徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)8月20日 月曜日 徳洲新聞 NO.1147 三面

第5回日本重度四肢外傷シンポ
標準治療を見据える
湘南鎌倉総合病院
土田センター長が世話人

第5回日本重度四肢外傷シンポジウム(JSETS)が7月21日から2日間、都内で開催された。大会テーマは「標準化への道、今」。世話人は土田芳彦・湘南鎌倉総合病院(神奈川県)兼湘南厚木病院(同)外傷センター長。参加者は重度四肢外傷での機能再建治療の標準化を見据え、技術の共有と研鑽に努めた。

「患者さんは実験台ではありません」と土田センター長 「患者さんは実験台ではありません」と土田センター長

交通事故等による開放骨折、軟部組織欠損といった重度四肢外傷は何よりも救命が重要だが、患者さんのQOL(生活の質)を考えれば、適切な血行再建、創管理、骨再建、軟部再建などが必要で、治療は困難を極める。

同シンポは土田センター長の呼びかけで始まり、重度四肢外傷治療の標準化と不足する外傷整形外科医の育成が目的。今回も徳洲会病院の医師らが存在感を示しつつ、忌憚(きたん)のない意見交換で治療標準化に向け検証・共有を図った。

治療標準化にあたり、病態の範囲が広くてわかりにくいと言われる解放骨折の重症度分類であるGustilo3Bをより理解するために土田センター長が2016年に提唱したのが「土田分類」。これは3Bをさらにグループ1~4に分類したものだ。

「土田分類」の有効性を説明する二村医長 「土田分類」の有効性を説明する二村医長

湘南鎌倉病院の二村謙太郎・外傷センター医長はトピックレクチャーで同分類のグループ1~4の定義と特徴を解説。さらに同分類の汎用性を調査し、再建外科医、骨接合専門医、非専門医の検者間一致率で大きな差異が見られなかったことから「土田分類は専門や経験によらず通用します。3Bをより理解して治療に生かすという点で有効な分類です」と結論付けた。

札幌徳洲会病院の辻英樹・副院長兼外傷センター部長はトピックレクチャーで「外傷皮弁成功のカギ! レシピエント血管を見極める」をテーマに講演。重度四肢外傷治療では、欠損した軟部組織を再建するための遊離皮弁(血管を一度切り離し欠損部に移動して血管吻合(ふんごう)する手技)の成否が重要となるが、ポイントとして「レシピエント(吻合を受ける)血管をきちんと選ぶことが重要」と強調した。

辻副院長は外傷皮弁を成功させるためのポイントを解説 辻副院長は外傷皮弁を成功させるためのポイントを解説

一方、問題として、術中にレシピエント血管から血が流れてこないという攣縮(れんしゅく)(IS)が起こり得るとし、14年までの過去7年間のデータからその原因を分析。「ISに遭遇したらレシピエント血管の部位を変更するなど工夫が必要」など対処法をアドバイスした。そのうえで15年以降、同院のIS発症率が劇的に低下したことを紹介し、同対処法の有効性を裏付けた。

シンポジウム「遊離皮弁後のトラブル! Revisionの今」では、札幌病院の松井裕帝・外傷センター部長がシンポジストとして登壇。遊離皮弁後、たとえば血流が悪いことにより移植組織が壊死(えし)を起こすなどトラブルを回避するために、「確定的なデブリドマン(完全な汚染除去)、損傷の状態の確認など手術前の綿密な計画が非常に大事」と強調。「最初のプランで多くはうまくいくが、再建術にはトラブルが付きもの。まさかの時のプランBの用意も必要です」と提言した。

「人生を懸けるに足る」

今回のハイライトは特別企画「私が真逆の立場になったら」。これは対立するふたつの方法に対し、それぞれの方法のスペシャリストが立場を変え長所をプレゼンし、どちらの方法が良いかをフロアに判断してもらうという企画だ。

「Fix & Flap コラボ治療? 一貫治療?」のテーマでは、骨接合と同時期に皮弁形成術を行うFix & Flap を整形外科医と形成外科医のコラボチームで行うか、外傷整形外科医が皮弁形成の技術を磨いて単独で行うかという設定で勝負。外傷治療のスペシャリストである土田センター長は真逆の立場である「コラボ治療」側に回りプレゼンしたが、フロアの投票結果では「一貫治療」が圧勝した。

2日目のエンディングレクチャーで登壇した土田センター長は「私の本音は、重度四肢外傷で確実に良い治療結果を得るためには、一貫治療できる医師を育てること」と強調。外傷整形外科医が真の重度四肢外傷治療の専門医になるためには「血管吻合は呼吸と同じ。夜なべすれば1日で習得できる」、「切断指再接合術を自分のものにする」、「患者さんは実験台でない。1回で成功させる」など技術的なアドバイスと心構えを示した。

最後に「この道は容易ではありませんが、人生を懸けるに足る仕事です。求め続ければ習得のためのチャンスは訪れます。それを一度でものにするために、日頃の準備を怠らないでください」とエールを送った。

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