2020年(令和2年)4月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1233 三面
プレハブ建設などで臨時ベッド
徳洲会病院 倉庫を活用し感染隔離病棟も
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は新型コロナウイルス対応の一環で、敷地内に臨時の受け入れベッドを設置、4月23日に運用を開始した。患者さんの動線を分け、院内感染を防ぐのが狙い。プレハブの建物に擬似症(新型コロナウイルス感染症が強く疑われる)を含む患者さんを最大31人受け入れることが可能。ただし、同ベッドは5月中に神奈川県が同院近隣に新設する仮設病床に移行する。同院は院内で行っていた発熱外来も敷地内にプレハブ専用スペースを設け、22日に診療をスタート。
「患者さんや職員を守る」
湘南鎌倉病院が敷地内に設けた臨時の受け入れベッドは31床。陽性患者さんのための個室(11床)とHCUタイプの多床室(15床)、擬似症患者さんのための個室(5床)からなり、扉を設けエリアを区分している。全体が見渡せる場所にスタッフステーションを構え、日中は医師1人と看護師4人、夜間は医師1人と看護師3人が常駐。看護師はいずれも同院の感染管理認定看護師の教育を受けている。4月22日夕方に最終的な準備を整え、翌23日に診療を開始した。
当初は独自の取り組みを考えていたが、神奈川県が同院の敷地に隣接する湘南ヘルスイノベーションパークに仮設病床を新設する構想が浮上。県と協議を重ねた結果、同仮設病床の設計・建築と運用を湘南鎌倉病院が県から受託し、180床で5月から段階的に稼働することとなった。同院の31床も含まれているため、臨時の受け入れベッドは6月頃に同仮設病床に移行する。
「新型コロナ感染症患者さんへの対応を物理的に分けることで、院内感染の発生リスクを低減できます。同感染症以外の患者さんも安心して当院を受診していただける環境が整いました」(芦原教之事務長)
湘南鎌倉病院が設けた臨時の受け入れベッド(写真はHCU タイプ)
野崎病院は感染隔離病棟へのアプローチを厳重にするなど感染予防を徹底
同院以外にも、徳洲会グループでは千葉西総合病院と宇治徳洲会病院(京都府)が現在、プレハブの臨時受け入れベッドの設置を検討しているという。
また、野崎徳洲会病院(大阪府)は増床を見越して確保していた病棟スペースを生かし、新型コロナウイルス感染症患者さんに対応。今まで倉庫として活用していたが、府や地域の保健所の要請を受け感染隔離病棟として開棟した。病床数は個室(6床)と4人部屋(32床)の計38床。看護師8人を配置し、中川秀光院長をはじめ各診療科の医師がローテーションで診療にあたっている。
同病棟に通じる非常階段の使用禁止や二重扉の設置、清潔・不潔ゾーンの区分け、一般患者さんと異なる動線計画、同病棟看護師に対する週1回のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査など、院内感染の予防を徹底。木下美智子・看護部長は「新型コロナウイルス感染症患者さんに対応実績がある葉山ハートセンター(神奈川県)の協力を得るなど準備を進め、3月24日に稼働しました。私自身、夜勤に入るなど慎重に慎重を重ねて対応しています」。
「いかに断らず安心・安全な医療できるか」
仮設発熱外来の診療イメージ
また、湘南鎌倉病院は従来、ER(救急外来)の一角で行っていた発熱外来を敷地内にプレハブを設け、独立したスペースで実施。プレハブは最大70人程度が過ごせる待合と診察室3室に加え、X線検査装置も完備している。診察室の医師と患者さんの間には透明なアクリル板を設置したり、建物の片側だけに換気扇を配置して空気の流れを一定の方向にしたりするなど、建物内は感染防止に十分配慮。
「当院の他診療科や医師会の先生方のご協力を得て運用します。院内感染を防ぐことはもちろんですが、患者さんが安心して診察が受けられる良い環境です」と山上浩・救命救急センター長。発熱外来は4月22日午後に診療を開始した。
これらの取り組みについて、篠崎伸明院長は「徳洲会の理念を追求した結果」と語気を強め、「いかに断らず安心・安全な医療を実践できるか考えた末の結論です。当院が地域の拠点病院として機能するには、患者さんや職員を守り、地域の医師会・病院会と協力することが不可欠。予断を許さない状況が続くと思いますが、当院が“最後の砦とりで”となる覚悟で、今後も取り組んでいきます」。