徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

竹内 信一(たけうちしんいち)(館山病院院長(千葉県))

直言 生命いのちだけは平等だ~

竹内 信一(たけうちしんいち)

館山病院院長(千葉県)

2018年(平成30年)8月6日 月曜日 徳洲新聞 NO.1145

地域のニーズにどれだけ役立てるかが
新築移転が決まった当院の大きな課題
職員全体で病院のあり方を考えていく

地域の多くの方々から「いつ新しくなるのか」と聞かれていた館山病院の新築移転先が決まりました。旧・防衛施設庁の国有地跡で、現病院から1.5㎞、館山駅から1.2㎞離れた場所です。今後、近隣には館山警察署や館山市役所など行政機関が集約されることになります。

当院は1891(明治24)年に開設。現在、病床数208床で展開しています。地域の方々から市民病院的な存在として支持されるなか、関東大震災で倒壊したり、新築・改築を重ねたりしてきました。今回の新築移転にあたり、館山市長や市の幹部と面談を重ね、館山青年会議所からは「市民の皆さんを巻き込み、新築移転の有効性を訴えるべきです」との指摘を受けました。そこで当院の加藤尚子・看護部長らが「新病院の建設に向けて」と題するプレゼンテーション資料を作成し、市や近隣の住民の方々にアピールしてきました。

温暖で風光明媚な当地の環境を生かした医療提供

市は地域包括ケアシステムの強化を推進しています。私が院長に就任した2012年、市の高齢化率は31.5%でしたが、今年2月には38.0%に増加、地区によっては50%を超えています。さらに、ひとり暮らしの高齢者が増加傾向にあり、市が訴える「孤立ゼロを目指す」は切実な問題です。いわゆる「2025年問題」を迎える以前に、老老介護や独居の問題を何とかしなければなりません。

新病院の敷地は約5000坪で、現病院から約1000坪広くなります。そこで、50床規模の介護老人保健施設を院内につくることも考えています。元気な高齢者を増やすことも、私たちの仕事です。

当院の昨年度の外来患者数は1日当たり平均186人、救急件数は月平均32件、入院患者数は1日当たり平均166人、新入院患者数は月平均90人、手術件数は月平均4件です。病院の建て直しは重要ですが、それが地域の活性化につながることも問われています。

以前から、隣接する南房総市の白浜海岸の旅館から人間ドックのタイアップを提案されています。豊かな自然と共存する療養環境は、まさにメディカルペニンシュラ(半島の病院)にふさわしく、外国の方をお迎えするには理想的な環境です。現在、中国人看護師が10人在籍しているため、とくに中国から来ていただきやすくなっています。

もちろん、地域の方々のニーズに十分に応えるのが基本です。私が目指しているのは、亜急性期、回復期、慢性期の病棟を併設したケアミックス病院です。

館山市は「海と花のまち」で知られていますが、温暖で風光明媚(ふうこうめいび)な恵まれた地の利を生かした医療・療養環境を提供していきたいと考えています。

病院の方向性は変えずさらに夢を広げていく

新築移転予定地の近くにはスーパーがあり、生活基盤が整っています。患者さんの生活を考えれば、こうした環境も不可欠です。新病院はコミュニティスペースを地域と連携し整えていきます。都市部志向が潮流ですが、私は医療の原点に戻って患者さんと接していきたいのです。新しければ良いという考えは、もち合わせていません。

徳洲会は大組織になりましたが、〝生命だけは平等だ〟という理念は変わりません。病院の方向性は変えず、人を育てる組織にしていくなど、さらに夢を広げていきたいと思います。理念を共有し、職員全体で病院のあり方を考えていきます。

患者さんへの一貫した治療は、病院食にまで至ります。また、患者さんに早くふだんの生活に戻っていただくには、リハビリテーションだけでなく、訪問介護など在宅でのフォローも重視する必要があります。

新築移転しても、使える従前からの医療機器は使う姿勢でいます。分相応の医療です。内視鏡下手術支援ロボット「ダヴィンチ」を入れる病院が増えていますが、当地域のニーズを考えると、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断)があれば、拠点病院の役割を果たせると考えます。

地域医療では地域の病院や診療所と共存していかなければなりません。当院は安房医師会に所属し、地域の医療機関との連携もスムーズに運んでいます。また行政との関係も順調です。地域にとって当院が、どれだけお役に立てるかが、今後の大きな課題となるでしょう。

皆で頑張りましょう。

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