徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2016年(平成28年)5月2日 月曜日 徳洲新聞 NO.1029 三面

日本静脈経腸栄養学会学術集会
徳洲会から23演題
臨床栄養リスクマネジメント

第31回日本静脈経腸栄養学会学術集会が2日間にわたり福岡県で行われた。メインテーマは「臨床栄養におけるリスクマネジメント―臨床栄養の質の向上による各種疾病のリスクマネジメントを目指して―」。徳洲会グループの病院は23演題(ポスター発表含む)を発表した。シンポジウムと要望演題での発表を紹介する。

シンポジウム

CPかアルギニンか

伊藤雅子・管理栄養士 喜界徳洲会病院(鹿児島県) 伊藤雅子・管理栄養士 喜界徳洲会病院(鹿児島県)

「栄養療法におけるディバイス管理上のリスクマネジメント- ディベート編-」で発表した。同セッションは5つのテーマをもとに演者がチームAとチームBに分かれ議論。最初にそれぞれプレゼンテーションを行い、互いに質問・反論しながら議論を展開する形式だ。全テーマ終了後に会場の参加者が、どちらのチームを全体的に支持するか示すが、結果ではなく、エビデンスの探し方や論理展開を楽しむことを趣旨としている。また演者が発表する内容の立場を臨床で常に取っているとは限らない。

伊藤・管理栄養士は「高齢褥瘡(じょくそう)患者におけるアルギニン製剤投与の有用性:コラーゲン・ペプチド(CP)製剤vsアルギニン製剤」で登壇。近森病院の宮澤靖・栄養サポートセンター長と討論した。症例は80歳代の女性。家で転倒し大腿(だいたい)骨頚(けい)部骨折のため、大腿骨頭置換術を行ったが、術後5日目で褥瘡を発症、ステージⅢ。体重30㎏、BMI20.0、高血圧のため治療薬内服中。

伊藤・管理栄養士はCP製剤の投与を支持する側(チームA)に立ち、持論を展開した。根拠として、褥瘡の患者さんは代謝が促進されるため、通常の摂取基準量より多くの栄養素を必要とすることを挙げ、「食事だけでは摂りきれない微量元素を含み、通常の約3倍のビタミン類も含むCP製剤はバランス良くビタミンや微量元素を取り入れることができる」ことなどを示唆。このほか、自院の臨床の結果を示したり、論文を8本提示したりした。

宮澤センター長はアルギニン投与を支持する側(チームB)として、根拠にアルギニンが免疫機能を強化し、褥瘡治癒を促進するとされているとの報告があることなどを示した。

この考えに対し、伊藤・管理栄養士は「アルギニンにはコラーゲン生成や免疫力を高めるマクロファージの活性化、細胞の増殖・組織の修復等の働きがありますが、いずれも高齢によって、その能力は低下しているのではないか」と反論。

宮澤センター長はそのエビデンスがないことを指摘し、高齢者を対象としたアルギニンの研究で白血球の溶着化が誘導されたり、抗腫瘍作用が上昇したりしていることを披露し、「これらを考えるとアルギニンの効果は納得してもらえるのでは」と返した。

また褥瘡の創部を治すという点ではCPとアルギニンは同等と考えられるものの、「それ以外の付加価値」として、血管拡張作用などにより血糖上昇抑制などの観点からアルギニンの有用性を強調した。

5テーマ終了後、最終的にチームBが参加者の支持を集めた。

要望演題

肝疾患とサルコペニア

櫻井聖子・栄養管理センター主任 湘南鎌倉総合病院(神奈川県) 櫻井聖子・栄養管理センター主任 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)

「肝硬変患者においての筋力の検討/骨格筋量の検討」肝硬変の進展にともなうサルコペニア(筋肉量の低下により、筋力や身体能力が低下した状態)に関する報告が少ないことから、慢性肝疾患における筋力・骨格筋量を検討した。対象は2015年に自院および関連施設の慢性肝疾患患者さん。身体所見や血液検査、画像診断、肝生検などを行い、慢性肝炎、代償性(肝機能が保たれている)肝炎、非代償性肝炎に区分・分析した。

櫻井主任は慢性肝疾患の進行にともない、男女ともに筋力・筋肉量の低下が認められたことを報告。さらに肝疾患進行例では25%程度にサルコペニアが見られ、予後不良であることを示し「今後は筋力・筋肉量を測定することで早期介入する必要性があります」と締めくくった。

発表後、「筋力と筋量の低下の値に差異が見られましたが、どちらが大事であると考えますか」との質問が寄せられ、櫻井主任は「BIA(体組成計で用いる方法)で測定する場合、むくみなども筋肉量として測定されるため、両方測定すべきと考えます」と答えた。

転院先の食事形態統一を

内山絵里・栄養科主任 札幌東徳洲会病院 内山絵里・栄養科主任 札幌東徳洲会病院

「嚥下(えんげ)調整食の改良前後における肺炎患者の動向」同院は2014年8月に嚥下調整食の内容を変更した。嚥下食の食数は増加し、経腸栄養使用の患者数は減少傾向が見られたことから、内山・管理栄養士は変更前後の入院日数や静脈栄養の使用日数、経腸栄養の日数、転帰など10項目について変化を調査した。対象は13年8月~15年9月に肺炎で入院し、嚥下食から食事を開始した患者さん。

調査の結果、嚥下食の内容を変更した後は、入院日数の長期化、食形態の早期改善が見られた。これらをふまえ内山・管理栄養士は「食形態の改善が早期にできたため転院先の幅を広げられるようになりましたが、なかには嚥下食に対応していない施設もあり、円滑に退院できず、入院期間が長期化していると考えられます」と指摘。

今後は、食形態の早期改善と早期退院が実現できるように、転院先と食事形態を統一していく必要性などを示唆した。さらに自宅退院も視野に入れ、嚥下食の調理方法や介護食品の購入場所などに関する家族向けの教育ツールを充実させる必要性も説いた。

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