徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)5月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1186 一面

吉本・武蔵野病院部長が
ESDのデバイスで論文

武蔵野徳洲会病院(東京都)の吉本泰治・消化器内科部長は、胃がんや大腸がんなどに対する内視鏡手術であるESD(内視鏡的粘膜下層剝離(はくり)術)を、より迅速かつ正確に行えるネラトンアタッチメントというデバイス(器具)を考案。これをテーマに原著論文を執筆し、ドイツに本社を置くThieme(シーム)社が発行する『Endoscopy International Open(EIO)』という英文の世界的なオープンジャーナル(誰もが無料でアクセスできるオンラインジャーナル)への掲載が決まった。使用群と非使用群を後ろ向きに比較検討し、有意に手術時間が短いことを明らかにした。

ネラトンアタッチメント考案

「武蔵野病院の消化器内科を盛り上げていきたい」と吉本部長 「武蔵野病院の消化器内科を盛り上げていきたい」と吉本部長

論文タイトルは『Usefulness of “Nelaton Attachment” for colorectal endoscopic submucosal dissection of colorectal neoplasms』(大腸がんESDに対するネラトンアタッチメントの有用性)。2018年にも『Digestive Endoscopy(DEN)』(7月号)に論文を発表している。

ネラトンアタッチメントは、ネラトンカテーテルという既存の尿道カテーテル(医療用の管)を10cmの長さに切り、縦に切れ込みを入れたもの。ESDに用いるフラッシュナイフなど電気メスのシース(外側の被覆部)にかぶせることにより、左手で内視鏡操作部を持ちながら同時に人差し指と中指でシースをはさみ、右手に持ったスコープの動きに合わせた出し入れを容易に行えるようになる。

「シースは直径2.2mmと細いうえに、濡れるととても滑りやすいため、片手で操作部とシースの両方を操るのが難しく、右手からスコープを離すことがしばしばありました。すると視野がずれ時間のロスにつながっていました」(吉本部長)

ネラトンアタッチメントをシースに装着すると滑らず操作が容易に ネラトンアタッチメントをシースに装着すると滑らず操作が容易に

質感や太さなどを確かめながら検討を重ね、ネラトンカテーテルが最適な材料であることを発見。17年にネラトンアタッチメントを考案、院内の倫理審査委員会の承認を得て使用してきた。シース径が3.3mmに拡大、ポリ塩化ビニルを材料とし、濡れた状態でも指が滑りにくくなる。右手をスコープから離さず、視野を維持したまま剝離操作を継続できる。これまで食道、胃、大腸を合わせて約40症例に使用した。

論文では使用群22例、非使用群15例を比較。腫瘍サイズは各々20mm前後ながら、手術時間の中央値は使用群38分と、非使用群75分のほぼ半分だった。

吉本部長は今年4月に岸和田徳洲会病院(大阪府)から武蔵野病院に異動。「岸和田病院に4年間勤務し、離島応援などを通じて内視鏡の技術だけでなく人間的にも成長できました。また超音波内視鏡(EUS)など高度な技術を習得するため、勤務しながら和歌山県立医科大学に3カ月間の国内留学に行かせていただいたことも感謝しています。今まで培ってきた技術を生かし、当院の消化器内科を盛り上げていきたい」と意気軒高だ。成田富里徳洲会病院(千葉県)の応援診療にも取り組んでおり、今後も継続していく考えだ。

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