徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)7月15日 月曜日 徳洲新聞 NO.1193 四面

榛原病院の看護師2作品
看取りエピソードで優秀賞
静岡県看護協会から

表彰式を終え笑顔の長野・看護副主任(左)と松栄看護師 表彰式を終え笑顔の長野・看護副主任(左)と松栄看護師

榛原総合病院(静岡県)の長野清美・看護副主任と松栄望美看護師は、静岡県看護協会の主催の「第2回看護職の心に残る看取りエピソード集」で優秀賞を受賞した。6月28日に静岡市内で授与式が行われ、2人は壇上で賞状などを受け取った。長野・看護副主任は「文章にまとめるなかで、学生時代に目指していた“寄り添う看護”を思い出しました。初心を忘れず今後も頑張ります」、松栄看護師は「自分たちの看護が認められたようで嬉しいです」と満面の笑み。

【受賞作品】※一部抜粋して編集

「美味しい魚が食べたいなー」(長野・看護副主任)

Aさんは60代の男性で、胃がん、肝転移末期の状態で入院していましたが、家族とは疎遠で独り暮らしでした。

ある日、Aさんが作業療法士と楽しそうに会話をしている所に遭遇しました。何を話していたのかを伺うと、「外出をしたい」、「美味しい魚が食べたい、お酒も呑みたいなあ」と。主治医にお願いをすると、「体力的に最後の外出になる可能性があるので望むことは叶えてやって欲しい」と賛同してくれました。

Aさん、理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカー、そして、私とでAさんの希望が叶うお店に行きました。メニューを見ながら、Aさんは生ビールを一口飲んで、「美味しいなあ」と一言。日本酒も一口、横になっては焼き魚も一口、また横になり…。少し口にしただけでしたが、皆で食事ができたことをとても喜ばれ、病院への帰り道には海岸にも寄りました。タバコを吸いながら好きな缶コーヒーを飲み、「気持ちいいなあ、寿命が延びた気がする…」と。

徐々に最期の時が迫り、そして穏やかな最期を迎えました。

「この病院に来て良かった」とAさんが言ってくれたことを思い出します。今後も、看護師として患者さんの意思を尊重し、人としての尊厳を護り、最後の瞬間まで心の平安を支えていきたいと思います。

「もう一度、縁側から畑を見たいんだよ」(松栄看護師)

Bさんは、家族でお茶農家を営んでいた。新茶の始まる頃、心不全による呼吸困難があり入院した。2番茶が終わり家を見たいという思いを聞き、家族と相談し介護タクシーを頼んだ。「さあ今朝だね」という時、Bさんの意識がなくなった。1時間後、意識を取り戻し、酸素をしながら、「ちょっと見るだけだから家に帰りたい」と看護師の手を握って離さなかった。診察の結果、心不全が悪化していることがわかった。諦めてもらうしかなかった。毎日、弱っていくBさんを見ながら私は「家を見たいというBさんの言葉が頭から離れなくて…。亡くなることを覚悟で家に連れて行っていいですか?」と息子夫婦に伝えていた。息子夫婦は、その場でうなずいてくれた。看護師2人、理学療法士2人、訪問看護師2人で自宅に向かって出発。家では妻、息子夫婦、Bさんの友達4人と猫が待っていてくれた。Bさんは友達一人ひとりと手を握りながら話し、そして縁側から猫を抱きながら畑を見た。痛みはなかった。次の日から毎日、「家に帰ってきたよ」と私に教えてくれた。

その1週間後、妻の見守るなか、大きく呼吸をしてBさんは逝った。

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