徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)11月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1160 三面

日本脳神経外科学会
徳洲会から22演題
脳外部会も同日程で開催

日本脳神経外科学会第77回学術総会が10月10日から3日間、仙台市内で開催された。テーマは「社会の変革と脳神経外科」。徳洲会グループからはシンポジウム1題、一般口演4題、ポスター17題の発表があった。また、11日には徳洲会脳神経外科部会も開催、10病院から14人が参加した。

黒木医師はシンポジウムで発表 黒木医師はシンポジウムで発表

シンポジウム「急性期脳梗塞治療の現状と展望」で福岡徳洲会病院の黒木亮太・脳神経外科医師は「休日・夜間の来院が急性期脳梗塞治療の治療タイムライン、治療成績に与える影響」と題し発表。診療時間外では人的資源の不足などの問題から、治療内容・成績に影響を与えている可能性があることを背景に、rt-PA療法(血栓溶解療法)と血管内血行再建術を施行した急性期脳梗塞124例(診療時間内43例・時間外81例)を検討した。

その結果、治療タイムライン・成績は、診療時間内・時間外ともに同等だったことを報告。「施設により人的資源やインフラ、院内システムなどは異なるため、各施設の現状に応じた対応を取る必要があります」とまとめた。

VADでの疼痛の特徴を解説する沖山部長 VADでの疼痛の特徴を解説する沖山部長

一般口演で中部徳洲会病院(沖縄県)の沖山幸一・脳神経外科部長は「疼痛(とうつう)発症未破裂椎骨(ついこつ)動脈解離における疼痛の特徴―経時的画像変化との関係―」をテーマに発表。疼痛のみで発症した頭蓋内未破裂椎骨動脈解離(VAD)の臨床経過を分析、経時的MRI(磁気共鳴画像診断装置)画像の変化と関連を検討した。

結果、非出血性VADに特徴的な疼痛は「急性・片側性の〝後頚部(こうけいぶ)痛〟で、中等度以上の疼痛が継続もしくは増悪するもの」と結論。疼痛の経過と画像形態変化の関係では、「画像悪化例で疼痛改善までの期間が有意に長期化しており、疼痛の持続・悪化は解離の進行や治療の遷延化を示唆しています」と説明した。

一ノ瀬部長は開頭クリッピングの手技を発表 一ノ瀬部長は開頭クリッピングの手技を発表

八尾徳洲会総合病院(大阪府)の一ノ瀬努・脳神経外科部長(現・大阪市立大学大学院医学研究科脳神経外科学教室講師)は「脳底動脈遠位部動脈瘤(りゅう)に対する開頭クリッピング―Transsylvian appro xach の基本手技と術野拡大のバリエーション―」と題し発表。同手技は開頭して脳のシルビウス裂(外側溝)からアプローチするクリッピング術。このポイントを動画で示すと同時に、同手技により開頭クリッピングを施行した6例について解説した。

それによると、全例とも直視下でクリッピングできたと強調。ポイントとして前方循環の手術で、徹底したくも膜下腔剥離(くうはくり)による正常構造温存を基本手技として習得することが重要とし、「術野拡大のバリエーションをもつことで、さまざまな病変に対応できます」とまとめた。

2段階吸引法を説明する井澤医師 2段階吸引法を説明する井澤医師

岸和田徳洲会病院(大阪府)の井澤大輔・脳神経外科医師は「ADAPT法を第一選択とした超急性期血栓回収療法における手技の工夫と治療成績」をテーマに発表。ADAPT法とは吸引型機器によって直接血栓を吸引する手技。同院では主にADAPT法を改良した2段階吸引法を施行し、効果を上げてきたことを説明した。

ADAPT法でもバルーンガイドを使用し、血栓を越えて誘導した3MAX(約0.9㎜の血栓吸引カテーテル)からも吸引することで、「追従性の向上と強い吸引力により、高い再開通率を得ることができると考えます」と締めくくった。

「出血拡大の予測にCTAは有用」と小川研究員 「出血拡大の予測にCTAは有用」と小川研究員

札幌東徳洲会病院医学研究所の小川博司・臨床生体情報解析部研究員は「脳内出血患者に対するCTAを用いた出血拡大予測の検討」と題し発表した。一般的に脳内出血量および神経症状が安定している場合、初回にCT(コンピュータ断層撮影装置)を撮像してから3時間後に再検査を行うが、待機中に血腫増大が進行することがあることを指摘。

そこで脳内出血25例に対し、頭部単純CTとCTA(CT血管造影)を撮像し、血腫内に造影剤の漏出を認めるかどうかを検討した。その結果、漏出を認めた症例では有意に出血拡大を呈しており、この予測にCTAは有用であると強調。「これにより多くの脳出血患者さんの救命、適切な治療につがると考えられます」と示唆した。

徳洲会脳外部会は部会長である中川院長が進行 徳洲会脳外部会は部会長である中川院長が進行

また、学会の開催に合わせ11日、仙台市内で徳洲会脳神経外科部会を開催した。部会長の中川秀光・野崎徳洲会病院(大阪府)院長が司会を務め、まずは初参加の医師が自己紹介。続いて、脳神経外科手術応援に関するスケジュールや参加病院ごとの状況を確認したり、術中ナビゲーションシステムについて情報を共有したりした。

最後に、同部会が主催する研究会「Rag-Tagの会」を来年7月に福岡病院で開催することを確認し、閉会した。

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