徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

整形外科の病気:変形性股関節症

股関節は両足の付け根(そけい部)にある関節です。太ももの骨である大腿骨と骨盤の骨の一部で成り立っています。関節をつくっている骨の表面には軟骨が存在し、関節の動きを滑らかにし、衝撃をやわらげています。

軟骨がすり減る変形性関節症

何らかの原因で軟骨がいたみ、すり減ってしまう病気を変形性関節症といいます。軟骨のすり減りが進むと骨の変形へと進んできます。また関節を取り囲む滑膜と呼ばれる組織に炎症を起こします。代表的なものは体重のかかる膝関節、股関節に生じ、股関節に生じた場合に変形性股関節症と呼ばれます。

体重増加でも変形生じる

日本では先天性股関節脱臼の後遺症や臼蓋形成不全症と呼ばれる、関節を構成する骨の形の異常が原因となり、軟骨にかかる負担が大きくなったために変形を生じることが多いのですが、骨の形に異常がなくても体重の増加に伴う負担で変形を生じることもあります。その他に事故などのケガの後遺症によるもの、大腿骨頭壊死症などが原因になることがあります。

関節の動きに制限

主な症状は足の付け根、股関節周囲の痛みと可動域制限(関節を動かせる範囲が狭くなること)です。痛みは股関節だけではなく太ももや臀部に感じることもあります。最初は歩いたときや立ち上がりの際の痛みですが、進行するとじっとしているときでも痛んだり、寝ているときにも痛みが出てくるようになります。また、骨の変形が生じてくると関節の動きが制限され、靴下を履くような動作ができなくなります。さらに進行すると足がまっすぐ伸びなかったり、左右の足の長さが違ってくることもあります。

レントゲンにより診断

変形性股関節症の診断は通常、レントゲン写真で行うことが可能です。レントゲン写真では軟骨の厚さや状態を示す関節の隙間の広さ、骨の位置関係、変形などを確認することができます。それぞれの程度により変形性関節症の進み具合(病期)を知ることができます。治療方針は患者さんの自覚症状、年齢、活動性などを中心に考えていくことになりますが、変形の進行具合を示す病期も治療方針の決定に重要な意味があります。
手術治療などを検討する場合にはCT検査やMRI検査を追加で受けていただくことがあります。

治療は年齢や変形の程度に応じて

すり減った軟骨をもとに戻したり、変形した骨をもとに戻す治療は現時点ではありません。そのため、治療の目標は症状をやわらげることと変形の進行を抑えることになります。
治療の内容は大きく分けて保存治療と手術治療に分けられます。

保存治療
保存治療は手術を行わない治療方法です。
  1. 生活指導
    関節へかかる負荷の増大が関節症の原因となるので、体重管理、杖を使用してみること、洋式生活への変更などがあります。
  2. 運動療法
    股関節周囲の筋力訓練とストレッチがあり、関節が安定することで痛みをやわらげ、進行を抑制する効果があります。しかし、過度な歩行などの関節に体重がかかる方向での訓練は逆効果です。
  3. 薬物治療
    関節の変形を明らかに抑制する効果が認められている薬物はなく、痛み止めを中心にした、症状の緩和を目標とした治療になります。
手術治療
手術治療は大きく分けて関節を温存する骨切り手術と、関節をインプラントで置き換える人工股関節置換術に分けられます。
  1. 骨切り手術
    股関節を形成する自分の骨を切って動かし、位置を変え、関節の適合性を改善させる手術です。これにより関節にかかる負担を軽減させ、進行を抑制する効果があります。自分の骨を温存できるメリットがありますが、切った骨がつくまでに時間がかかるため治療期間が長くなること、将来的に関節症が進行して人工関節置換術が必要になる可能性があるなどのデメリットがあります。
  2. 人工股関節置換術
    関節の変形が進み、軟骨がなくなり、骨の適合性をよくしても症状の改善が期待できない場合には、関節を形成する骨盤と大腿骨の一部を人工物で置き換える人工股関節置換術の適応となります。痛みの原因となる関節がインプラントで置き換えられるため、術後の痛みの改善は早く、確実性にすぐれています。また、入院期間や社会復帰などにかかる期間は骨切り手術より短くなるメリットがあります。
    しかし、人工関節特有の脱臼、耐久性の問題などを考える必要があります。

治療方針やそのタイミングについては、それぞれの患者さんの症状、年齢、変形の程度、社会活動性など治療に求めるポイントによって決めていく必要があり、さまざまですので担当医とよく相談していくことが重要です。

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