。

後藤助教は菌の培養や同定、遺伝子解読の技術の発展など歴史をひも解き、「2003年に次世代シークエンサーが登場し、数百種類にも及ぶ腸内細菌叢の構成を見ることが可能になりました」と指摘。また、腸内に常在する3種類の腸内細菌の比率により、区別される腸内細菌叢の型を意味するエンテロタイプなどにも言及した。

全国から50人超が集まり熱心に聴講 全国から50人超が集まり熱心に聴講

この後、登壇したのは髙山講師。「漢方薬のエビデンス構築へのブレイクスルー ―― 腸内細菌叢の変化に着目した漢方薬の有用性の解明 ――」をテーマに講演。これまでの研究成果のなかから、便秘症の治療に用いる大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)の下剤効果の個人差に関する研究などを紹介した。

マウスを対象に高炭水化物食、高脂肪食、高繊維食と食餌を分けて与え、大黄甘草湯の下剤活性を評価。その結果、高炭水化物食と高脂肪食では下剤活性が維持し、高繊維食では下剤活性が抑制された。また、それぞれの腸内細菌叢を調べたところ、食餌の違いにより、腸内細菌叢の構成にも変化が生じていた。これらのことから、食餌による腸内細菌叢の変化に応じて大黄甘草湯の下剤活性が制御されることが示唆された。

井齋院長の閉会挨拶で盛況裏に終了。「漢方薬は腸内細菌を含めたホスト側(生体側)の状況に影響を受けることが、さまざまな研究によって明らかになってきており、今回も大変意義深い会になりました。今後も“サイエンス漢方処方”の普及と研究推進に尽力していきたい」と意気軒高だ。

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