徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)10月8日 月曜日 徳洲新聞 NO.1154 三面

腎移植 QOLが大幅改善
田邉・東京女子医大病院院長兼主任教授
診療にAI活用計画

東京女子医科大学病院の田邉一成・院長兼泌尿器科主任教授は9月度の徳洲会医療経営戦略セミナーで「腎移植の最前線とAIホスピタル」をテーマに講演を行った。同院は年間約230件の腎移植を行う日本で最も症例数の多い施設で、田邉院長自身、これまで多数の腎移植術を手がけてきた。腎移植の実際や成績向上の要因などに加え、同院が医療へのAI(人工知能)活用を推進する方針であることから、AI医療の展望なども語った。

「腎移植の成績は飛躍的に向上」と田邉院長 「腎移植の成績は飛躍的に向上」と田邉院長

腎機能が低下し慢性腎不全の状態になると、患者さんは腎代替療法を行う必要がある。腎移植は人工透析と並ぶ同療法のひとつだ。田邉院長は冒頭、透析医療や腎移植の現状を紹介した。慢性透析患者数は年々増加し30万人を超えており、透析導入の平均年齢は68歳(2014年12月時点)と高齢化が進展していることを指摘。

「透析導入の主要原疾患は、30年ほど前は慢性糸球体腎炎が最多でしたが、治療法が進歩して減少、その後は糖尿病性腎症が最も多くなっています。さらに近年は徐々に腎硬化症も増えています。一方、生体腎移植と献腎移植(心停止・脳死)を合わせた腎移植件数は諸外国と比べ伸びておらず、年間約1600件というのが現状です」

東京女子医大病院の腎移植の成績にも言及。移植から10年経過後のレシピエント(臓器受給者)の生存率は生体腎移植で95%、献腎移植は90%となっており、「生存率、生着率(移植した腎臓が機能している割合)ともに以前と比べ飛躍的に向上しました」と話す。

成績向上の要因として、免疫抑制剤の進歩、拒絶反応の克服、感染症の克服、内科合併症の管理技術の向上、IgA腎症など再発性疾患の予防・治療――を挙げた。

続いて田邉院長は、ドナー(臓器提供者)とレシピエントの双方に行っている検査や面談など腎移植実施のための準備や術式に加え、膀胱(ぼうこう)欠損に対する膀胱拡大術を移植前に実施した困難症例などを紹介。「人工透析を受けていた女性でしたが、膀胱拡大術と腎移植を行った後、結婚・出産するなど、患者さん本人にとってのQOL(生活の質)が大きく改善しました」と症例を振り返った。

また、ドナーとレシピエントのABO血液型の適合群と不適合群で治療成績を比較した研究成果をふまえ、「血液型が異なっていても、適合群と遜色(そんしょく)ない成績を得ています」と解説。高齢者の腎移植にも触れ、「高齢のレシピエントも腎移植を受けたほうが生存率はよく、期待予後が1.8年以上ある場合は腎移植を受けることが望ましいと考えます」とまとめた。

この後、話題をAIに移し、医療分野での応用例として①画像分類、②トリアージ(治療優先順位決定)、③医療機器データの解析と制御、④がんの個別化医療への応用、⑤患者分類(患者さんの状態の逐次的な変化の予測など)、⑥医療行為の分類(治療法・処置の選択など)――などを列挙。

田邉院長によると、米国FDA(食品医薬品局)はすでに皮膚画像からのメラノーマ(悪性黒色腫)の診断、脳CT(コンピュータ断層撮影)画像からの脳梗塞の診断、手首のX線透視画像からの骨折の診断、糖尿病性網膜症の診断に関し、医師の介入なしにAIによるスクリーニング診断を認可しているという。

田邉院長は、産学官が連携し今後、“AIホスピタル”のモデル病院を目指すことを明かした。腎移植患者さんの診断や治療にもAIを積極的に活用する計画だ。

「複雑な診断、治療過程をAIにより解析し、ビッグデータを用いることで、最も適切な診断と治療法を提供することができます」と期待をあらわにした。

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