徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)7月15日 月曜日 徳洲新聞 NO.1193 四面

福岡病院
多職種専従でICU運営
回診で薬剤師やPTがプレゼン

福岡徳洲会病院は多職種専従でICUを運営している。昨年10月にスーパーICU(特定集中治療室)の施設基準をクリア。要件としてICU内に勤務する専任の医師、看護師、院内に勤務する専任の臨床工学技士(ME)に加え、早期離床・リハビリテーション加算を取得する場合は専任の理学療法士(PT)または作業療法士(OT)が必要。同院ではこれら職種に加え、薬剤師、管理栄養士もICU内で専従または半専従として勤務し、チーム医療を強化している。

江田センター長(右から3人目)を中心に多職種でICUを運営 江田センター長(右から3人目)を中心に多職種でICUを運営

福岡病院の江田陽一・集中治療センター長は7年前に入職。当時について「各診療科の主治医が日中は外来・手術などで忙しいため、ICU専属医師がいないと重症患者さんの治療が遅れてしまう傾向にあったと思います」と振り返り、「私がICU専属となりましたが、自分ひとりで、すべての患者さんを診るのは限界があるため、多職種を巻き込み、チームでICUでの治療の質の向上を目指したいと考えました」とチーム医療を強化したきっかけを説明する。

現在、医師、看護師に加え薬剤師とPTが専従として、MEと管理栄養士が曜日や時間帯を限定した半専従としてICU内で勤務。半専従とはいえ院内に勤務し、何か要請があれば、すぐに駆け付けられる体制を取っている。

「多職種それぞれが主治医のつもりで」

多職種で回診を行い、この日は宮津主任(右)がプレゼン 多職種で回診を行い、この日は宮津主任(右)がプレゼン

毎朝、多職種によるチーム回診を行い、治療方針など共有。回診時のプレゼンテーションは月曜と木曜は江田センター長、火曜はPT、水曜は薬剤師、金曜は研修医と、曜日ごとに担当を変える。「多職種それぞれが主治医のつもりで」を合言葉に、質の高いケアを提案。ICUからの早期回復・早期離床にこだわり、現在、ICUの平均在室日数は2.7日だ。

多職種がICU内にいることで、スムーズに治療が進行。たとえば人工呼吸器を装着している患者さんのリハビリ時はMEがいると安心だ。

さらに「当院はオープンICUですので、基本的には各診療科の医師が主治医になります。多職種スタッフが、それぞれの視点で主治医に提案することで、患者さんの早期回復に寄与していると考えます」(江田センター長)。

ベッドサイドで中島PT(中央)がリハビリを指導 ベッドサイドで中島PT(中央)がリハビリを指導

また、同院は4月に日本集中治療医学会の集中治療専門医研修施設に認定(徳洲会グループでは中部徳洲会病院も認定)。今後、専門医の育成にも注力していく考えだ。江田センター長は「ICUの診療はとても幅広いため、今後、もしスーパーICUを目指す病院があるなら、集中治療専門医を取得するべきだと考えます」とアピールする。

薬剤師はICU専任が3人いて、約1週間で担当が入れ替わる。薬物治療に関する合併症は一般病棟より、ICUのほうが多い傾向にあり、安全に治療を遂行するために薬剤師の役割は大きい。宮津大輔・薬剤部主任は「多くの診療科がかかわり面識のない医師もいるので、なるべく直接話して信頼関係を築いています。当院は全国に先駆けてICUの薬剤師専従に取り組んできたので、学会や徳洲会グループの勉強会などで成果を共有していきたいです」と意気込みを見せる。

ICUのリハビリは中島浩貴PTが担当。原則として入室翌日にリハビリを開始し、早期のADL(日常生活動作)改善を目指す。中島PTは朝の主治医回診での情報収集に加え、多職種によるチーム回診の内容も参考に病態を把握する。「それぞれの職種で視点が違うので、新たな気付きがあり理解が深まります。患者さんに直接、リハビリ指導できるのは1日に数十分なので、それ以外の時間を有効に使ってもらえるようにマネジメントしていきたいです」と目標を語る。

1床当たり20㎡以上がスーパーICUの施設基準のひとつ 1床当たり20㎡以上がスーパーICUの施設基準のひとつ

MEは毎日午前中のみICUに常駐。専任は5人いて、それぞれに得意分野があるが、ICUで扱う装置は多いため幅広い知識が求められる。人工呼吸器や血液透析装置、補助循環装置の整備を行い、患者さんが安全に治療できる環境をつくるのが主な業務だ。土屋真基・臨床工学科主任は「生命維持管理装置を付ければ患者さんは安定しますが、早期離脱に向け装置の調整が必要になります。医療機器のスペシャリストとして、主治医にきめ細かい提案ができればと思います」。

管理栄養士は週2回ほどICUに常駐。入室患者さんの栄養管理計画書をつくり、主治医に提案する。栗並美保・栄養管理室主任(病態栄養認定管理栄養士)は「なるべく術前から介入し、術後の早い段階から経口で食べて早期回復できるようにサポートします」。また、栗並主任は江田センター長とともに院内のNST(栄養サポートチーム)にも所属。低栄養になりそうな患者さんをNSTにつなげるなど、退室後も継続的なフォローを心がけている。

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