徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)11月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1160 一面

湘南鎌倉病院&札幌東病院
生体弁の機能不全へ新治療
低侵襲のTAV in SAVスタート

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)と札幌東徳洲会病院は、外科手術で植込んだ生体弁が機能不全を起こした際の新しい治療としてTAVinSAVを開始した。これは、すでに植込んだ生体弁のなかにカテーテルで新たな生体弁を植込む治療法。7月に保険収載され、湘南鎌倉病院では8月14日、札幌東病院では8月30日に1例目を実施した。経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI/TAVR)をベースとした治療法ではあるが、施設基準は厳しく、TAVIを実施する全国149施設のうちTAVinSAVの実施は25施設のみ(11月中旬現在)。

札幌東病院は道内で唯一実施

「救えなかった患者さんを救える新しい治療」と齋藤総長 「救えなかった患者さんを救える新しい治療」と齋藤総長

重症大動脈弁狭窄(きょうさく)症(AS)の治療は、外科手術による大動脈弁置換術が第一選択になる。手術で生体弁を植込んだ場合、その耐久性は10~20年と言われ、石灰化や摩耗により徐々に劣化。そして弁が機能不全を起こすと、胸の痛みや息切れ、意識消失などを生じ、再び弁の置換が必要になる。

ただし、ASの治療を受けた時点で高齢だった患者さんが、さらに10年以上経過したケースでは、開胸手術に耐えられず保存療法で様子を見るしかないことが多い。

こうした症例に対する新たな治療法として、7月に保険収載されたのがTAVinSAVだ。

治療を担当する山崎誠治副院長(右)と山﨑和正医長 治療を担当する山崎誠治副院長(右)と山﨑和正医長

ASには、高齢であることや呼吸機能の低下などにより、体力的に外科手術の実施が困難な患者さんに対する治療としてTAVIがあるが、TAVinSAVは機能不全を起こした外科生体弁に対し、TAVIと同じくカテーテルで新たな生体弁を植込む治療法だ。外科生体弁の治療を過去に受けた高齢者などが対象で、より低侵襲に弁機能を改善することができる。

TAVinSAVを実施できるのは、植込まれているのが生体弁の場合のみで、機械弁は対象外。機械弁は耐久年数が長いというメリットはあるが、血栓ができないように薬を飲み続けなければならない。一方、生体弁は血栓ができにくく、弁の働きも良いため、ASの治療には、その扱いやすさから生体弁を用いるケースが多いのが現状。しかし、長寿命の高齢者が増え、生体弁の耐久性が追い付かなくなるという課題が浮上していた。

TAVinSAVの施設基準は、①TAVI専門施設または同等数の症例を過去1年間で実施している(50症例/年以上)、②メドトロニック社TAVIシステムのデバイス指導医または同等のデバイス経験(30症例以上)を有する術者が所属する施設である、③症例登録で、実施したTAVI症例全例の登録および術後1年目までの患者さんに関するフォローアップデータを100%入力している――という厳しさだ。

TAVIで用いる生体弁は主に2種類ある。エドワーズライフサイエンス社のサピエン(バルーン拡張型)とメドトロニック社のエボルート(自己拡張型)だ。現在、日本ではサピエンを使うことが多いが、TAVinSAVで用いる生体弁はエボルート。そのため施設基準の②にある30症例をクリアするのが難しいことも、実施施設が少ない要因のひとつである。

なお、徳洲会グループでTAVI実施施設は6施設あるが、TAVinSAVの実施施設は湘南鎌倉病院と札幌東病院のみ。

札幌東病院でのTAV in SAV の様子 札幌東病院でのTAV in SAV の様子

湘南鎌倉病院で同治療を担当する齋藤滋・総長兼循環器内科主任部長は「これまで再手術に耐えられない患者さんは様子を見ることしかできなかったが、新しい治療法ができたのは喜ばしいことです。適応があれば積極的に実施していきたい」と期待を寄せている。

札幌東病院の山﨑和正・循環器内科医長も「現代は患者さんが長生きする時代ですので、非常に良い治療法だと思います」と評価。一方で「生体弁にもいろいろな種類があります。弁の種類に合わせて最適な治療を考えたり、新たな生体弁を植込む位置を決めたり、細かい調整が必要です」と治療の難しさを強調する。

道内でTAVI実施施設は9施設あるが、そのうちTAVinSAVの実施施設は札幌東病院だけだ。このため同院の山崎誠治・副院長兼循環器内科部長は「外科的に大動脈弁置換術を受けた後、患者さんは地元に戻り、そこで循環器内科の専門医ではない医師がフォローすることもあります。もし弁の機能不全を起こした時に、TAVinSAVという治療法があることを知らなければ、救える命も救えなくなることがあります」と啓発の重要性をアピールする。

同院では道内の約1600施設にダイレクトメールを送り、同治療を紹介。道内全域の医療施設からの受け入れに応じている。山崎副院長は「道内唯一の実施施設として、責任をもって対応していきたいです」と意欲的だ。

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