2018年(平成30年)11月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1160 四面
茅ヶ崎病院が地域包括ケア病床開設
在宅復帰や急変対応に力
茅ヶ崎徳洲会病院(神奈川県)は地域包括ケア病床(8床)を開設した。同病床は急性期治療後の患者さんや在宅患者さんの急変時の受け入れに加え、急性期治療後、在宅復帰のためにリハビリテーションが必要な患者さんの入院受け入れなど幅広い役割をもち、できる限り住み慣れた地域での生活を支える“地域包括ケアシステム”の一角を担う。茅ヶ崎市内では唯一の開設。多職種が連携し、地域のニーズに即した病床運営に尽力していく考えだ。
市内で唯一のオープン
地域包括ケア病床には多職種がかかわる(右から2人目が由井主任、その左から能勢部長、阿部副室長)
茅ヶ崎病院は一般病床132床で、うち4階西病棟の8床(4床室を2部屋)を地域包括ケア病床として運用。同病床では医師や看護師、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカー(MSW)など多職種が連携し在宅復帰を支援している。開設の背景には地域の医療機関から、同病床での受け入れが適切と考えられる病態の患者さんの紹介が増えてきたことがある。
同院地域医療支援室の由井正樹主任(MSW)は「当院には、まず救急病院として搬送受け入れの機能が地域から期待されています。その一方で、リハビリを必要とする方で回復期リハビリテーション病棟への入院基準(疾患や発症からの期間)には合致しない患者さんや、在宅で人工呼吸療法を行っているような医療依存度の高い患者さんのレスパイト(介護者の一時休息)目的の入院など、急性期病棟や回復期リハビリ病棟のどちらも受けにくい患者さんを受け入れてほしいという地域の医療機関からのニーズが高まってきました。こうした声に応える形で地域包括ケア病床を開設しました」と経緯を話す。
地域包括ケア病棟(床)をもつ徳洲会病院
病院名 |
帯広徳洲会病院(北海道) |
近江草津徳洲会病院(滋賀県) |
瀬戸内徳洲会病院(鹿児島県) |
宮古島徳洲会病院(沖縄県) |
大隅鹿屋病院(鹿児島県) |
庄内余目病院(山形県) |
神戸徳洲会病院(兵庫県) |
茅ヶ崎徳洲会病院(神奈川県) |
(2018年11月時点)
日頃から看護師やMSW、リハビリスタッフが密にコミュニケーションを取っており、そうしたなかから地域包括ケア病床への入院や、同病床への一般病床からの転床が適切と考えられる患者さんの情報も共有。治療を終え状態が安定してきた一般病床に入院中の患者さんに関しては、患者さん・家族の希望をふまえ、主治医の判断の下、退院後そのまま自宅に帰れる患者さん、リハビリや経過観察などのために地域包括ケア病床での治療継続が望ましい患者さんの見極めを行っている。
「茅ヶ崎市でも高齢独居の方や老々介護の方々が増えています。こうした方々のかかりつけ医となっている診療所の先生方にも、患者さんが肺炎や脱水などで入院が必要になった場合、ぜひ活用していただきたいと考えています」(由井主任)
取材で訪れた日は6人の患者さんが入院していた。褥瘡(じょくそう)治療のために入院した70歳台女性患者さんは、廃用症候群(長期におよぶ安静状態による心身機能の低下)予防のためにリハビリを希望して入院。また、大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)骨折で手術を行った80歳台女性患者さんなどが入院。この患者さんは骨折の治癒に時間がかかり、回復期リハビリ病床に入院する時期は逃してしまったが、ADL(日常生活動作)向上のためにリハビリ目的で入院した。
積極的なリハビリで在宅復帰を目指す
「在宅復帰を目的とした病床ですので、患者さんのリハビリに対するモチベーションは高い。実生活に即したリハビリに力を入れています」と話すのは、リハビリテーション室の阿部勤副室長と同病床専従の八木聖菜・理学療法士(PT)だ。
現状では、一般病床での検査や治療を経てから地域包括ケア病床に転床する患者さんのほうが、はじめから地域包括ケア病床に入院する患者さんよりも割合は多いという。状態が落ち着いているとはいえ、いつ急変するともわからない高齢患者さんの場合、慎重にならざるを得ないためだ。
能勢賴人・泌尿器科部長兼ER(救急外来)部長は「入院期間の短い急性期病床では十分に術後のリハビリや療養を行うことが難しいことがあります。地域包括ケア病床があることで、今まで以上にしっかりと治療後のフォローができるようになったと感じます」と病床開設の手応えを示す。
由井主任は「『この病院・病床があったおかげで自宅に帰ることができました』と言ってもらえるよう、スタッフ一同、患者さんをサポートしていきたいです。地域の方々が住み慣れた土地で長く暮らしていけるよう、地域密着型の病院として今後も貢献していきたい」と抱負を語っている。