2018年(平成30年)1月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1118 一面
岸和田徳洲会病院
胆管がんの診断精度アップ
スパイグラスDSをグループ初導入
岸和田徳洲会病院(大阪府)は胆管・膵(すい)管鏡システム・スパイグラスDSを導入した。これは新型の胆道鏡で、従来に比べ優れた操作性やデジタル化による画質向上が実現。これまで胆管がんの診断はX線を用いるのが主流だったが、スパイグラスDSにより胆管から直接検体を採取し病理診断することができ、診断精度のアップが期待される。大阪・南泉州地域では初、徳洲会グループで初導入。
画質・操作性の向上で実現
「手術前に胆管がんの確定診断ができるようになります」と井上センター長
胆管は胆汁を、膵管は膵液をそれぞれ十二指腸に流す管で、出口は共通の穴になっている。胆管、膵管に病気が生じた場合、これまでは内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)を用い検査を行っていた。
これは内視鏡を口から十二指腸まで挿入し、胆管または膵管の出口から逆行性に造影剤を注入、体外からX線で撮影する検査方法。しかし、ERCPは間接的な検査方法であるため、胃カメラや大腸カメラと異なり胆管・膵管内の病変を直接見ることができず、結石と腫瘍の鑑別が困難な例なども存在していた。胆道鏡を用いれば胆管・膵管内を直接見ることができるのだが、従来の胆道鏡は画質・操作性ともに難があり、直接病変を見ても鑑別診断に使えなかった。
今回、岸和田病院が導入した新型の胆道鏡であるスパイグラスDSは、画質・操作性などが飛躍的に向上。腫瘍を直接見ながら検体を採取することができるため、従来法に比べて診断がより確実になる。また、結石が大きい場合、スパイグラスDSを用いて破砕することも可能。
スパイグラスDSは内視鏡に差し込むだけで簡単に使えるため、検査時間の短縮も実現。また、ディスポーザブル(使い捨て)のため耐久性を気にすることなく操作できる。さらに、内視鏡と同様の操作性があり、従来行っている胆管ステントを挿入する手技とほぼ同様に行うことも可能だ。
スパイグラスDSを導入した理由について、井上太郎・内視鏡センター長兼消化器内科主任部長は「胆管がんの診断、治療は従来の方法では正確性に欠けるものがありました。当院は南泉州地域のなかで消化器内科の拠点となる病院ですので、その責任感もあり導入を考えました」と説明する。
スパイグラスDSは内視鏡に差し込むだけですぐに使える
また、導入前の試用期間中に決め手となる症例があった。井上センター長が応援に行っている名瀬徳洲会病院(鹿児島県)で、慢性膵炎による膵石を生じた患者さんだ。長期間、全く食事も摂れない状況で、内視鏡での治療が難しく、大学病院に転院し開腹手術による膵臓全摘しかないと考えられていた。
そこで井上センター長は、スパイグラスDSであれば内視鏡的に膵石を破砕することができると提案。岸和田病院に転院してもらい治療を完遂、患者さんは元気に退院することができた。井上センター長は「実際に使用して患者さんを助けることができたのは、スパイグラスDS導入の大きな決め手となりました」と笑顔を見せる。
導入前に井上センター長は、米国消化器病週間(DDW)のセミナーでスパイグラスDSの使用方法について講義を受け、この内容を同院の内視鏡センター医師と共有、現在は4人体制で運用している。
2016年末に導入後、月に3~4例の頻度で使用。17年は約40例の使用があった。南泉州地域の病院からはもちろん、なかには宇治徳洲会病院(京都府)からの患者さん紹介もあり、徳洲会グループ病院の連携強化にも役立っている。
スパイグラスDSを使用した実感として井上センター長は、「4方向に動かせるので、細くカーブの多い胆管にもスムーズに入っていけます」と操作性の向上に満足すると同時に、「これまで胆管がんの手術は、ERCPで腫瘍の範囲を予測してから開腹、病変から採取した検体を迅速病理診断に出し、腫瘍の範囲を確定させながら進めていました。一方、スパイグラスDSを使えば手術前に検体を採取して腫瘍の範囲を確定できるので、手術前に術式が確定でき、患者さんの負担も軽くできます」と治療への効果にも言及する。
今後はさらなる画質・操作性の向上と、腫瘍摘出など治療への使用もできるようスパイグラスDSの進化に期待している。井上センター長は「スパイグラスDSの導入により、地域に一層の貢献ができます。今後も消化器内科の拠点病院として精進していきます」と意欲を見せている。