徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)8月6日 月曜日 徳洲新聞 NO.1145 一面

日韓TRIセミが有終の美
齋藤・札幌東徳洲会 病院循環器センター長
初開催から11年

札幌東徳洲会病院は講堂で日韓TRIセミナーを開いた。齋藤滋・循環器センター長が2007年から年1回実施しているイベントで、TRI(経橈骨(とうこつ)動脈冠動脈インターベンション) の普及が目的。12回目の今回は韓国から医師14人が参加し、ライブを中心にTRIを学んだ。徳洲会グループ外の日本の医師も座長などで参加。修了式では、齋藤センター長がセミナーの開催を今回で最後にすることを明かし、関係者に謝意を示した。参加者からは惜しむ声が多く上がっていた。

「一定の役割をまっとう」

最終回も韓国から14人の医師が参加(前列左から4人目が齋藤センター長、その右がラー医師) 最終回も韓国から14人の医師が参加(前列左から4人目が齋藤センター長、その右がラー医師)

TRIは虚血性心疾患など冠動脈疾患に対するPCI(経皮的冠動脈形成術。カテーテル用いて血管を広げ、血流を改善する治療)のアプローチ法のひとつ。橈骨動脈という手首の細い血管に穿刺(せんし)し、カテーテルを挿入する。従来、穿刺部位は大腿(だいたい)(太もも)動脈から行われていたが、血管が太いために出血が多く入院が長引くデメリットがあった。一方、TRIは使用できるカテーテルの太さが限られるものの、出血が少ない。患者さんは手術当日に帰宅することも可能だ。

齋藤センター長は1995年に海外で目にしたTRIに衝撃を受け、「体の小さい日本人にもできる」と帰国後、同アプローチ法を導入。近年は、さらに人差し指と親指の間の血管から穿刺する独自の方法も行っている。

実際に治療する様子を中継 実際に治療する様子を中継

そのTRIの普及を狙い、齋藤センター長が2007年から開始したのが日韓TRIセミナー。韓国の医師が札幌東病院を訪れ、実際に齋藤センター長がTRIを行う様子を見て学ぶ。徳洲会グループ内外の日本の医師も参加し、交流を深めるのも目的のひとつだ。

今回は「Why Not TRI for Complex PCI(複雑病変に対するPCIで、なぜTRIを用いないのか)」をメインテーマに、韓国から年代や経験も異なる循環器科医師14人を含む計30人が参加した。

齋藤センター長による挨拶の後、講堂とカテーテル室を回線でつなぎ、齋藤センター長が実際にTRIを行う様子を中継。参加者は使用するカテーテルの選び方など解説を聞きながら見入っていた。その後、韓国の医師がそれぞれ自国で経験した症例を提示し、参加者同士で議論した。当初、ライブと症例提示を4例予定していたが、早く終了したため、急遽、ライブを1例追加した。

すべてのプログラム終了後、修了式を行い、齋藤センター長自ら参加者一人ひとりと握手を交わし修了証を授与。その後、今回で同セミナーを最後にすることを明かし、あらためて関係者に感謝の意を述べた。

修了証を一人ひとりに渡す齋藤センター長 修了証を一人ひとりに渡す齋藤センター長

唯一、第1回から欠かさず参加しているラー・スンウン医師は「TRIをトレーニングしようと齋藤先生から提案いただき、セミナーが始まりました。当時は私を含め多くの医師が初心者でしたが、今ではTRIは韓国で多く用いられる手技のひとつになりました」と説明。自らも「現在はTRIを選択することが多い」とし、理由について患者さんの安全性を強調した。ラー医師は「とても感謝していますし、TRIのパイオニアとして大変尊敬しています」と齋藤センター長への思いを吐露。「今回でセミナーが最後になるのは、個人的にも韓国のほかの医師にとっても残念。韓国の医師だけでなく、意見交換などを通じ日本の医師にとってもメリットがあると感じていましたし、友好の意味でも素晴らしい取り組みでした」と惜しんだ。

出口で一人ひとりを見送った齋藤センター長は「ひとりができても救える命は限られていますが、何十万という医師ができるようになれば何億人という人が助かります」と、あらためて普及のための活動の意義をアピール。続けて「ただし、それを可能にするには卓越したテクノロジーや発想をもち、時には冒険しながら前に進むことが必要」と、今後も新たなことに挑戦する意欲を見せた。

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