2017年(平成29年)10月9日 月曜日 徳洲新聞 NO.1103 四面
読み解く・読み得
“紙上医療講演” ⑨
高齢者と家族の心構え
今回は「2025年問題」を目前に控えた今だからこそ送る救急医からのメッセージ。25年は団塊の世代が75歳以上になり、日本人の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になります。25年を迎えるにあたり、高齢の方やその家族はどんな心構えをもち、どんな準備をしておけばよいのか、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の山上浩・救急総合診療科部長が解説します。
山上浩・湘南鎌倉病院 救急総合診療科部長
高齢の方の特徴としてけがをしやすい、病気になりやすい、複数の病気を抱えているなどがあります。高齢者が増えるとは、つまり亡くなる方も多くなるということ。年間の死亡者数は2040年にピークを迎え、現在の約1.7倍になると推計されています。
最期をどこで迎えるのかは大きな問題です。現在、病院で亡くなる方が約80%。一方、内閣府の調査によると、半数以上の方が「自宅」で最期を迎えたいと考えています。国も医療費削減のために病床数を減らし、自宅で療養することを推進しています。
しかし、在宅医療・介護は困難な場合もあります。その要因として挙げられるのが、①高齢独居や老老介護が増えている、②若年者の生涯未婚率上昇により介護の担い手が少なくなっている、③高齢者が「家族には迷惑をかけたくない」と思う―など。さらに介護職員の離職率上昇などにより、介護の担い手が足りないという状況もあります。
こうした時代を迎えるにあたり、なんでも相談できる大きな病院と訪問診療を実施しているクリニック(診療所)、ふたつの「かかりつけ医」をもつと心強いでしょう。
高齢者は病院にかかる機会が増え、緊急時には救急外来を受診することもあると思います。その時に必ず携帯しておいてほしいものが、3つあります。
ひとつは、今までにかかった病気の名前と、かかっている医療機関名をリストにしたメモ。これがあると確定診断、治療までの時間が格段に早くなります。続いて、常用している薬のリスト。患者さんのなかには当院で処方された薬だけを伝えれば良いと勘違いしている方もいますので、できれば「お薬手帳」を活用すると良いと思います。
最後に、家族の連絡先。リスクのある治療をする際には、必ず患者さん本人か家族の同意を得ないといけません。家族となかなか連絡が取れないと、それだけ治療が遅れることになってしまいます。
日常生活で気を付けてほしいのは、転ばないことです。高齢者は転ぶと骨折しやすく、骨折は要介護の大きな原因となります。布団や敷居などちょっとした段差でつまずく、トイレやお風呂の手すりをつかみ損ねる、雨の日のゴミ出しですべる、電球の交換で台から落ちるなど、転びやすい状況は極力避けましょう。
日頃から家族で「最期の迎え方」について話し合っておくことも大切です(図)。
死について考えることは、決して縁起が悪いことではありません。自分の死が近づいた時、どこまで医療行為を受けるか―人生の終末期は人によって解釈が違います。救急車で運ばれた時には、自分や大切な家族の生死のことをなかなか判断できないものです。死と向き合うことが、自分や家族の最期を穏やかなものにするでしょう。
体に不調がある時はもちろん、持病があり漠然とした不安を抱えている方も、いつでもかかりつけ医に相談してみてください。