2018年(平成30年)8月20日 月曜日 徳洲新聞 NO.1147 四面
岸和田徳洲会病院
心外術後の栄養指導推進
入院中・退院後サポート充実
心臓血管外科領域に関して日本有数の手術症例数をもつ岸和田徳洲会病院(大阪府)は、術後の栄養指導に注力している。侵襲の大きい心外手術を受けた患者さんの術後の体力回復に果たす栄養管理の役割は大きく、適切な栄養摂取を実践することで、塩分の摂りすぎによる高血圧など心臓への負担増を未然に防ぐのが狙いだ。入院中から退院後まで管理栄養士の栄養指導を通じ、心外患者さんの術後の予後(病状に関する医学的な見とおし)改善に努めている。
個別指導や集団教室など実施
「栄養指導を通じ術後の患者さんの適切な栄養管理に貢献していきたい」と畑副主任
心臓血管外科手術は主に①冠動脈バイパス術、②弁膜症手術、③胸部大動脈瘤手術がある。岸和田病院はそれぞれ多数の手術実績があり、『手術数でわかる いい病院2018』(朝日新聞出版刊)によると、心外手術のランキングで全国6位の実績だ。同ランキングは成人の心臓、胸部大血管に対する16年の手術総数をもとに作成。
加えて、冠動脈バイパス術のうち約半数は、弁形成術や大動脈の手術などを同時に施行する複合手術が占めるなど、より高度な治療に積極的に取り組んでいる。
同院では心臓血管外科の手術を受けるために入院した患者さんに対し、術前に個別栄養指導を行い、術後には集団栄養指導と2回目の個別指導を行うなど、きめ細かい栄養指導を実施。さらに退院後も外来で栄養指導を継続、そのなかで集団栄養教室を開催するなど適切な栄養摂取をサポートしている。
術前に一人ひとりの患者さんに対し個別に行う栄養指導では、病院食への理解を促進したり、スムーズに食事摂取ができるように患者さんの摂食・嚥下機能に応じた食形態の調整を行ったりしている。術後は、退院が視野に入ってきた患者さんに栄養指導を実施。
入院中の心外患者さんに実施する集団栄養指導
「集団栄養教室は心臓血管外科病棟のデイルームで、1回5人前後の患者さんを集め行っています。あまり人数が多いと一人ひとりの患者さんからの質問への対応が難しくなるためです。隔週で木曜日に開いており、患者さんのご家族に同席していただく場合もあります。テーブルを囲み昼食を摂りながら、和気あいあいとした雰囲気のなか、管理栄養士が前に立ってホワイトボードに説明用の資料を添付し、退院後の食事などに関しアドバイスを伝えています」と同院の徳永祐子・栄養科室長(管理栄養士)は説明する。
対象となる患者さんは、心外病棟のカンファレンス(検討会議)でスクリーニング(選定)を行っている。理学療法士(PT)による心臓リハビリテーションの介入が始まった患者さんや、心電図モニターから離脱し自力で移動できる患者さんなどだ。
「心臓血管外科のすべての入院患者さんにPTが介入しており、PTが一人ひとりの状態を細かく把握しています。管理栄養士はPTと密接に情報共有し、栄養指導の介入のタイミングの参考にしています。患者さんの主治医からのオーダー(処置や検査、投薬などの指示)に基づき、実際に栄養指導を行うことになった場合、看護師さんに日程調整をしてもらっています」と畑勝智・栄養科副主任(管理栄養士)は話す。
なお入院中に提供する食事は減塩が基本で、腎機能の低下も認められる患者さんには透析食を提供するなど、個々の患者さんに合わせている。
退院後にも半年に1 度、栄養教室を開催しサポート
「心疾患の患者さんは高血圧が大敵ですので、塩分量は1日合計6g以下に設定しています。やはり『味が薄い』と感じている患者さんは多いですが、入院中に病院食の味の薄さに慣れ、身体で覚えていただきたいと考えています」(畑副主任)
術後の集団栄養指導のほか、患者さんのベッドサイドを訪問して行う退院指導では、帰宅後の食生活に関し注意事項などを伝えている。
入院中のみならず退院後も患者さんをサポート。必要に応じ外来での栄養指導を継続し、自宅での食事内容を確認したり、目標設定などを行ったりしている。
また、心疾患で入院していた患者さんに対しては、半年に一度、薬剤師、PT、看護師、管理栄養士の4職種合同で、集団栄養教室を開催している。平均すると、患者さん20人と家族10人の約30人が参加。
自宅に戻り病院食の味付けを忘れてしまいがちな頃を見計らって開催。同教室では、当日の病院食(心臓疾患食)を展示することで、理想の食事量やエネルギー(カロリー)量などを思い出してもらい、ふだんの食生活を見直したり、食事療法を続けるモチベーションを維持したりするきっかけにしてもらっている。
同教室の対象は「心外病棟に入院していた」、「心臓リハビリを行っていた」、「退院後に心臓リハビリを継続している」など、必ずしも同じ疾患ではないものの、共通した指導内容が必要な患者さんたちだ。
開催当日の参加が難しい患者さんのうち、希望者には個別でも同内容の栄養指導を行い対応している。
熱心な参加者は、より深く自分の病態について勉強したり、テレビで知った健康情報について質問を寄せたりと積極的な姿勢が見られるという。
退院後に気を付けていても、自然と元に戻ってしまいやすい食生活を振り返る良い機会になっており、生活全般に関しては看護師から、運動についてはリハビリスタッフから、薬については薬剤師から、食事に関しては管理栄養士から、それぞれ患者さんにアドバイスを送っている。
「せっかく手術をしても、食生活が乱れれば、高血圧や動脈硬化などリスクを高め、心疾患の再発などにつながってしまいます。退院後の生活に関し、こうしていただきたいという理想はありますが、実践していただかなければ意味がありません。そのため、目標は患者さんと一緒に決めています。できることから始めて習慣にしていただき、定期的に目標の見直しと再設定を行うようにしています」と畑副主任は話している。