徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)8月6日 月曜日 徳洲新聞 NO.1145 三面

落谷・国立がん研究センター
研究所プロジェクトリーダー
液体生検で早期発見

国立がん研究センター研究所分子細胞治療研究分野の落谷孝広プロジェクトリーダーは7月度の徳洲会医療経営戦略セミナーで「リキッドバイオプシーによるがんの早期発見 体液マイクロRNA測定技術基盤開発 血液1滴から13種がん診断、実用化へ」をテーマに講演した。会場では先端技術の一端に触れ、興味深そうに聴講する院長らの姿が見られた。

がん13種を血液1滴用い診断

「実用化したら、多くの患者さんのがんの早期発見に役立てていただきたい」と落谷プロジェクトリーダー 「実用化したら、多くの患者さんのがんの早期発見に役立てていただきたい」と落谷プロジェクトリーダー

リキッドバイオプシー(液体生検)は、血液など少量の体液を調べることで疾患を早期発見する技術。国立がん研究センターは血液の血清中に含まれるマイクロRNAという核酸の一種を調べることで、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵(すい)臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱(ぼうこう)がん、乳がん、肉腫、神経膠腫(こうしゅ)の13種類のがんを早期発見できる技術の研究開発に取り組んでいる。落谷プロジェクトリーダーは概要や開発の最新の進捗状況などを紹介した。

「ヒトのマイクロRNAは全部で約2600種類あり、がんになると、がん種ごとに特定のマイクロRNAが血液中で増加します。それらを調べることで、高い感度(陽性を正しく陽性と判定する確率)と特異度(陰性を正しく陰性と判定する確率)で早期発見が可能になります」

すでに多数の腫瘍マーカーが知られているが、従来のマーカーは、がん細胞の死滅にともない偶然、血液中に放出される物質であるため、徐々に、がん細胞が増殖する初期の段階では検出が困難、早期診断に使うことができないという。一方、マイクロRNAは、がん細胞が体内で生き延びるために発生初期から積極的に分泌している物質であることなどから、早期の検出が可能だという。

同センターはがんの死亡率改善と医療費削減を目的として、2014年以降、経済産業省の外郭団体である国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発プロジェクト「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」に取り組んできた。同センターや国立長寿医療研究センターのバイオバンクに保管されている検体を活用し、民間企業などとともに研究を推進。

同プロジェクトでは300マイクロリットル(μℓ 、1μℓ=100万分の1L)の血清からマイクロRNAを精製。がん種ごとに感度と特異度が最も高くなるように、マーカーとして最適な組み合わせとなる複数のマイクロRNAを選定し検証作業を行った。この結果、ほとんどのがん種に対し感度95%以上という高精度を実現した。

「探索研究を終え昨年から前向き臨床研究を開始しています。その後、臨床性能試験や多施設での臨床試験を経て、体外診断薬として厚生労働省に承認申請を行い、がん検診などでの試験的運用を行う計画です」と展望。

また、マイクロRNAを用いたリキッドバイオプシーの技術は、がんの早期発見だけでなく、治療効果の予測や新規薬剤の開発などに応用も期待できるとの考えを示した。このほか、がん細胞が積極的に分泌するエクソソームと呼ばれる細胞外小胞に言及、がんが転移する仕組みなどを解説した。

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